第17話 けつえきぬかれて、こころうばわれというしんきょうの話

 やあ、おいらです。


🎶きんたろさん きんたろさん おこしにつけたまさかりで おいらをころしてくださいな


 やーりましょう やりましょう それならおまえのくびすじに まさかりいっせん きりつける🎶


 すみませーん。おいら、バカなんです。鴨居駅のホームで閃いちゃって、ずっと頭の中をぐるぐる回っちゃってね。書かざるをえなかったのであります。


 さて、帰ってきましたよ。どこから? ええ狂気の巷から……ウソです。内科の病院からです。

 いつもだと、ウチを早く出て、診療時間前についちゃう、おいらでしたが、なんだかそういうのも、はしたないような気がしまして、はやる気持ちをグッとこらえて、ゆっくり出発しました。ああ、言い忘れましたが、おいらが行くのは午後の診療です。長年の病院通いの末に、思ったのですが、病院は午前の診療より、午後の診療の方が空いているような気がします。お年寄りはせっかちだし、サラリーマンは午前半休をとって、午後は出勤しようなんて勤勉なことを思うのではないでしょうか? もちろん、統計的な証拠はありません。


 おいらは三時ぴったりに病院につきました。待っている患者さんは三人。「こんにちは」と大きな声で受付のババアと長谷川町子先生、直筆のサザエさんみたいなおばさんに挨拶をしました。この人数だと楽勝かな? と思ったんですが甘かった。おいらの一人前の若造が受付のサザエさんに「今日はどちらのお加減が悪いんですか?」と聞かれて「なんか……調子が悪いんです」って答えたの。こいつは病気のシロウトだ、とおいらは思いました。具体的にどこがどういう風に悪いのか自分で把握して、医者なりなんなりに言えなくちゃ、診療する方だってたいへんですよ。まあ、この時期ですからインフルエンザじゃねえのと思いました。ところが、そいつが診察室に入って、三十分以上出てこないの。ひょっとして重症? 貧乏ゆすりをしながら考えました。ちなみに、おいらは病院とか薬局では読書ができません。集中できないからです。昔、元妻が元でなかった頃、なぜか逗子までエステに通っていて、さみしいからおいらもついて行っていたんですが、流石にサロンまでは入れず、駅前のドトールで待っていたんです。その時は、文庫本、スマートフォン、iPodと準備万端整えて、煙草を五本ぐらい吸って待っていたんですけど、最長で一時間半が限界。平均一時間ですね。ダメなんですよ。一か所にじっとしているのって。エステは二時間くらいかかるので、あとは、どうにかして時間を潰さないといけない。とりあえず、目の前にある、逗子市役所のお手洗いを借りて、そのあと市役所のソファーに意味もなく座ってみる。やっぱり耐えられなくなって、隣接する亀ヶ岡八幡宮という鶴よりだいぶ小さい神社にお参りして、そこでまた一服。あとはもうどうしようもないので、逗子の商店街をですね、エステサロンを中心点にしてずーっと回転し続けていました。今だったら絶対やらないよ。あの頃は依存していたんですね。元妻に。


 話が逸れました。おいらは前にも書いたけど、血糖値の薬、その他もろもろが欲しいだけなので、医者との長時間カウンセリングは不要なの。でも、今日は血液検査をするって言われたので、はいはいと頷きました。前作で書いたけど、誰も覚えていないでしょうね。ここの病院には一人だけ、優秀で結構美しい、だけど年齢不詳の看護士さんがいて、おいらの血液を抜いてくれたんですけど、あれ? 今日はメガネをしている。おいら、メガネ娘大好き。で、なんでって聞いたら、午前中の採血で失敗しちゃったんだって。患者さんの腕に青タンができちゃったそうです。つまり、メガネは老眼鏡。年齢が絞られてきますね。失敗したからかもしれませんが、今日はやたらと話しかけてくる。おいらもまだ、軽く躁っぽいから話を返す。言葉のキャッチボールや。これで、看護士さんに「独身ですか?」なんて聞けて、なおかつ独身だったら、世界は変わるんだけどなあ。もちろん、おいらは聞きませんよ。妄想するだけです。


 病院の帰りに道の反対側を見たら“まいばすけっと”がある。ああ、ここってイオンだからダイエーと同じポイントカードが使えると思って、渋滞している車道を横切り入店。そうしたら、ダイエーにはなかったピーチ味のコカコーラがありました。なんか変なの。で、ついでに今日の昼飯兼晩飯と菓子、パンなどを買ったんですが、レジ袋が透明じゃないの。これではゴミ袋に使えません。残念。


 鴨居駅のホームは学生でいっぱい。正直うざいね。美少女でもいれば別だけど、見かけませんなあ。

 ウチに帰ったら、外装塗装の人たちがまだ仕事していて、「お疲れさま」って言ったら、この前、挨拶に来た女子で、今日はしっかりお顔を見ましたよ。ウブな感じ。美人かどうかは判断できません。でも、「あっ、こんにちは」って言ったから、おいらのこと覚えていた感じです。良い子だ。でも考えてみれば、あの時部屋にいたのたぶん、おいらだけ。忘れないよな。


 そう言えば、芥川賞、直木賞、新井賞が発表されたのね。新井賞ってなに? ですか。まあ、ご自分でお調べください。芥川賞ってさ、石原慎太郎、村上龍、綿矢りさ、金原ひとみ、又吉直樹みたいに当たると大きいけれど、その他はよくわからないよね。一方、直木賞はなんだか新人賞ではなくて、功労賞みたいになってしまった感もなくもないの。今回受賞の真藤順丈さんって、新人の時、エンタメ系の新人賞を三つとって騒がれたけど、あんまり最近は話題を聞きませんでした。けれど、『宝島』は『このミス』に入ったりしていましたね。売れるんでねえの。


 あとさあ、悪口なんですけど、百田尚樹って何様? なんかフィクサーでも気取ってんのかな? 真のフィクサーはさあ、おいらだよ! ええ、ウソですけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る