第12話 10年後

あれから10年の月日が流れた。

変わった事は、


結婚したこと

2児の母になったこと

一人の女よりは母になったこと

ガラケーからスマホになったこと


でも変わらない事は、


毎年お誕生日には彼からお祝いメールが届くこと・・・


私からの返信は一切しない。1年に1回のメール。1年に1回の彼からの連絡。やっぱり誕生日近くなるとウキウキする私がいる。でも、変な気は起こさない。それが自分の中のルールだった。


今年の誕生日もやっぱり同じようにメールが届いた。書き出しはいつも決まっている。


「happybirthday 利香さん


あれから10年の月日が流れたね。もう自分はおじさんからおじいさんになりそうです(笑)


10年を区切りにして自分は利香さんから卒業したいと思います。今までメールを送らせてくれてありがとう。読んでくれてるかは分からないけどね(笑)


この世界のどこかで見守ってます。


たくさんの子供達に囲まれて、幸せな誕生日を過ごしてください。」


密かに楽しみにしていたメールが終わってしまった。1年に1回の特別な私の秘め事が終わってしまった。虚無感に襲われた。トキメキを無くしてしまった。私はここにトキメキを求めていたんだ・・・。


自分に甘い私は思わず返信に手が触れた。最後くらい・・・。でも、返信する勇気が出なかった。

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