第14話 あの時の約束
あれはサンシャイン60のプラネタリウムでハワイの空を上映するとネットで見付けて、二人で見に行った時の事だった。綺麗な星空とハワイアンソングに酔いしれていた。
「この曲歌ってる人知ってる?」
「知らない。なんかKONISHIKIっぽくない?」
「おしいかも(笑)。この歌は《イズ》っていうハワイの歌手が歌ってるんだよ。でも、若くして亡くなったんだよ。それで大好きなハワイの海といつも一緒にいられるようにハワイの海に散骨してもらったんだって。俺も死んだらハワイの海に散骨してほしいな。日本の冷たい石の下じゃなくて、暖かいハワイの海。」
「私もハワイの海好き。綺麗だし、泳げるし。特にカイルアの海が好き。」
「マジでっ?!俺もカイルアの海が一番好き!!観光客もあまりいない地味だけど綺麗な海。」
彼をそっと見たら星空の奥にハワイの海を見ていた。
「大好きな利香に散骨してほしいなぁ。悲しがらないで、海に撒いて。」
そんな話を聞いたら何だか悲しくなって、握っていた手をぎゅっと握り直してから言った。
「分かった。少し骨を御守り代わりにもらって、後は散骨する。ずっと一緒だね。命日には毎年ハワイに行くから。」
あの頃の思い出と悲しい気持ちが甦った。まるで自分の死を予感していたみたい。
離婚・・・してたんだ。本当に独りぼっちで全てを受け止めていた。
私が一緒にいてあげられたら、支えになってあげられていたら。今さら考えてもどうしようもないことだけど、考えずにはいられない。
だって・・・。私がもっと強ければ・・・。私がもっと待っていられるほど強ければ・・・。
新しい生活を始めてしまった私を少しは恨んだ?逃げた私を責めたりした?
いや、きっとあの人は、そんな事はしないはず。だって毎年のバースデーメール。私の幸せを祈ってくれていたのは嘘ではなかったはず。
私が今、彼のために出来る事・・・。それは彼の最後の希望でもあったハワイの海への散骨だ。
初めて彼のために出来る事を見つけた。行こう。ハワイへ。
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