第十五夜 美しき河の街での猟奇殺人鬼の伝説。 2


 ガローム・ボイスがホテルに滞在しながら、夜景を眺めていた時に、ホテルのドアのインターフォンが押される。ガロームは、少しだけ息を飲む。


「なんだよ? ああ? コルトラの使いの者かあ?」

 彼はドアを開いて、客を招き入れる。


 腰元まで髪の毛がうねっている男が現れた。

 服装はコートを着込んでいる。何処か中世ヨーロッパの貴族のような印象を受けた。鍔の広い長い帽子を被っている。さながら、不思議の国のアリスに登場する狂った帽子屋(マッド・ハッター)を彷彿とさせる印象を受けた。


「貴様は何者だあ?」

 ガロームはソファーから立ち上がらずに訊ねる。


「ガローム。殺人鬼はポーカーは好きか? それから、上等のコークがある」

 男は飄々と言った口調で言った。


「おいおい。お前、一体、なんなんだよ。俺に一体、何の用だあ?」

 ガロームは、鋭く尖った瞳で、男を嬲るように上から下まで眺める。


「殺人鬼はギャンブルもドラッグもやらないのか?」

 部屋に入ってきた男は、開いているソファーに腰掛ける。


「酒ならいいぜ。今夜は飲みたい気分なんだ。ウイスキーでもブランデーでも構わない。安物のビールでもな。とにかく、水のように飲みてぇえ」

「今からビヤホールにでも行くか?」

「いや。遠慮しておく。寝酒が心地が良いんだ」

 そう言いながら、ガロームはウイスキーの瓶を開ける。

 どぼどぼと、直接、口の中に注いでいく。


「俺の名はブエノス。これが名刺だ」

 ブエノスと名乗った男は、ガロームに財布の中から名刺を取り出して渡す。


 ガロームは、眼の前の男の肩書を知って訝しげな顔になった。


「お前、ジャーナリストなのかよ? 一体、なんなんだあ? この俺を取材したいってのかあ?」

「ああ。だが、俺も暗殺者チームに加わりたい。暴君達を始末するのに協力したいんだ。なあ、ガローム。お前と俺はきっと相性がいい」

 彼はにんまりと笑った。

 そして、空いているソファーの上に、ドカリ、と座る。


「この俺はジャーナリストが嫌いなんだよ……、こぞって、この俺に関して騒ぎ立てた。貴様らは、本当に下らないよなあ。視聴率の為なら、他人の不幸を徹底的に煽り立てる。なあ、本当に下らない人種だよなあ?」

 ガロームはグラスの酒を口に含む。

 そして、ボトムバッグの中から、何冊かの本とCDを取り出す。


『運河の大殺戮』というショッキングなタイトルが表紙に描かれていた。表紙にはナイフを持った男のシルエットが描かれている。


「たとえば、この小説の殺人犯のモデルはなあ。俺らしいぜ。タイトルが『運河の大殺戮‐人類への罪‐』だとよ。クソくだらねぇー、エンタメ小説書いている阿呆が書いた三文小説なんだぜ。警察や探偵がなあ、この俺をモデルにした大量殺人犯を追い詰めていく話だぜ。他にも何冊かある。そして、このCDを作ったロック・ミュージシャンは俺をモチーフにした歌詞を書いている。ほんと、くだらねー」

 そう言うと、ガロームは本とCDを床にぶん投げる。


「運河の大殺戮かあ。俺の知っているプロデューサーが映画手掛けたなあ。ドラマにもなった。あれ、かなり視聴率稼げたらしいからねえ。ガローム・ボイス、君はこの国のヒーローなんだよ。経済に大きく貢献している」


 ブエノスはICレコーダーのスイッチを入れる。


「殺人鬼ガローム・ボイス。今から、君に幾つかの質問をしたい。いいかな?」


 レコーダーが回っている事を一瞥すると、ガロームは、はあっ、と大欠伸をした。彼はこんなものには慣れている。散々、取材されたからだ。獄中でだ。


「精神分析医とか、鑑定医の真似ごとかよ。ほんと、お前ってつまらねー男だな」


「いいさ。質問したい。これから質問するよ」

「どうぞ」


「ガローム。なんで、人間を喰った?」

「食べて一体化すれば、分かり合えると思った」

 まるで、ガロームは何かの台詞を棒読みしているかのように淡々と述べていく。


「ガローム、君はなんで、頭蓋を開いて、人間の脳味噌を見たかったのかな?」

「テメェら、クソ野郎共の頭の中がどうなっているか知りたかったんだぜ。クソ野郎。灰色の臓器はホント、クソみてぇなカラーをしていたんだぜ」

 これまた、彼は棒読みでどうでも良いといったような口調で語っていく。

 ブエノスはICレコーダーを止めた。


「これから、沢山、殺すんだろう? 君の依頼者もそれを望んでいる。それが最高に良いんだ。とてもね」

 ブエノスは親指を立てる。


「特集は大量殺人鬼、脱獄に成功する、という事にしよう。なあに、どうせ警視総監であるコルトラ君が裏から手を回すさ。そして、メディアは一斉に君に注目する。そして、俺の制作する番組は莫大なまでの視聴率が手に入るってわけだぜ!」


「テメェ、……ジャーナリストじゃねぇだろ。番組プロデューサーか何かか?」

「複数の仕事をしているよ。だから、複数の肩書を持っているんだ」

 ブエノスは再び親指を立てる。癖なのだろう。


「ガローム・ボイス。実に君と俺は相性がいい。最高だ。俺は君にビジネスの話を持ち掛けているんだぜ。君はヒーローなんだ。この国のねっ!」


「キレてやがるのか……? イカれてやがるのか?」

 大量殺人鬼は引き攣った笑顔を浮かべる。


「大運河の殺人鬼対暴君かあ。これはこれは、ウチの番組で最大級の視聴率を得られるなあ。ねえ、君、いつもは、俺は身体障害者やアルツハイマーの年取ったご老人を番組に出して、TVの前の人々を泣かせる為の映像を作っているんだ。それが本当に儲かるんだよなあっ!」


 ブエノスの演説じみた話に、ガローム・ボイスはこめかみを引くつかせる。


「クサレ外道だろ、お前。……法廷でな、俺は被害者遺族から色々言われた。俺を殺してやりたいって奴も多かったなあ……。だが、ブエノス……。テメェは人間じゃねぇよ、鬼畜生だ。なんで、そこまで出来るんだ?」


「なんで、だって?」

 ブエノスはソファーに深く腰掛けながら言った。


「国民をゴミだと思っているからじゃあないのか? 奴らは頭が悪い。だから、金のなる木なんだ。ガローム、俺は奴らの命なんて、空き缶程の価値も見出していない。奴らは俺達が儲ける為に景気良く金を吐き出してくれりゃあいいんだよ」


 ガローム・ボイスは忌々しそうに溜め息を吐いた。


「貴様……、人間じゃねぇよ。警視総監のコルトラもだ……。貴様らこそ、本当の悪なんじゃあねぇのか? イカれてやがる……」

 ガロームは奥歯を噛み締める。

 そして、口元を押さえて吐き気を抑える。


 MD中に連合(ファミリー)は根付いている。

 猟奇殺人犯であり、大量殺人犯であるガローム・ボイスは、いわばアウトサイダーと言った処だった。合法的に自らの手を汚さずに人間をゴミ屑として殺している者達、それは弁護士や判事、警察官にまで至っている。彼らは汚職と共に生きている。MDの正義は金によって牛耳られている。番組プロデューサーのブエノスも、警視総監のコルトラも、猟奇殺人犯であるガロームを金のなる木だと考えている。……何処までも、彼らの性根は腐っていた。


「で、やるのか? やらないのか? ガローム。後戻りは出来ないんだぜ? 君が絞首刑を断った時からなあ。この国を破壊してやれっ! ガロームッ!」


 ブエノスの瞳は、何処までも残忍さと嗜虐性に満ち満ちていた。


「君が作り上げるんだぜ。死と殺戮のショーをなっ! 大衆はいつだって、殺人を望んでいるんだ。毎日が退屈で仕方が無いからなっ! 歓楽と絢爛豪華な殺戮のショーに魅せられるんだぜっ! 悲惨で陰惨な事件を求めてやがるのさ。もしくはお涙頂戴のストーリーをなっ! 戦争映画だって、人種差別映画だって、奴らは嬉々として楽しむんだぜっ! 俺は彼らに夢を与えてやるんだ。カメラが君を人気モノにするだろうっ! この国一つの小さな街なんて、幾らぶっ壊れても構わないっ! 俺はな、MD中の放送局と繋がっているっ! 俺は視聴率が欲しいんだぜっ!」

 そう言いながら、メディアを支配するこの男は、ドラッグを漬けた煙草を吸い始める。


 ガロームはとてつもない軽蔑に満ちた眼で、この良心の呵責が何も無い男を見据えると、握り拳を作る。


「いいよ。やってやるぜ。俺の『ロードデンドロン』がこの街を制圧する。ああ、やってやるよ」


 ICレコーダーが凍結していく。


 外は豪雪だった。三月なのに、だ。

 

「俺の能力は“気象を操作する事が出来る”。……勿論、炎天下に変えて、辺り一帯を50度とかの酷暑に変える事も可能だが。零下の雪原へと変えてしまった方が、俺の力はよく働くだろうぜ。敵は地熱からでも、熱のエネルギーを吸収出来る能力者がいるんだろ? だから、俺は凍らせる。そしてっ!」


 辺り一帯に大嵐が舞っていった。

 窓の外で、バイクが持ち上げられて、ガソリンスタンドへと突っ込んでいく。盛大な爆破音がした。


「同時に、台風なども操作する事が出来るんだぜ。俺は自分が能力(ギフト)を手にした時に、どんな残虐な力なのか分からなかったが……。派手だな。俺は今、高揚感に溢れているんだ。この世界から自由になれた気がする。そして、ブエノスッ!」

 ガローム・ボイスは酒瓶を地面に投げ捨てる。

 落下する途中、霜によって凍り付いていた。


「協力してやるよっ! 俺の『ロードデンドロン』がどれだけ強力なのか。そして、どんな事が可能なのか知りたいからな。貴様のようなクサレ外道に協力してやるよっ!」

 ガローム・ボイスの怒りは、風となり、更には稲光をもたらした。


 ブエノスは静かに拍手を送っていた。



 安い民宿の一階で、四名は寝床を確保していた。

 春だと言うのに、外は猛吹雪へと変わっている。


「敵の能力だろうな。間違いない」

 ウォーター・ハウスは推理小説を読みながら、そう口にする。そして、再び、暴君は小説の物語に熱中しているみたいだった。彼は一度、本を読み始めると、周りが煩わしくなるみたいだった。なので、他のメンバーは、彼の読書中には、必要な事以外は、なるべく話し掛けないように心掛けている。


 それにしても、狭く、少し暗い民宿だった。

 読むものと言えば、机の中に入っていた聖書くらいだ。


 ラトゥーラは昼間の疲れか、完全にベッドの中で熟睡していた。


 グリーン・ドレスはTVを点けていた。


「やったぜ。バットマンがやっている。敵はトゥーフェイスだっ!」

 彼女は本当に嬉しそうな顔をしていた。

「なんですか? トゥーフェイスって?」

 シンディは最近では、よくグリーン・ドレスと打ち解けている。

「元々は高潔な地方検事だった奴なんだがよおぉ。顔の半分に硫酸か何かの化学薬品喰らって焼け爛れて、それ以来、悪の道に走っちまった敵なんだぜ。心の病気を発症しちまってやがるのさ。で、物事を決める時にコインをブン投げて、意思決定を行う奴なんだぜ。個人的にはバットマン・シリーズの中で一番、好きな悪役の一人だな」

「へえ。なんだが、怖そうな顔してますね」

 シンディはさっそく、スマホで調べている。


「コインぶん投げて、運命を決める敵なんだぜ。なんだろうなあ? 物事を賭け事に見立てるってどういう事なんだろ? なあ、シンディ。お前、運命ってのは、コイントスやダイスロールみたいなもんだと思うか?」

 ドレスは、彼女にしては珍しく、妙に哲学的な事を話した。


「運命、ですか?」

「ああ。私達のこの旅は、多分、運命によって左右されてしまっているのかもしれねぇな。シンディ、港町でたまたま、私達は出会ったんだと思う。きっと、神様って奴は、見えないコインみたいなものを放り続けているんじゃねぇかってな。しかし、トゥーフェイスはよく出来ているキャラクターだぜ。造形といい、性格もなあ」

 ドレスは、珍しく考え込んでいるみたいだった。


「ビールあったな。冷蔵庫に。酒はそんなに得意じゃねぇが、飲むぜ。シンディ、お前は?」

「甘いものとかカクテルなら」

「カクテルはともかく、ワインはあった。飲めるだろ」

 そう言って、二人はそれぞれビール瓶と赤ワインの瓶を開けていく。

 ドレスは、グラスに注がれたビールを一気に飲み干す。


「このメリュジーヌでは、ビールが名産だそうだな。ビヤホール行きたかったなあ。きっと飯も美味い。ビヤホールの伝統だからなあっ! これで、チキンとハッシュポテトがありゃ、最高なんだが」

「じゃあ、一緒に行きましょうよ、ビヤホール!」

「今からか……? でも、外は猛吹雪だぜ。不自然だ。……明らかにおかしい……」

 グリーン・ドレスは眉を顰めた。


「おそらく、ウォーター・ハウスが言っているように、敵の能力だって考えた方が自然だろうなあ。シンディ、この敵を倒したら、この国で観光をしよう。二人でビヤホールに行こうぜ。この国の名産である色々な種類のソーセージを喰おうぜ。この国の伝統ある特産品らしいからな! 白とか黒とかもあるぜ!」

「ソーセージって、……ドレスさんが言ったら、ほら、男の猥褻なアレに聞こえますよ」

 シンディは茶々を入れる。

 それを聞いて、グリーン・ドレスは爆笑する。


「色々な男のアレ、堪能するってか? 白いソーセージは白人の奴。黒いソーセージは黒人の奴ってか? なあ、シンディ、男娼でも買う? 私、此処だけの話、ショタコンなんだよなぁ。ラトゥーラ、襲っていい?」

 そう言って、下品に笑う。

「止めてくださいよ、私の弟ですよう」

「女装美男子も好きだぜ。上から乗っかってやるのがイイ」

「ウォーター・ハウスさんに怒られますよ?」

「あいつはなあ……。なんだろうなあ…………、私のそういう性欲の暴走は……推奨している。能力者として必然的に生まれた、破壊欲がそうさせているんだろうって……。シンディ、あなたも能力者だろ? 異性を凌辱してやりたい、とか。そういう衝動は無いのか?」

「……、無い、ですね…………」

「能力者になったら、異常性欲なんかが暴走する奴も多い。マトモな人間の脳構造、肉体構造じゃなくなるからなあ。これまで向かってきたヒットマン達も、その類の連中が多かったように思うぜ。人間を模した化け物になるのかもしれない」

 そう言って、ドレスは二杯目のビールを口にする。


「何にしろ、超能力者ってのは、人じゃねぇーんだ。なあ。シンディ。バットマンのトゥーフェイスってさあ。自分の顔を酸で焼かれて、化け物になっちまった時、どう考えたと思う? なんで、悪の道に走ったんだろう? 自分が化け物になっちまったから、発狂してヤケになったってのか? ……なあ、私達は一体、なんなんだろうなあ?」

 珍しく、グリーン・ドレスは感傷的な事を口にする。

 寒いし、それに酒も入っているからだろう。


「私の知っている設定じゃ、ジョーカーも顔を漂白された時に発狂したんだが。ジョーカーは元から悪人だった。トゥーフェイスは元々、善人だったんだぜ。なんで、化け物になっちまって、悪人になったんだ? 私には分からねぇ…………」

 そう言って、ドレスはグラスを叩き付ける。


「ビヤホール行こうな? シンディ。この国の大衆酒場なんだぜ。でっかいスペースでみんなで盛り上がるんだ。地域の特産品を募ってな」

「特産品ですか。確かに、この国の伝統に触れるのいいかも、私達、旅を楽しまないとですね」

「そう言えば、クソみてぇーな性的嗜好の奴に、女子中高生のパンティとか売っている店あるだろ。ブルセラショップってか。あれのサイト見た事あったんだけどよおぉ、伝統溢れるパンティのシミとか、ふざけた事、書いてある奴があったぜ。地域の特産品みたいな言い回しで女の下着、売ってやがった。頭腐ってやがるよ」

「それ、変態男が、舐めたり、頭から被ったりするんですかね? 穿いたりとか?」

 シンディも酒に酔いながら、下ネタを続ける。

 そういえば、シンディだって、売春婦だ。客を喜ばせる為の、下半身のジョークは幾らでも思い付くのだろう。

 グリーン・ドレスは、心から、彼女を守りたいと考えていた……。そして……。


 …………、二人共、少し疲れている。

 猥談が、この緊迫した旅を癒やしてくれる。自分達の命を狙ってくる敵の事を考えなくて済む。四六時中、警戒し続けている時点で、心は確実に削り取られていっているのだ。だからこそ、馬鹿話でストレスを無くしていく必要がある……。



 深夜、他の三人は寝静まっていた。


 ラトゥーラはトイレへと向かう。


「今、夜中の三時、もうすぐ四時くらいなのかなあ……」

 それにしても、外の吹雪が止みそうにない。


 彼はセーラー服を脱いで、寝巻を着ていた。

 ブリッツ・スカートではなく、ズボンだ。

 鏡を見る度に、自分の性別の事を考える。どちら側として生きるべきなのか……。彼は櫛(くし)で、髪の毛を丁寧に梳いていた。


「それにしても、姉さんの方が強いなあ。……僕はもう折れそうだよ……」

 ラトゥーラは大きく溜め息を吐く。


 自身を成長させなければならないのは分かっている。

 敵は四六時中、襲ってきている。この国に入って、カフェの中で殺人犯に仕立て上げられそうになって、正直、死にたくなってきた。完全にパニックになっていた……。情けないと思う。


 ……もっと、心が強くならなければ……。


 ラトゥーラは自分の弱々しい顔を、鏡を見ながら凝視するのだった。


 ふと。

 洗面台の後ろ側で、何者かが入り込んでくる。

 それは、余りにも自然だった。


 ラトゥーラは押さえられる。

 口元に布を当てられる。


 鏡を見て、背後にいるのは、モノトーンのドレスを身に纏ったヴァシーレだった。


「よう。ラトゥーラ。ちょっと、拉致させて貰うぜ。暴君をおびき寄せる餌にさせて貰う。じゃあ、ちょっと俺と来ようか?」

 ラトゥーラは意識が朦朧としてくる。

 酷い眠気に襲われる。

 そういう薬品を嗅がされたのだろう。


「ガローム・ボイスの側に、何やら、変な連中が動き回っているそうだぜ……、さて、ラトゥーラ。テメェは、少しの間、寝てな?」


 ラトゥーラは地面に崩れ落ちた。

 ヴァシーレは、彼を抱え込んで、洗面所を出た。

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