08 イラダチ

 あの子はどこにいるの?


 かすかに聞こえてくる声は、いつもどこかで途切れてしまう。


 あの子が泣いている。

 あの子が苦しんでいる。

 あの子が飢えている。


 声を聞く度にあの子の姿を探しても見つからない。

 苛立ちに満ちた足取りで、鈍く光る水面を踏みつける。


 ぴちゃっ…………


 荒波立つ水面を眺めながら、ため息を漏らした。

「いったい、どこにいるの…………?」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る