大江健三郎『同時代ゲーム』なんてこわくない

  著者:大江健三郎(おおえ けんざぶろう)

  初版:1984年

 出版社:新潮社(新潮文庫)



 僕が、読書する人間として未だ幼く、

 大江健三郎を味読できないままに成人し、

『文学部ゲーム』の被害者になって、ろくな本も読んでいなかったころ、

 大江は、ノーベル賞作家大江は、未だよそよそしく、さらには歯がゆい存在で、

『同時代ゲーム』と聞くと、

 身も毛もよだつ思いだった。


 30代を迎えたいま、

 学生でも若者でもなくなった僕が腹這いになっている布団の上、

 眼の前に置かれている、

『同時代ゲーム』新潮文庫第五刷の文庫本。

 どこまで読んだ?

 236ページまで。

 まだ旅の道中。


『同時代ゲーム』はこわくない。

『同時代ゲーム』は、こわくなかった。

 いまでは分厚い新潮文庫の手触りが、大江健三郎という文学者を僕に馴染ませている。

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