第32話 おいらのざつだん、あらかるとの話

 やあ、おいらです。


 今日は『隠れ家風リストランテ ぺこり』は臨時休業となりました。食べログ横浜市緑区十日市場版とかいうので★五つもらったとか、ミシュランガイド横浜市緑区十日市場版で三つ★レストランとして紹介されているとか、テレビで、巨匠、堺正章さんが「★三つ」って叫んでくれていたそうなんですけど、おいら実物を見たり、聞いたりしていないので、よくはわかりません。

 しかし、ウチのシェフが言うには、最近、SNSで「あそこのオーナー兼ホール係はクマだろ? なんか、世界中の各所で、“クマインフルエンザ”っていうのが流行してるんだってさ。まだ人間には感染していないみたいだけど、いずれは変形ウィルスが生まれて、人間にも移るぜ。あんなクマ、猟友会の人が射殺すればいいんだ」とかいう、誹謗中傷、悪質なデマが飛んでいるらしいのです。命の危険を感じたおいらは国立感染症研究所に問い合わせてみましたが、そんなインフルエンザの情報は入っていないそうです。完全においらの店に対する嫌がらせです。緑警察署には被害届を提出しましたので、犯人は速やかに自首されることをお勧めします。


 まあ、もともと利益を出したくて、営業している店ではないので、休業していいのです。もう、めんどくさいから、夜の『バー ぺこり』もかっぱに任せて長期休養することにしました。

 そうしたら、妹ぺこりが珍しく、顔を出して「お家でお菓子が作りたい」というので、身体を譲って、おいらは脳内で惰眠を貪りました。どれくらい経ったでしょうか? 「お兄ちゃん、起きて試食して」と妹ペコリが言います。早速、選手交代して、試食をしました。そのお菓子はティラミスでした。一口食べたら美味しくて、びっくり! あまりに美味しいので、「妹よ、これでお店が出せる!」とおいらは叫び、早速、十日市場駅近辺に店舗を借りて、ティラミス専門店を作りました。店名は『ティラミス ヒロイン』です。何か問題でも? マスコットはおいらに唯一懐いていながら、離婚によって引き裂かれ、亡くなってしまったねこのチビをイラスト化しました。ええ、ねこですが、何か問題でも?

 妹の作る、ティラミスは口どけが優しくて、舌の上に羽衣を身にまとった天女が踊っているようです。ただ、妹一人で作っていますし、おいらも休養中ながら残務があるので、ずっと身体を貸しているわけにもいかないので、作業時間が少なく、申し訳ございませんが、少数限定商品となっております。そのため、購買者の飢餓感を煽ってしまったようで、「せっかく並んだのに、買えないじゃないよ」というヒステリックババアが多くて困ります。なので、アルバイトに雇った水沢舞子には「お客様、それでしたら東京の『ティラミス ヒーローズ』さんか『ティラミス スター』さんに行かれたらよろしいかと思います」というように指導しました。


 ああ、今回は自慢話ではなくて、雑談でした。

 あの、毎度お馴染みの相撲ネタなんですけれど、いいですか? 嫌と言われても喋りますけどね。宇良っていう小兵の力士がいたのご存知ですか? 嵐の二宮くんと洗剤のコマーシャルをやっていた彼です。そり技など、多彩な技で面白い相撲で活躍していたんですけど、膝の靭帯を切っちゃったんですよ。で、連続休場して番付は大きく下がっちゃったのです。それで、先場所あたりから復帰したんですけどねえ、また靭帯を切ってしまった。本当に残念です。そういえば、照ノ富士という大関がいたんですけど、「これは横綱に行くなあ」とおいらは思いましたよ。正直、モンゴルさんは好きじゃないのだけど、照ノ富士は若くて、豪快だから気に入っていたんです。そしたら、彼も膝をやってしまって、大関陥落。昨日調べたら、今は序二段だって。大関が序二段まで落ちちゃうなんて。ホント、力士は膝をやってはダメだなと思いました。原因はねえ、体重が増えすぎなんですよ。日本相撲協会は体重に制限をつけなきゃダメだよ。故障者が増えるばかりだ。そういえば、十両に炎鵬という、すごく小さい力士がいるんです。舞の海や智ノ花より小さいような気がします。面白い相撲を取るみたいですよ。もっとも、稀勢の里が引退してから、おいらは大相撲見ていないんだけど。あとひとつね。大横綱、大鵬の孫の納谷だっけ? 足踏みしているようですね。彼ってさあ、大鵬の孫だけど、協会を賭博でクビになった貴闘力の息子なんだよね。誰も言わないけどさ。その納谷がこの前負けた力士の四股名が寺尾。はあ、寺尾? 錣山親方の現役の時の四股名ですよね。亡くなったお母さんの旧姓でしたよね? だから、この現役の寺尾はたぶん、錣山親方の息子とか親戚だと思ったわけ。で、一応調べたら、なんの血縁もないただの弟子でした。うーん、寺尾って四股名がさあ、正直にいうと大相撲の四股名ではないですよ。錣山親方だから許される四股名だよなあ。それを赤の他人につけるとはねえ。おいらは首をかしげるわけ。それに錣山親方は二所ノ関一門に入ったのね。なんのゆかりもない一門だよ。彼の現役時代にさあ、“井筒三兄弟”って言ってさ、長男鶴嶺山、次男逆鉾、三男寺尾ってすごく仲が良かったのにねえ。鶴嶺山は故障で十両止まりだったけれど、協会の決まりで、師匠の実子は部屋を継承できたのに、それを断って、『寺尾』というちゃんこ屋を始めたの。まだあるのかなあ? 逆鉾と寺尾は関脇までいったね。その二人が今、別の一門にいる。不思議だ。脱線しますけれど、あの当時の井筒部屋の力士の四股名が好きだったなあ。霧島、陣岳、薩州洋。今の安直な四股名と大違いさ。大鵬を育てた二所ノ関親方は漢文が好きで、そこから、四股名を作ったんだって。大鵬はその中でもとっておきの四股名だったんだそうです。


 結局、また大相撲ネタかよ。早く初場所終わんないかな。もう、絶対観ないからさ。

 おしまい。

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