第7話 怒り

北海道から離れ、自宅に帰ってから凄まじい孤独に襲われた。でも、それは彼と離れたからではない。


一緒に旅行したり、食事したり、楽しくて嬉しくてたまらない時間にも、いつも離れたくない哀しみと一人になった時の恐怖が付きまとう。素直に喜べない自分がいる。楽しそうに過ごす彼に怒りさえ感じる。

「この男、真剣にどこまで考えているのだろう。」

「どうせ私が身を引けばサヨナラするつもりだろう。」

「家庭を捨てる気なんてさらさら無いくせに。」

「家を買うなんて、もう決定的だ。」


日陰の女の誰もが通る道だった。独りで考えてどんどんひねくれていく。

なかなか進展しない彼との関係。聞きたいけど怖くて聞けない奥さんや子供との事。親友からは目を覚ませと説教され、孤立する自分。誰にも認めてもらえない恋。一体いつになったら彼と一緒に生活出来るのだろう・・・。そんな日なんて来ないのかもしれない。


その頃の仕事先の病院では、院長に不満を抱いた人かどんどん辞めてしまうという状況が続いていた。なかなか人も入らず毎日残業の日々で疲れ果てていた。仕事もうまくいかずに、私の存在価値すら疑ってしまう。


突然すべてが嫌になった。今の仕事も、彼も、友達も、自分も全部・・・。


そして私は仕事を辞めて、彼にも別れを告げてハワイに逃げることにした。

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