俺とおネエになった兄・エピソード0・キング

野口マッハ剛(ごう)

第1話 俺は弱かった

 人生初の血の味が口の中に広がる。殴られて痛いというより、怖いと感じ取る。道を歩いていて路地裏に入って数秒で男たちに取り囲まれた。近道をするつもりだけだった。

 男たち数人は訳のわからないことを言ってやがる。クスリでもキメテいるのか? やけに男たちのテンションが高い。そうだよな? なぜなら、俺はキングと呼ばれる兄の弟だからだ。

 命を奪うつもりか? 俺は袋叩きにあっている。何も出来ない。俺は弱かった。小中高といじめられて生きて来た。俺の意識が遠のきそうになったその時だ。

 聞こえるぜ。キングと呼ばれる兄の怒声が。

 俺はその兄の虎のような表情を見て安心する。

 俺は這う力もなく、兄が男たちをぶちのめすのを見つめていた。

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