第9話 ミルク色の肌

<ウェスト・サイド>。


 その中心部から、すこしだけ離れた場所。


 ゆっくりと上昇する、エレベーター。


 隣り合う、種田しぶきと、弓ヶ浜令。


 種田は言う、

「また魔導服が絵の具みたいなので汚れてますよ」

 弓ヶ浜は応える、

「タメ口でいいって言ってるでしょ」

「わたしが仕事をはじめたのはつい最近です。弓ヶ浜さんは――」

「損だよ」

「何がですか?」

「その性格」

 眉毛を動かす種田。

 弓ヶ浜が、種田に、そっとなにやら冷たいものを手渡す。

「食べる? アイスクリーム」

「こんなところで渡さないでください」

 扉が開くと、小走りに種田は弓ヶ浜のもとを逃げ去る。


 ポケットに入っていたアイスクリームを、弓ヶ浜は静かにゴミ箱に叩きつけた。


 松田小麦がいる。<サウスアイランド>で、デビュー節でいきなり優勝した松田小麦。控えめな性格も良し悪し。なお同節でフライングした風布さくらは精神乱調ぎみ。

 種田は松田小麦を見た。顔の肌が一瞬、ミルク色に見えて、苛立たしくも妬ましく、甘いものを舐めたくなるような気分だった。

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