緩すぎるマジックショー編

 今日は理科室で顧問のマジックショー。

 といっても不定期開催の気まぐれなショーである。


「おうおう、見てくれよ」


 顧問は黒板の前で白い粉を三つと水の入ったカップを出してきた。

 僕はそのこなをじーっと見つめる。


 暇だ。


「この三つの粉はその人の心の器の大きさだよね。器が大きいほど水に溶けるんだよ」

「うそだぁ」


 みんなの反応に顧問はにやにやとしている。

 顧問はみんながこういう反応をするのが好きなんだよねぇ。


「じゃあまずは君の器を確かめよう」


 僕をガラス棒で刺しながら言う。

 まさか僕が最初の被害者になるとは。

 

 たぶん溶かすのは砂糖だ。

 あの砂糖特有の形でわかる。

 顧問のマジックショーも科学部の活動並みに緩い。


「おっ! 君の器は大きい。合ってるじゃねぇか」

「確かにやさしいもんなぁ」


 なんだか照れるぞ、このマジック。

 悪くないかもしれない。


 僕は次に水に溶かされるであろう白い粉を見てみる。

 たぶん小麦粉だろう。


「次は君だよ。じゃあ見てみよう」


 次の標的はトラブルメーカーで有名なやつ。

 いつもは静かなのに怒らせると止まらなくなる。もしかしたら一番怖い奴かもしれない。


「うん? あれれ、溶け切んねぇぞ」

「えー! 俺なんかしたか?」


 顧問は再びニヤニヤしている。

 もしかしたらこのマジックは計算か?


 気を取り直して、最後に残っているのは塩。

 いったい誰の器をはかるのだろう。


 もはやマジックなど関係がない。


「じゃあ最後は先生だよね。さあ先生の器はどうかな~」

「先生、ずるいじゃないですかぁ」

「え?」


 自分の器の大きさを計画している時点でもう大きくはないと思うが顧問は知らんぷりしながら粉を溶かす。

 みるみる粉が溶けていった。


 僕はこれについては溶ければ溶けるほど顧問の器が減っていくものとみる。


「どうだ! 先生の器は大きかったぞ」

「くだらなすぎます~」


 ムードメーカーもそのマジックの正体に気づいたようで顧問に文句を言っている。


「くだらないのがいいんだよね」

「そういうもんですか?」


 顧問は開き直って解説。


 マジックというよりただ顧問のずる賢さがわかっただけのような…。


 不定期開催のマジックショーは緩すぎるも面白い時間を提供してくれた。


 でも次はもうちょっと緩くないマジックが見たいなぁ。


 科学部はなぜか顧問の豆知識を見ただけで活動を終えた。

 今日の活動の意味はなんだったのでしょうか。


 僕はそう思いながらもニヤニヤしながら帰り道を歩いた。

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る