第11話 終焉の始まり

「親愛なる我がテストラ国民達よ」


拡声魔具にて声を増幅して町中に流されているが

それを通して尚、重く威厳を感じさせる声が響く


「皆の献身厚く我がテストラ王国は歴史上類を見ない程

 繁栄を極めまた新たなる年を迎える事が出来た

 世界の諸国と比較しても決して引けを取る事が無い大国となった

 一重に諸君ら国民並びに冒険者・・・・・・・」


ーーーー

ーーー

ーー


「長いです...早く魔技研の発表が見たいのです...」


「お前なぁ...もう少しは王様に対して敬意を」


「ぁ!そろそろみたいですよ!」


国王陛下の周りの研究者らしき者達が動き始める


「我が王都は遥か遠い先人達の築いた神の矛と盾に守られている

 しかしだからといってそこで我々が歩みを止めてはならない

 新たなる可能性を探求する事はやめてはならない


 そこで今日は親愛なる国民諸君に一つ見せたいものがある

 名付けてテストラキャノンMk-1である!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



という轟音と共に国王の背部から巨大な

全長20メートルはあろうかと言う大砲らしき姿が現れる

先端はやや膨らんで居り、四俣に分かれ尖っている


「おぉぉ!!ネーミングは微妙ですが、凄いです!」


「ネーミングはって...しかしありゃ魔具なのか?」


「外観を見る限りあれは神機ではないみたいですね

 神機ならこうもっと全体的にカクばってるはずです

 私達の時代の技術で作られている形跡が各所に見えます」


砲身後方に連なる無数の極太配線・配管を見やる


「マナの吸収機構が見当たらないですねー」


両手の平をおでこにあてて良く観察するセルヴィ

その時、今まで話していた国王が隣に来た研究者らしき者に拡声魔具を渡す


「ええ、ここよりは私、魔法技術研究所所長クラウスが説明させて頂きます

 まずこの大きな機械は魔具であって魔具ではありません。

 私達は神機を元に魔具を作り、マナを利用しその機能を再現してきました

 そして私達は神機も未知のエネルギーを用いる事で使う事も出来ました

 

 では何故私達は今や一部を利用し足元を流れる無限に等しい

 このエネルギーを私達の技術に使わないのでしょう?

 エネルギーの解明にはエネルギーの利用法から辿り着く事も出来るのではないか

 そこで産まれたこのテストラキャノンMK-1はマナでは無く

 都市のエネルギーをそのまま利用した兵器となります」


 広場に居た者が一斉にざわつく


 「!!」


 「凄い...都市のエネルギーは今まで神機以外で

  使う事なんて出来なかったのに...」


カイド、セルヴィにとってもそれは驚嘆に値する事であった


本来遺跡内の未知のエネルギーはその力があまりにも強すぎる為

仮に魔具回路に流したとしても異質な力を動力に変換出来ないのと同時に

エネルギーの過負荷に魔具その物が耐えられないのだ


再び所長クラウスが話始める


「論より証拠、です

 皆さまには早速このテストラキャノンMk-1の

 記念すべき第一射をこの場でご覧頂きましょう!」


再び城下がどよめく中

テストラキャノン周囲に濃密な蒸気が立ち込め始める


プシュー!! ゆんゆんゆんゆん...


徐々に先端の四俣の中心に高密度のエネルギーが集約を始め

砲身全体から湯気が立ち上る、そして瞬間



カッ!!!



城下が一瞬強烈な光に包まれたかと思うと

一筋の赤紫色の閃光が真っ直ぐ王城から砲の向けられた先

遥か遠く馬車で丸一日程の距離にある標高2300程の山の中腹に突き刺さり

大きな爆炎と共にキノコ雲を上げる


ゴォォオオオオオオオ!


数秒遅れて大地が震える様な轟音が都市中に響き渡った


………


10秒とも1分とも取れる短くも長い完全な静寂...後


ワァァアアアアアア!!!


町中を歓声が埋め尽くした




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一方


※テストラ地下、古代遺跡 人類到達領域より遥か深く最深部



ビー!!ビー!!ビー!!


『警告、都市エネルギーの大規模な流出を検知、パワーレベル低下』


DIディメンジョン・アイソレイションリング稼働停止

 次元境界面の維持...不能

 次元隔離が解除されます、コードΩ発生』


『生存者は速やかに都市を放棄

 可能な限り遠くへ退避して下さい

 繰り返します、コード.........』


無人の空間で、けたたましい警報音とアナウスが響き渡る


それを聞く”人間”はそこには誰も居なかった



ーーー

ーーーーー

ーーーーーーー



※テストラ城下 中央広場



「ふぅうう!もう食べきれないのです!!」


「朝あれだけ食って昼またこれだけ食うのかよ!」


「私は成長期ですから」


満面の笑みで答える


「ったく...まぁ今日は一日いい気分転換になったろ

 そろそろ帰るとすっか

 また明日から休みなしだからな」


「はいです!><」


もう昼も過ぎもう半刻もすれば夕日が差し始める頃だろう

祭りも一部の屋台は撤収を開始しているようだ


「しかしあの大砲すごかったなぁ、一体どんな仕掛けになってるのやら」


「凄かったですけど、あれじゃ古代のエネルギー解明は遠そうですね」


「何を根拠にそう思うんだ?」


「あれは遺跡のエネルギーをただ、そのまま放出しているだけなのです

 神機の様に機械の動力にエネルギーを変換している訳でも無く

 ただ垂れ流してるだけです、あんなのは魔具ですらありません!

 遺跡のエネルギーという水の入ったバケツの底に穴をあけただけです」


(こいつ、遠巻きに見ただけでそこまで判ったのか...?)


ぷんぷん!と隣で歩く小さな少女をじっと見つめるカイド


「ん?兄さんどうかしましたか?」


「ん、ああ、いやなんでもねぇよ

 それよりあいつらに何か食うもんでも土産に買ってってやるか」


「そうですね!きっと皆も喜びます!」


途中屋台で芳しい香りを放つ鳥類の串焼きをタレにつけた物を

人数分買い込むと二人は三日月亭への帰路を歩く

途中にある冒険者ギルド前を通りかかると何やら人混みが出来ていた


「?...何かあったのでしょうか?」


「さぁな、とんでもないレア物でも出たか

 または高レベルの魔物でも見つかったのかもな」


そうして人混みを横目に隣まで来た頃

人混みの中で三日月亭の常連の一人見かけた


「よお、元気にやってるか」


カイドが冒険者の一人に声をかける


「あ、カイドさん!おかげさまで五体満足ですよ」


「そいつぁ何よりだ、所でこの騒ぎはなんだ?」


「えっと、何やら今日遺跡探索に出かけた

 冒険者達に未帰還が続出しているそうなんです」


「ふむ...残念な事だが冒険者にはそれは付きものじゃねぇのか?」


「はい、それは勿論皆覚悟の事なのですが、今回はちょっと異常なんですよ」


「異常?」


「探索に潜った冒険者パーティの9割以上がまだ未帰還なのです」


「9割ぃ!?ほとんど全員じゃねぇか!」


「それに探索に向かった冒険者にはAランクパーティも

 5組程参加していたにも関わらず彼等も全て未帰還です」


「おいおいなんだそりゃ、Aランクなんて言ったら

 10年以上冒険者やってる様なエース連中ばかりじゃねぇか

 どうなってやがるんだ...」


「分かりません...今は情報が錯綜していて

 様々な根も葉もない噂や推測でこんな状態な次第です...」


「そうか...忙しい時に声かけて悪かったな

 お前も気を付けろよ」


「はい、ありがとうございます!」


そう言い残しカイド達はその場を後にする


「兄さん...」


「ああ、嫌な予感がしやがる、早く三日月亭にもd...



ウゥウウウウウウウウウウウウウ!!!



町中に突如警報音が響き渡る




滅びの始まりを知らせる鐘の音が今鳴らされる

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