第59話 おいらはこわれちゃった……の話

 やあ……。


「ヒューストン、ヒューストン。応答願います」

「こちら、ヒューストン。どちらからの通信ですか?」

「ヒューストン、ヒューストン。こちら、スペースサルベージシップ“ヌレテデアワ”号。太陽と金星の間にいます」

「はあ? そんな宇宙船は登録されていませんが? 識別番号、船長、乗組員数、船主など教えてください」

「ヒューストン、ヒューストン。そんな悠長な状況ではないんです。本船はスペーストレジャーハンター船なのです。現在、太陽に突っ込んで溶けてなくなったという鉄腕アトムの残骸が漂流しているとの情報を得て、太陽近辺を捜索中、古代守艦長の“ユキカゼ”と接触し、操行不能となっています。助けてください。わたくしの名前は艦長代理の F.かっぱです」

「こちらヒューストンですけど、NASAには太陽と金星の間にいける有人宇宙船はありません。あなた方の技術が欲しいくらいです。申し訳ないが、自力でなんとかしてください。では通信を切ります」


 おいらは、フォースの暗黒面にまたまた陥ってしまったようだ。とにかく気分が重い。うーん、重いというよりも、「将来に対する唯ぼんやりした不安」なんて、文豪の口真似をした方がいいだろうか? 芥川は『河童』という小説を出していたが、ウチのかっぱを最近見かけないなあ。ご存知の方、お知らせください。

 こんな精神状態で、皮膚科にまた行った。いつまで通い続けないといけないのだろう。まあ、医療費無料の身ですからいいんですけど。そのあと、元妻に会って、サイゼリアで食事をしたんですが、なぜか、大げんかになって、おいらは絶縁を宣言した。今までありがとうございました。もう会うこともないだろう。

 これで、おいらは完全な孤独だね。それも結構さ。もともと、一人が好きなんだ。心からの友達なんて中学までだね。あとは、自分に便利な人を友達って言っていただけなような気がする。

 たぶん、おいらはサイコメトラーなんだ。他人を殺すつもりは全くないですが、殺すか殺されるかという場面になったら、躊躇なく殺すでしょう。

 こんなこと考えるのもフォースの暗黒面にいるからですかね?


 あれ、電話だ。誰?

「ぺ、ぺこりさん、助けてください」

 きみ、どこにいるの?

「ぺこりさんの命令で、宇宙空間のトレジャーハンティングしているんじゃないですか! その途中で遭難して全滅の危機ですよ」

 ああそう。記憶ないや。

「とにかく助けてください!」

 ああ、じゃあタートルキングを送ってあげるよ。で、アトムの残骸は見つかった?

「見つかりませんよ!」

 そりゃそうだ。TV版では最終回に太陽に突っ込んだアトムだけど、漫画の方は結局、最終回なんてなかったんだもの。

「いじめですか? パワハラですか?」

 いや、これからのスペーストレジャーハンティングの予行演習だね。この広大な宇宙にはキャプテン・ハーロックやクィーン・エメラルダスが沈めた宇宙船や、銀河帝国軍、自由惑星同盟の沈没船がいっぱいあるからね。

「たとえ、古くないですか?」

 おいらの知識じゃこれが限界。鬱だからさあ、寝るよ。

「タートルキング、忘れないでくださいよ!」

「ぐー、ぐー。むにゃむにゃ」

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