読書という砂浜

ばふちん

谷川徹三『哲学案内』を依(よ)り代(しろ)にして、逸脱の散文詩を作ってしまった。

  著者:谷川徹三(たにかわ てつぞう)

  初版:1977年

 出版社:講談社(講談社学術文庫)



 うすい本だよ。

 86ページしかないんだ。

 ラジオ番組の書き起こしだね。

 CBCラジオ。

 まあそれはいいんだけど、放送されたのが、なんと1954年。

 ぶったまげちゃだめだよ。

 大昔はそんな番組も、比較的多かったんだと思う。

 おれが生まれる前のはなしだけどさ。


 で、最初に断っておくけど、おれはこの本をまだ21ページまでしか読んでいない。

 ごめん。

 86ページぐらい一息で読め、とか言わないでくれよ。

 一度に長い分量が読めなくなったんだよ。

 ま、読む本を増やしすぎて、収拾がつかなくなったのは、おれのせいでいいけどさぁ……。


「哲学の本来の役目は確固とした信念をもって、世に生きることを教えるものなのであります」(9ページ)


 よかった、青線引いといて。

 いきなりこうやってバーーーンと言われるわけよ、ラジオ番組で。


『あなたはこう思っているかもしれない。


  一般人のオレには、哲学なんてえんはない。

  哲学者なんて、世離よばなれの仙人せんにんさまさ。

  知りあいで、若い頃に哲学にはまっちまって、いっときんじまったや

 つがいたっけ――。


 違う。

 市井しせいの人間に哲学は縁がないというのも、

 哲学者が浮き世離れだというのも、

 中途半端なとらえかたで、

 誤解をはらんでいる。

 あなたの知りあいが、哲学に足をとられ抜け出せなくなって、おかしくなったのも、

 じつは、徹底的に哲学できなかったからなのかもしれない。


 わたしは、高らかに言おう、

 哲学は、のものであると。


 わたしは、高らかに言おう、

 哲学は浮き世、

 そしてまったく現実的なものであると!


 厭世的な哲学はいつの時代も目立つ。

 けれど、その反対の哲学も、

 いつの時代も、確固かっことして存在する。

 わたしたちに生きる勇気をくれる、

 真に前向きな哲学が!』


 ――そして、「哲学の本来の役目は確固とした信念をもって、世に生きることを教えるものなのであります」(9ページ)と続くわけだが、おれはかなりを言った。

 とうぜん、『』でくくった部分の、長々とした散文詩さんぶんしのことだ。

 もちろん、この本の文体は、『』の部分とは全然違う。

 

 おれはフィクションをぶち上げてしまった。

 調子にのって、ラジオ番組の書き起こしを拡大解釈して、詩を作ってしまったんだ……!!

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