第4話 待機行動

 さくらは、小麦の、左どなりに。宙に浮くことができる代わりに、自分の意思で静止できない。空中にただよっているようなものだ。

 魔法少女の、待機行動たいきこうどうである。

 小麦の右どなりには、黒魔法をあてがわれている、先輩魔法少女の代々木よよぎがいる。黒魔法は、白魔法には到底及ばないものの、それでものうち、二番目に勝ちやすい。たぶん、代々木先輩の性格なら、白魔法の小麦にプレッシャーをかけてくる。

 も――。

 不吉な妄想が、さくらの頭をもたげた。真向かい、つまり代々木の右どなりにいる友兼トモカネが不敵な笑みを浮かべる。それに呼応こおうして、さくらは思わず顔をしかめる。


 第一試合。

 待機行動。

 

 の小麦から、に、

 黒、代々木。

 赤、トモカネ。

 青、小室こむろひばり。

 黄、小早川こばやかわ、代々木と同年代。

 緑、さくら。


 さくらの左どなりの小早川が、理知的りちてきな顔で、さくらに微笑みかけている、が、正直何を考えているかはわからない。

 

 小麦の真っ正面、六角形の頂点と頂点を結ぶ対角線上に、青の小室ひばりがいる。

 ひばりはなぜか不機嫌で、ムスッとしている。

 まさか、新入りの小麦に敵意を向けている――? いや、ひばりはなところがあるし、怒り出すとキリがないという欠点はあるけれど、小麦に嫉妬する要素はないはずだ。

 あとで機嫌の悪い理由を訊きたい。


 青魔法は、と言われている。

 魔法を詠唱するためには、魔力をステッキに溜め込む必要がある。魔法の詠唱に費やす時間には、ロング/ショートという区別があって、いまの状況の場合、赤のトモカネが変な気を起こさないかぎり、

 対するの小麦は、詠唱方法が「ショート」になる。

 つまり、この第一試合、十中八九、

・小麦(白)、代々木(黒)、トモカネ(赤)→「ショート」

・ひばり(青)、小早川(黄)、さくら(緑)→「ロング」

 の、所謂いわゆる3対3さんたいさん』スタイルになるのが濃厚だった。

 案の定、青・小室ひばりが、いちばん最初に、ステッキをすーっと突き出し、魔力を伝え始めた。

 こうなると、調だ。

 黄魔法きまほうの小早川がちからを込めはじめるのを確認して、さくらも緑魔法を放つステッキを握りしめて、

 そして、頭上には、

 

 が浮かんでいる――。

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