第4話 魔法の機械 魔具 古の機械 神機

「うっす!どうでしたか?!」

「お願いー><;」

「もしもアタリならすぐに持っていきましょ!」


つい先日、古代遺跡から持ち帰ったお宝の鑑定を

この魔技工房『三日月亭』に依頼した冒険者三人組は、

目の前のカウンターに並んだ鑑定済みの依頼品を前に

大興奮していた。



+o。。o+゚☆゚+o。。o++o。。o+゚☆゚+o。。o+



はぅ、皆さん凄い盛り上がりですね!

どうか良い結果でありますようにっ


えっ、コレは何かって?

これは遺跡から発掘した【神機】という機械です。


その昔、まだこの世に魔法すらなかった、

ずっーとはるかとおいとおい昔……


人はその持てる英知を結集し、都市を天空に浮かべ

星々の海をも渡る術を持っていたと言われます


まるで、天地創造の神々の御技か

荒唐無稽な御伽噺の様に聞こえますが

その実在を裏付ける物が、

世界各地から発見される太古の遺跡です。


そして、その遺跡から発掘される遺物が、

【古の時代の機械:神機】ですね


遺跡から発掘された神機は

いまの人間には到底不可能な技術で作られていて

古代人は、私達より遥かに高度な

技術文明を築いていた事が分かっています


そうです!


神話は実在するのです!


とと、脱線してしまいそうになりました...話を戻して、


神機は国が研究の為に高値で買い取ってくれる場合もあって

遺跡に潜る冒険者の方々は殆どの場合これが目的なのです


どうして神機にそんな価値が付くかと言えば

【魔具】は人が魔物を退ける為の力として

産み出された魔法機械、というお話は前にしましたよね?


それが、戦う為の武器だけでなく

水や明かり、熱を届けたり

人々の日常生活のすみずみまで、

急速に発展・普及を遂げた背景には、理由があります


それは魔具が、純粋な『無からの発明』では無く

神機を、魔法の力と私達の技術で

模倣して作られた物が【魔具】なのです


なので新たな神機の発見、解明は

そのまま魔具技術の発展に繋がる為

遺跡から発掘された遺物は国の研究機関等が

高値で買い取ってくれる物も多くて

冒険者の方々は皆それを求めて遺跡に潜るのです!


いま、私がお世話になっている

三日月亭のある、ここ、王都テストラは

巨大な古代遺跡の上に建てられた都市です


古代遺跡の上に街がある、って

聞いただけでワクワクしませんか?


……え、しない? そうですか...ざんねんです...


毎日、冒険者の方を始め沢山の人達が遺跡に潜っていますが

一体どれ程深くまで遺跡が広がっているのか

その全容は未だに明らかになって居ません


ここ、三日月亭にも数多くの神機の解析や

魔具の調整、改良、制作依頼が持ち込まれます

流石は大都会...

見た事も無い様な機械達に囲まれ毎日大興奮です!

ドミルさんには送り出して頂いて、本当に感謝ですね!


というわけで、彼等も今回遺跡から発掘した神機の鑑定を

三日月亭に持ち込んだ冒険者さん達、という訳です!



+o。。o+゚☆゚+o。。o++o。。o+゚☆゚+o。。o+



「で、結果はどうだった!?

 これって、あのライルガンだよな?!」


まだあどけなさを残すリーダー格の青年が、

三日月亭の主、カイドに詰め寄った。

少しでも早く、発掘物の鑑定結果が知りたいらしい。


「あー、率直に言うぞ、残念だったな今回はハズレだ」


三人に、死刑宣告をするカイド。


「まじかよ...」

「うわーっ>д<;」

「世の中やっぱり甘くないって事ね...」


先程までの盛り上がりは一瞬で吹き飛び

みな項垂れてしまった


カイルは、意気消沈した彼等を意にも介さず


「そもそも稼働状態のライルガンってのは

 過去第9階層以上の階では一つも見つかってない

 加えて第9階層以下だって、年に1本でるかどうかってもんだ

 そんな簡単にゃ見つからねぇよ」


と、バッサリ切り捨てた。



+o。。o+゚☆゚+o。。o++o。。o+゚☆゚+o。。o+



あぅ...兄さんももう少し優しく言ってあげても...

みなさん、すっかり落ち込んでしまいました...


彼らが今回持ち込んだ神機は

【ライルガン】と呼ばれる古代の兵器です


ライルガンは、少数ながらも世界各国で

見つかっている兵器のひとつで


国によって形状は少し異なるそうなのですが

最初に発掘されたライルガンの表面に


古代語で『RAIL.GUN』と


書かれていたことが、その名前の由来だとか

古代人の発明者の名前、とかですかね?


専用の射出物を超高速で

打ち出す方式の、古代の投射兵器で

その威力は、伝説級モンスターの

分厚い鋼鉄の様な皮膚をも貫き

大岩すらも砕き、山をも削る程の

力を秘めているらしいです


……私も実際使われてる所は、見たことないんですけどね


そんなすごい物だから、ライルガンを持っている国は

これを人間同士の争い事には絶対使いません

……って協定を結んで、厳重に管理して居るような代物です


ちなみに、町のあちこちにいる衛兵さん達や冒険者さん

王国の騎士達が装備してる、ちょっと似た感じの

大筒状の武器は、【スチームガン】という魔具武装です。


あれは、神機【ライルガン】を元に、

現代の技術で模倣し、作り上げたものです。


炎の魔法を増幅・圧縮させ、水を瞬間的に蒸発

その際に発生した蒸気の力で射出物を打ち出す

――という方法で、

ライルガンの機能を再現したのです


とは言え、スチームガンは、

ライルガンの10分の1にも及ばぬ程度の

威力しかないそうですが


それでも、中型の魔物位なら

一撃で仕留める程の威力ですので、まあ十分ですよね


……もうちょっと、おはなししてもいいですか?

聞いてくれる方がいるとついつい……。

それは、エネルギーのみなもとについてなんですが……


【魔具】と【神機】には、


決定的な違いがあります。

それは、その威力の違いの根幹に当たる部分なのですが

魔具が、魔法の力、辿ると大気中のマナで動くのに対し

神機は、マナではなく、雷の魔法に近い性質を持つ、

未知のエネルギーで稼働しているからです


そのため、携行型の神機は基本的に1度だけの使い切り

発掘された時には、すでにエネルギーが枯渇してしまっている

神機も非常に多いのです


ですから、研究目的以外にも

このようにもし有用性があって、

稼働状態の神機が見つかった場合には、

非常に高額な値段がつくことは

想像に難くありません。


特にライルガンなみの、

国家が指定管理するレベルの神機であれば

その重要性も鑑み、

冒険者数人が一生食うに困らない程度の金額で

国が即座に買い取ってくれる、

正に、一攫千金のアイテムだったりします


…私も何時か冒険者に成れたら、そんな大発見が出来たらなぁ…



+o。。o+゚☆゚+o。。o++o。。o+゚☆゚+o。。o+



「だが...」


項垂れる三人を前に、カイドがニヤリと笑う。


「こいつはかなり状態が良い、政府の研究機関にでも持っていけば

 数週間分くらいの飯のタネにゃなると思うぞ」


「マジっすか!!」

「ご飯タベレルー(´;ω;`)ブワッ」

「やったわ!暫くベットで寝れそうね!」


先程までの項垂れ具合はどこ吹く風、

三人は一瞬で元の活気を取り戻していた


カイドは、彼等のリーダーに神機と、

遺物の鑑定の証明書を手渡した


「んじゃこれがうちの証明書だ

 研究機関に持ってく時には忘れんなよ」


「駆け出しの、俺らみたいなのでも

 いつも面倒見てくれてありがとな!

 次こそはあっと驚く様な物、必ず持ってくるぜ!」


「おう、だがあんま無理すんじゃねぇぞ、命あっての物種だ」


「わかってるって!心配いらねぇよ!」

「マタネー(^∀^)ノシ」

「ありがと、ナイスミドルなお・じ・さ・ま☆」


手を振りながら大通りへと去っていく、冒険者三人組

カイドは、煙草を吹かしながら、彼等の姿が見えなくなるまで

黙って見送った


遥か遠くまで、彼等の姿が見えなくなるまで、

ずっと見送る兄弟子の姿を

セルヴィは、少し不思議そうに見ていた。



    * * * * *



古代遺跡都市・王都テストラ。


一攫千金を目指して、冒険者達が集まる街。

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