第28話 いんごうをかんじるの話

 やあ、おいらです。


 冬眠し損ないました。快適な目覚め。しかし、昨日起きた事件はおいらの心の中いっぱいに、重苦しい、どす黒い暗雲を立ち込ませます。ああ、ここ数話、誰も読んでいないようだ。まさに独り言です。それでも、精神の均衡を保つために書きます。できれば、未来の人が、古代のデジタルデータを発掘する作業をして、言ってみれば、デジタルデータ考古学調査みたいなことをやって、「昔、『カクヨム』という小説サイトがあったようだ」なんて言いながら、データを見つけ出して、細かく調べ上げ、「なんか、よろしくま・ぺこりという市井のクマ? なぜクマが人間の文字をパーソナルコンピューターに打ち込めるのだろうか? とても不思議だが、とにかく読んでみよう」ってことになって、おいらの一連のぼやき駄文を精読し、「なんて因業なクマなんだ」とおいらの不幸の数々を深く心に刻みつけ、できたら、「このかわいそうなクマが成仏できますように」って盛大に法要でも開いてくれればいいんだ。


 しかしですねえ。おいらは虚空に向かって、あるいは漆黒の闇に向かって話しかけるのです。


「おいらは、どこまで不幸なんだ?」


 もう、ここまでくると、人智を超えた何かがあるとしか思えません。先祖が、神の使いを殺したとか、山背大兄王の一族を殲滅したとか、比叡山に火を放って、坊主はもちろん、女子供に至るまで皆殺しをしたとか、南京で悪逆非道の限りを尽くし、婦女子に恥辱を与えたとか、広島と長崎に原爆を落とす命令を出したとか、浅沼稲次郎を暗殺したとか、カルト教団を作って、選挙に打って出て大敗して、先鋭的になり、上九一色村にサティアンを作り、そこで、部下にサリンの製造を命じて、松本サリン事件や、地下鉄サリン事件を引き起こして、平成という時代に大きな傷跡を残した……なんか、途中から、先祖ができっこないことも混ざっているな。とにかく、何か罰当たりなことをした、ご先祖さんがいて、その罰が、現代を生きる、おいらに降り注いでいるとしか思えません。

 あまりに負の連鎖が続きすぎるよ。

 えっ、自業自得なのではないか? まあ、心当たりはなくはないですよ。悪いこといっぱいしてきたからね。でもね、心は聖徳太子のように澄んでいますよ。もっとも、聖徳太子は教科書から消えちゃいましたけどね。前に、元妻の住んでいたアパートの坂道の頂上に、石碑があったんですよ。おいらはえっちらおっちら坂道を登って、それを確かめてみたんです。そうしたら、聖徳太子を祀った石碑だったんです。で、よく見ないとわからないんですが、その石碑の裏に、古い階段があったんです。おいら、それを見つけちゃったら、冒険心が出てきちゃって、登ってしまったんです。全く、整備されていない、荒れ果てた土地がそこにありました。そこをズンズン進む。ああ、ちょうど激躁状態の頃です。怖いもの知らず。そうしたら、古いお堂があって、聖徳太子堂と書かれていたのです。お菓子屋さんではないですよ。聖徳太子信仰ってものがあったんですね。そのとき初めて知りました。でも、教科書からは消えている。諸行無常の響きあり。


 元の話に戻ります。おいらはもう、死ぬまで罰ゲームを受け続けなければいけないんすかね。厄年の時にお祓いにいかなかったからかな? キチガイの時に、近所のお寺とか探しまくって、お参りしまくったんですけどね。お寺さんじゃ、ダメなのかな? 日本人は神社なのかな? 八百万の神さまね。そういや、平将門も、神田明神で神様になってる。ああ、ちなみに、仏教って、日本に馴染んでるけど、外国の宗教ですからね。だって、お釈迦さまってインド人でしょ。それが中国経由で輸入された。輸入したのは蘇我馬子と聖徳太子ではなくて厩戸皇子ね。で、「仏教は異教」と反対したのが、物部守屋。馬子と守屋は結局戦争をして、勝ったのは馬子。これで日本に仏教が根付く素地ができた。少年、厩戸皇子は馬子軍の神秘的なアイドルだったのです。


 だからどうした! 誰か、おいらの負の連鎖を止めてください。正直、辛いっす。耳たぶのしもやけも治らないしね。


 ああ、誰も読んでいないのに、叫んでも無駄でしたね。ヒゲを剃って、銀行に行く準備をしよう。家賃を滞納したら、すぐに追い出されてしまうま。

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