敵対者のセブンス

七番目(セブンス)。それが彼女の名前だった。もつれ気味な青紫の髪。七番目の色。夜に向かう空の色は凡庸な闇に溶け込んでいく。


自由を。解放を。インフラストラクチャー(魔法)からはじき出され、望むように魔法を使うことの叶わぬ人間は沢山いた。セブンスもそのうちの一人だった。魔法の力は強大だ。誰もがそれを望み、道具を取り、魔法を手にした。魔法の力。それがこの時代における一つの正しさであった。


魔法の使用可能区域は広い。セブンスは手にした杖を叩く。裏を返せばその範囲は全て電波塔の監視下にある。制限されずに魔法が使えること。それは望まれた自由だった。


その日、その夜、セブンスは『運命』を見た。例えるならばブライトネス。あのふくよかなアルフレート・ギューダが闇夜に光る白い満月だとするなら、それは燃えさかる夕暮れだった。それは夜の平穏を知らぬ。昼の静寂を知らぬ。温とさに満ちた陽光が湛えた熱を吐き出し冷やっこい闇に落ち着くまでの急落。炎上する空の色彩。それが闇夜の青を裂き、飛び回る。


セブンスは立ち止まる。目の前に降り立つ夕闇は立ち止まったセブンスを見た。燃えさかる赤褐色の目と視線が交差する。時間が止まったようだった。移り変わる性質を持つ赤。変化。運命。破滅。揺らぎ、戻り、膨らみ、欠け、ぐるりと回ってまた満ちる白い円環とはまた違う。墜落する隕石じみた『破滅』。終わりを予感させる赤。



大いなる力。多大なる熱量。それは口を開いた。私は答えた。言葉を交わしたのは一瞬だ。止まっていた時間は動き出す。あたかも熱に融解し蕩ける氷のように。隙間から流れ込む温い空気は凍り付いたようだった時間を元の流れに戻した。正常な時間の流れは私たちをこの場から追い払う。セブンスは闇を駆ける。視覚を埋める熱は霧散し、あたりは静けさに包まれていた。セブンスは燃える夕闇を思い出す。『私たちはまたどこかで出会うだろう』。根拠のない予感だけが胸を満たしていた。


(続く)

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