第40話 ぺこり、ふゆごもるの話
やあ、おいらです。ふぁあ〜、ダメだわ。眠いよ。おやすみなさい……
(前室にて)
「えっ、なんで私なんですか? 他に適任者がいるでしょう?」
「それが、皆さん月末でお忙しくて」
「わ、私だって、忙しいですよ。天気図を見たり、『ひまわり』の衛星写真を解析したり」
「でも、ウイングさんには了解を取りました」
「本当に? でも、私は原稿を読むだけで、アドリブとかできませんよ」
「それでいいんです。余計な不規則発言はいらないんです」
「そうですか……じゃあ、今回だけですよ」
「ありがとうございます」
こんにちは。気象予報士のヒライです。本日の『ぺこりの暴言ステーション』なのですが、メインキャスターのぺこりさんが、断続的な冬眠に入ってしまって、出演を見送らせていただくことになりました。さらに、アシスタントの水沢舞子さんはインフルエンザでゾフルーザを服用したら、逆に症状が悪化してしまい、欠席。レポーターのかっぱくんも空気の乾燥で、頭のお皿が割れてしまったそうで来られないんです。そこで唯一、元気はつらつの私が司会代行に抜擢されたのですが、皆さんご存知の通り、私は天気のことしか知りません。なので、全編、お天気の雑学でいきたいところですが、そうもいきませんよね。幸い、ぺこりさんが睡魔に襲われる前に書いていた原稿がございますので、これを読んでいきます。ですから、番組内容のクレームは局かぺこりさんに送ってくださいね。私の思ったことではありませんから。よろしくお願いします。
まずは、明石市長のパワハラ発言問題です。なんでしょう、最初は市長の横暴がすぎるというだけの話でしたが、ここにきて風向きが変わってきたようですね。発言自体は下劣で、どうしようもないトンチキなもので、当然許されるものではありませんが、あの市長、なんかいろいろな施策を打ち出していたようですね。それに、パワハラを受けた職員が「パワハラの認識がない」と発言し、あの公開された音声の直後に和解していたとか。じゃあ、誰がなんの目的で音声をリークしたのか? 四月の選挙に向けてですかね? わかりません。ただぺこりさんは「公務員は公僕である。しかし、多くの公務員がそれを忘れて仕事をきちんとしていない。ならば、トップの人間が叱咤激励。少しは強く、言った方がいいんじゃないですか」と述べています。
次もまたパワハラですか? 多いですね。春の選抜高校野球大会に出場が決まった某高校の合宿所で監督が一年生の部員に暴力と思しき行為をし、それを三年生の部員が録画して、SNS上にばらまいた。
ここからはぺこりさんの暴言です。「おいらは、こういう事件が起こるたびに思うことがあります。なんで、普通の監督さんはこういう行為をすると暴力だ、パワハラだと言われ、謹慎したり、退部したりするのに、亡くなった星野仙一さんだけは許されていたんだろうと。そりゃあ、プロとアマは違いますけど、仮に星野さんが高校野球の監督をやってたら、絶対に鉄拳制裁しますよね。それで、星野さんの高校は甲子園に出れなくなりますか? たぶん、出られたと思います。それはなんでか? 『星野さんがマジで怖い人だったから』だと思います。ドラゴンズの監督時代、ジャイアンツの水野にビンタをくれたり、アメリカから来ていた審判を恐怖のあまり帰国させたり、判定に不服で審判を罵倒したり脅しつけたりしていたのに、星野さんって皆に許されていた。おんなじことをしたタイガースのコーチは無期限出場停止になりましたよ。なんで、星野さんは特別扱いなの? やっぱ、怖かったんだよ。バックに誰かいたんじゃないの? そう思います」
念押ししますが、これはぺこりさんの意見です。
恵方巻きの話。私は関東の人間ですからね。恵方巻きのことを知ったのは、ここ最近です。コンビニやデパートで必死に宣伝していますね。これにもぺこりさんは一言あるようです。「恵方巻きの廃棄処分が常軌を逸するものだそうです。この習慣は本来、関西のもので、関東では馴染みがなかった。節分には豆まきしていればいいんですよ。これも、ちょっと食べ物を粗末にしていますけどね。でさあ、とにかく、売上伸ばしたいコンビニチェーンがさ、無理やり、恵方巻きを関東に持って来たわけよ。でもさ、恵方巻きって、しきたりが面倒じゃない? その年の吉方を向いて、食べ終わるまで喋らないなんてね。だいたい、吉方をどうやって調べるのよ。方位磁針なんて一家に一台あるものですか? だから、売り上げが思ったほど伸びない。でも、目標分は作っちゃう。クリスマスケーキと同じ。ギャンブルじゃないんだから、綿密にマーケティングしろって感じ」
だそうです。
最後に、私の本職である天気予報を。雪が降りますよ! 地球のどこかでね!
ああ、疲れた。もうやりませんよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます