第22話 いろうというものにきょうみをもった。ねぎらいじゃないよの話

 やあ、おいらです。


 いらっしゃいませ。いつも我が『隠れ家風リストランテ ぺこり』をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。相変わらず、コースのメインとなる食材は届いておりませんが、お客さまは常連でいらっしゃいますから、アラカルトの方がお得ってご存知ですよね。ええ、存分にお楽しみください。ああそうですか? それは嬉しいお言葉でございます。おいら、いえいえ、わたくしのおしゃべりが楽しいだなんて恐縮至極でございますよ。そんなことを仰られたら、わたくし、ノンストップ。ブレーキの壊れたダンプカー、ブルーザー・ブロディーになってしまいますわ。おほほほほ。


 ああ、そうでございますか? お客さまはアラカルトしかお召し上がりになっていないので、当店のコースのメイン食材をご存知ないのですね。ええ、作者がさっきニュースを観ていて思いついた、とれとれのネタなんでございますがね。それは某国で養殖させていた、テトロドトキシン、つまり猛毒が体内に存在しない、三年もののトラフグなんでございますよ。そうでございましょうね。一概には信じられかねないことでしょう。しかしですね、実はフグというもの、元から体内に毒を持って生まれるわけではないのです。餌などに含まれる微妙な毒が、成長するにつれて蓄積されて猛毒を帯びるわけなのです。ですから、養殖の際に毒を生じさせない特別な餌を与えれば、シビれる心配のないフグができるのです。信じていないですね? でも、これはわたくしの得意なジョークでもウソでもありません。ネットで調べれば、どこかの大学の研究論文が出てきますよ。その内容はわたくしには難しくてチンプンカンプンですけどね。だって、脳みその小ちゃいクマですから。

 某国は中国だろうって? 違います。あんな大雑把な国に委託したら、今頃当店はフグ中毒のお客さまを出して、営業停止になってしまいます。あくまで某国とさせていただきます。作者がいいアイデアを思い浮かばないのだろう? ははは、ご名答。で、なんでフグは届かないのかと。えーと、それがよくわからないのですよ。作者もその辺り、「全く、アイデアが浮かばない」って呻吟していました。今しばらくお待ちくださいね。


 さて、いつも脇道に逸れてばかりで表題の件にたどり着かないので、早速、お話いたしましょう。

 あのわたくしはですねえ、この場合のわたくしというのは作者とキャラクターが混在してしまうので少々厄介なのですが、幼少の頃から虚弱で食も細かったのですよ。今は大兵肥満なのですけどね。まず、お肉が食べられなかったのです。特に脂身のところがダメで、見ただけで吐き気を催すくらいでした。お肉で食べられるのはひき肉と脂身のない、すき焼きなどに使う、割合高級な肉だけ。貧乏なのに贅沢なガキでした。他にも好き嫌いが多くて、小学校での給食の時間が辛くてなりませんでした。なにせ、必ずと言っていいほど、お肉が入っているのですから。たまに白身魚のフライなどが出ると狂喜乱舞いたしました。「完食できるぞ!」とね。あとは、みんなに人気のソフト麺。今もあるのでしょうか? あれもジョーカーでしてね。なぜならあれはつけ麺で、カレーがついてくるではないですか。カレーには当然、肉が入っています。お察しください。小学校の間は偏食を克服できませんでした。まあ、生きるのに必死だったということもあります。病弱ですから。

 中学、高校は基本、お弁当でしたので助かりました。そのうちにわたくしも成長してきて偏食が治ってきまして、だんだんとお肉の脂身なども食べられるようになりました。ただ、今も見た目でダメなのが茹でただけの肉でして、特に、鶏肉の茹でたもの、あれの皮の部分を見るとテンション下がります。焼き鳥の皮は大好きなんですがね。とにかく見た目が問題です。結構、メンタルの問題かもしれませんね。

 大人になりますと、食生活がおかしくなってきます。何か周期のようなものがございましてね。あるときは朝ちょっと菓子パンをつまんだ程度で、あとは食べないで過ごしてしまう。ついには絶食状態になります。特に、冷蔵庫やパントリー(ただのレンジの下です)に食べ物がないと買い物に行くのが面倒なのでそうなります。それが、ひとたび外出して、たくさん食べ物を買ってしまうと、もう半月分を一日で消費してしまうくらい、食べてしまうんです。食い尽くすって言葉の方があっていますね。ギャル曽根に勝てるのではと思っています。ただ、わたくし、十二指腸に潰瘍がありますし、元々は胃弱ですので、あまり調子にのると、トイレにこもって嘔吐しまくります。ああ、お食事中失礼しました。構いませんか? ありがとうございます。要はブレーキの壊れたダンプカー、ブルーザー・ブロディー……先ほども使いましたね、この例え。芸人失格、いえ、わたくしは芸人ではありません。

 それで、ようやく本題になるのですが、胃ろうってご存知ですか? そうですよね。わたくしも今日、知ったのですが、主に老人で、咀嚼のできない方の胃に直接、チューブか何かで栄養分を突っ込むらしいのです。でも、そんなの普通は嫌ですよね。食事って単にエネルギーを得るためではなくて、人生を楽しむためのものですからね。ですから、胃ろうを拒否する老人が多いのだそうです。

 翻って、わたくしですが、ほっておくとなんでも食べちゃう雑食動物。体重も増えるばかりで全くコントロールできません。それに、歯も悪いから、実は食事がつらいのです。これはまた次の機会にお話ししますが、市販の鎮痛剤ばっかり飲んでいるのですが、どうも、覚せい剤とかと同じく常習性があるらしく、精神にも影響があるようなのです。

 でしたらいっそ、胃ろうをしてもらって、食事という厄介なものから解放されて、その時間を読書や駄文の執筆に当てて、世界を平和に導く方策を我が組織のメンバーと考える方がいいような……ああ、後半部分はご内聞にお願いいたします。


 ああ、もうこんな時間ですか? えっ、この店は毎日一組しかお客さまを入れないけれど儲けは出るのかですって? もちろん出ませんよ。この店はわたくしがお客さまとのおしゃべりを楽しみ、なおかつ駄文のネタを探しているだけのものなんです。それにしては一人で喋っている? いやだなあ、わたくし、クマですよ。一頭って言ってください。

 おっと、そろそろ、『バー ぺこり』の方の仕込みがありますので、わたくしは失礼しますね。どうぞ、ごゆっくりお食事をお楽しみください。では。


 ふー。おいら、接客は苦手だよ。いや、嫌いだ。なのになんでこんなこと続けているんだろう? ああ、すべて、マネージャー気取りのかっぱのせいだな。あいつ、関東地方に異常乾燥注意報が出ているからって、「お皿が乾いて、動けません」とか言って病欠しているらしいな。そういうときこそ、ポカリだろ! というか、水道はないのか? あいつの家。ひねればジャーだろ。もっとも、阿呆首相が変な法律作っちゃったから、水が出なくなる日も来るんでしょうね。

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