8話 氷剣(2)
人間の体が硬質化して出来上がった伸びる刃が、上方から人間たちに向かって降り注ぐ。
「総員、防御態勢!」
サフィールの忠告は少しだけ遅かった。
戦闘員たちが精霊術を発動するよりも前に、刃は数人の脳に届いてしまっていた。
肉が潰れる音がする。派手に血が飛び散る。断末魔の声は短く、串刺しになった人間の肉体が、刃が引き戻されることによって宙づりになる。
「ひひっ……」
アポストロの口から、嗜虐的な笑みが零れた。僅かに体を震わせた途端、人間を串刺している刃が震え―――人間の死体が膨張して弾けて消え去った。
肉片は細かく砕けて残らない。それが人間だったという証拠は、血ばかりになって。それら人の証の残骸は、雨ばかりが降り注ぐ。地面を濡らす。赤く濡らす。
むわりとした生臭い匂いが辺りに漂う。
これが、僅か数秒の出来事だ。
そして、凄惨な光景を理解すること、数瞬。
「き、さまぁああああ!」
誰かの怒号に、フリーズした人間たちの脳が再び動き出す。
殺された。悲惨に、無残に、凄惨に。まるで食物を潰すかのような気軽さで。
笑いながら。
怒りは誰の中にも存在した。それが一挙として爆発した。
戦闘員の一人が、手に持った剣を構える。
イライナも倣うように腰の剣に手をかけ、
「『水、水、刃を、出せ!』」
誰かが精霊術を使うために怒鳴った、直後。
大気を劈くような悲鳴が、イライナの耳の中に響き渡り、思わずイライナは動きを止めた。
誰の悲鳴か、分からずにイライナは辺りを見渡した。誰も居ない。怒りの声を上げている人間はいるのに、苦痛そうな悲鳴を上げている人間は、何処にもいない。
「死ねぇえええ!」
出遅れたイライナを置いて行って、水を剣に宿らせた戦闘員が、剣を振るった。大量の水が一挙としてアポストロへと襲い掛かる。が―――アポストロの周囲を取り巻いている光の帯の一つに水が触れたかと思えば、水が帯に吸収されていくところを、イライナは確かに視た。
そうして、光の帯に水の威力を吸収されたが故に、アポストロに届く水の量は、本来の百分の一にも満たなかった。沢の水程度の緩やかさ。おそらく、心地よさすら感じるほど。アポストロは当然のようにその場に立ち続け、馬鹿にしたようにケラケラと笑っている。
「無駄だよぉ、防げるもん!」
子供のように無邪気に笑われて、水を繰り出した戦闘員は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「雷ぃ!」
「はい!」
指示を受けた、他の戦闘員が答える。
「『雷を、出せ!』」
戦闘員が精霊術を繰り出す。いや、命令する。
また、劈くような悲鳴がイライナの耳の奥で響き渡った。今度は女性のものか。掠れた悲痛な悲鳴だ。
槍から噴き出す雷が、水と混じり合ってアポストロへと襲い掛かる。
だがやはり、アポストロの周囲を取り巻く帯の一つが、前面へと出てきて雷を吸収していく。水の中を渦巻く雷もまた、光る帯に吸収されていき、威力も勢いも急激に削減されていく。
アポストロに届いたのは、静電気にも似た微量の電力のみ。静電気では、通常は人間を殺せない。
「ははは、無駄、無駄ぁ!」
アポストロは上機嫌で嗤う。その声に応えるように、再び刃が伸び上がった。人間たちを串刺しにしようと蠢いた。
「させん!『守れ!』」
サフィールが怒鳴って、手元の剣を上空へと向けた。
風が巻き起こる。
同時に、やはり、姿が見えない誰かの悲鳴が聞こえる。
暴風が巨大な盾となって、向かって来る刃を次々と防ぐ。だが、器用に風の隙間を抜けて襲い掛かって来る刃がある。暴風の盾を発動させているサフィールに向かって刃が奔る。彼女の命を奪おうと。
「ノイシェ中将!」
彼女の傍に控えていた護衛の一人が、サフィールの前に進み出る。巨大な剣を盾に、更に炎の精霊術を発動させ―――、
また、悲鳴。
(まさか、この悲鳴は……)
イライナは脳内に過った推測に、背筋に冷たいものが奔った気がした。
炎と刃がぶつかり合った。炎によって急速に刃は減速する。それでも刃の勢いを完全に殺すことはできなかった。炎を突き抜けて、アポストロの刃が剣へと届いた。その一撃で、護衛が持つ巨大な剣の腹の部分に罅が入る。
「駄目だ、危険だ、壊れるぞ!手放せ!」
サフィールが命じた通り、サフィールの護衛は剣を手放すと同時に、体を捻ってその場から離脱。直後、巨大な剣がアポストロの刃によって貫かれ、粉々に砕け散った。
―――断末魔のような悲鳴が辺りに轟いた。
イライナは思わず耳を塞いだ。
(ああ、やはり)
これは、精霊たちの悲鳴だ。苦痛からくる悲鳴だ。
そして今、剣に宿っていた精霊は、果たして。
砕け散った剣が地面に落ちる。剣の破片の断面から、ゆるりと抜け出る何かが、こちらを睨んだような気がした。
憎しみを向けられたような気がした。
心臓が、凍るような気がした。
精霊が宿った武器が壊れると、同時に人間側は精霊術が使えなくなる。常識だ。その常識の中には、精霊の死が関わっていた。武器の中に宿っていた精霊は、武器が壊れた時点で死ぬのだ。
「―――おい、何をやっている!」
怒鳴り声がイライナの耳に飛び込んでくる。自分が怒鳴られているのかと思って肩を震わせたが、そういうわけではないらしい。改めて気づいた。精霊術士の何名かが、アデルを睨んでいる。
「早く戦え、精霊!」
「……は?」
低い声でアデルが、命令をしてきた精霊術士を睨んだ。その視線だけで精霊術士たちが竦み上がった。が、すぐに自身の優位を示すかのように凄んでみせる。
「おい、聞こえてないのか、精霊!戦えって言ってんだ!」
アデルは心底不機嫌そうに眉根を寄せた。
「ふざけんな。なぜ俺がそんなことをやらなければならん」
「精霊が人間の言葉を拒むというのか!」
「そうだ」
アデルが静かな声で答えれば、非難の声が上がった。
「たかがエネルギーの分際で!」
「ふざけるな!」
「とっとと戦え!」
「力を寄越せ!」
身勝手な言い分だ。
けれど、精霊を“人間の武器”として考え、“心を持たない物”と教えられているのだから、この非難の声は、ある意味正しいものだった。
人間が武器を大切にするのは、あくまで自分たちの役に立つからだ。自分たちの役に立たない武器は、捨てる。大切にしない。
それが人間と武器の基本的な関係だ。
「―――やかましい!!」
アデルが怒鳴り、地面を強く蹴った。一瞬、黄色の光が大気中に現れて弾けたのを、イライナは見た。かと思えば、地面の一部が割れ、巨大な槍となって騒いでいた精霊術士たちを散らす。
「てめぇ勝手に命令してんじゃねえぞ、糞野郎共!俺は今、猛烈に腹が立っているんだ!仲間たちの苦痛を聞き流すしかない現状!仲間をてめえらに食いつぶされて殺されていく状況!見るだけで吐き気がする!力を寄越せだ?思い上がるな!今ここで、てめえらの敵に回ってもいいんだぞ!」
感情をそのまま吐き出すような叫びだった。地面が揺れ続けるのは、アデルの怒りに大地が答えているからか。
精霊術士たちは「何を言っているんだ?」などと、呟いている。「強い力だ」「早く契約を」などと、言っている。
アデルの感情は彼らに届いていない。
当然だ。
精霊は人間のフリをした、ただのエネルギーだと教わっていて、皆が信じ切っているのだから。
イライナだってそうだ。
そうだった。
信じ切っていたかった。
「全員、敵を取り囲め!出た刃を狙って潰せ!」
一方、アポストロの交戦しているサフィールの指示が飛ぶ。辺りから何十人分もの精霊たちの悲鳴が飛び交って、アポストロの周囲を、炎や風、水の塊などが幾重にも重なり合って包み込む。アポストロの刃が、その何重にも重なる元素の壁を突き破った瞬間を狙って、何人もの雑な精霊術が打ち込まれる。
数十人の精霊術士が居るからこその戦法だ。そして、数十人の精霊を犠牲にした戦法でもある。
そうして敵の攻撃を対処している間に、サフィールはアデルを睨み据えた。
「そういう事だ!契約しろ、精霊!」
彼の名前すら呼ばずに。サフィールは新しい鎖をポシェットから取り出して、口早に契約の文句を口にする。
「命じる!我が名はサフィール・ノイシェ!今この時より、汝の父であり母であり、そして主人である。汝は力果てるまで我が命を護り続けよ。大地の精霊―――汝は今よりブレイク―――我が鎧である!」
サフィールが持つ鎖から、淡く輝く鎖が噴き出したのを、イライナは見た。その全ての鎖は蛇のようにくねりながら、アデルへ向かって伸びていく。アデルの首に食らいついて、無理矢理服従を命じるために。
これが、精霊たちに強いてきた、力の正体だ。
けれど、アデルへ向かって伸びた鎖は光る帯によって弾かれた。それは、アポストロの周囲を巡る帯と合致していた。帯はそのまま鎖の蛇に巻き付いて、ぐしゃりと潰すようにして破壊する。
「うっ」
サフィールが唸り声を上げた。彼女が持っていた、契約の鎖が砕け散ったのだ。
それは、イライナが以前、遺跡でアデルに契約を掛けようとして失敗した時と同じ現象だった。
「これは……そうか、雪路か」
アデルも今、光る帯が見えている状態であるらしい。彼はどこか納得した様子で自身の周囲に現れ、自身の周囲を巡っていた光の帯を見つめていた。
「な、なぜ契約術が効かない……?」
「まさか、契約術が使えないほど強力な精霊なのか?」
「あり得るのか、そんなもの」
契約術が失敗した様子を見ていた精霊術士たちが疑問を口にする。が、サフィールが怒鳴る。
「何をしている!誰でもいい!契約術を奴にかけろ!そうでないと、この場の全員が、いや、この居住区が滅びてしまう!とにかく、強力な精霊を……!」
精霊術で作られた元素の壁は、今も刻一刻と破られている。アポストロの人を小馬鹿にしたような笑い声が聞こえてくる。迫って来る。それに重なるようにして、イライナの耳には精霊たちの悲鳴が聞こえていた。
「殺して」「シンデ」「呪われろ」「滅びてしまえ」「苦しいよ」
総じて、それは全て人間への怨嗟だ。
精霊たちの声は、アポストロの声よりも大きい。
「全員、契約の鎖を構えろ!」
誰かの号令で、アデルに向けて手の空いている精霊術士たちが鎖を構えている。
「あいつを手に入れれば、オレも上級の精霊術士だ」
誰かが、言う。
アデルの足に力が籠るのが見える。そこに、光の粒が集まっていくのも見える。攻撃をするつもりだ。誰に?アポストロに?―――いや、人間に。
アデルの眉間に皺が相変わらず寄っている。彼の敵意は人間に向いている。アポストロには向いていない。当然だ。精霊にとって、人間は自分の命を無理矢理削る敵なのだ。
それはある意味、人間にとってのアポストロ。命をせめぎ合い、削り合う敵同士の関係か。
自分を害する敵に、誰も力を貸したいとは思わない。ましてや、人間は精霊よりも弱い。アデルはこの場から逃げることは非常に容易だし、実際この場に留まる理由はあまり無い。人間を蹴散らして、雪路と共にこの場から立ち去ればいいだけ。後は人間だけの問題。
敵が―――人間が死のうが、彼にとって、全く問題ない事だから。寧ろ、嬉しいかもしれない。憎い人間が死んでいくのが、楽しいかもしれない。そういう人物ではないかもしれないけれど。
けれど。
―――“助けて”
幼い子供のような声が、感情に収拾がつかないイライナの耳に入り込む。脳に染み込む。精霊の声である。
泣きそうで、苦しそうで、請うような。
神様に助けを求めるような。
人間が苦しい時に空を仰ぎ祈るような。
小さな願いが詰まった声だった。
「何をしている、エベンスロ!お前も!」
サフィールが急かす声がする。彼女は既に、再び精霊術を用意し始めていて、アポストロとの対決に備えている。
「お前も、その精霊を捕えろ!」
脳にサフィールの言葉が響く。反響して。
頭がすっきりとし始める。自分のやるべき事が突然見えてきた。
そうして、イライナ・エベンスロは、アデルに頭を下げた。
「―――ん?……あ、俺?」
アデルが驚いたように目を瞠った。
「は?」
精霊術士たちも驚いたように口を開いた。
「な、何をやっているんだ、イライナ・エベンスロ二等精霊術士!」
サフィールが声を上げた。少しだけ心臓が収縮する恐怖を感じたが、イライナはぐっと息を呑み込んだ。
「私たち人間だけでは、あのアポストロに勝てない。どうか、力を貸して欲しい」
「……精霊が苦しもうが何をしようが、関係ないんじゃなかったか?」
アデルの問いかけに、イライナは自分自身の心の内を正直に吐露した。
「駄目だ。割り切れなかった。今、私には精霊たちの悲鳴が聞こえるし、精霊の死が見える。……精霊が命あるものだと思えて仕方が無い。……実際貴方がたは、命を持った生き物なのだろう」
イライナは勢いのまま、大声で続ける。
「私が精霊術士になったのは、アポストロによって苦しむ者を守るためだ。だからといって、他の命を犠牲にしていいとは、やはり思えない。以前、貴方から話を聞いた時、それでも精霊を犠牲にしてもいいと思ったが……駄目だ、やはり駄目だった。誰かの苦しみを代償に、誰かが助かるのも、……駄目なんだ」
―――誰かが苦しんで泣いている。そんな泣いている奴を一人でも救ってやりたい。だから、オレは精霊術士になってくるよ。
かつて、友人だった彼は誓いを口にした。
その誓いはそのまま、イライナの信念となった。
もし、その信念を貫くのならば。
自分が泣かせる側になってはいけない筈だ。
「虫のいい話だとは思っている……だが……」
声をなんとか絞り出そうとする。
イライナの言っていることは、非常に人間側に都合のいい話だ。精霊の仲間を苦しめておいて、しかも協力してくれ、というのは。
―――ふう、と。
大きなため息が聞こえた。
「たく……昔を思い出す。……仕方がねぇ、か」
それが、どういう意味か、理解するまでに数秒。
「え、それじゃあ……」
イライナは顔を上げる。そこにはぶすりと不機嫌そうな顔のままのアデルが居る。その表情のまま、アデルは言う。
「助けてやる。俺の出来る範囲でな」
「あ……」
イライナはお礼を言おうと口を開いたが、一体何を言えばいいのか分からなくなり、そのまま硬直した。
ありがとう?すまない?
どの言葉を選べば彼の機嫌を損ねないのか。
それが分からない。
イライナが脳内で自問自答をしている間に、アデルはアポストロを睨み据える。
「だがな、課題がある。あのアポストロにどうやって攻撃を通せばいいのか、てんで分からん」
ん?
イライナは一旦、自問自答を中止して、思ったことをそのまま口にする。
「いや、それはあの光る帯を壊せばいいのだと思うのだが」
「沢山あるじゃねえか。どれを壊せばいいんだ?」
「だから、精霊術が当たる都度に光っている帯があるじゃないか」
「は?」
「ん?」
もしかして、見えていないのか。それとも気づいていなかったのか。
アデルはイライナを見て、イライナはアデルを見て。
二人とも、硬直。
先に動いたのはアデルだった。
「よし。どの光の帯を壊せばいいのか、これで俺に指示を出してくれ」
そう言ってアデルから渡されたのは、小型の見たこともない通信機だ。耳に嵌めれば、アデルの声が聞こえてくる。
「これって……」
「雪路から貰った。あいつ、こうなる事、ある程度見越していたのだろうな。……嫌な奴だ」
舌打ちをしながら、アデルは手にグローブを嵌める。
「これも雪路から伝言だ。―――“こうなったのはお前らの責任だ。せいぜい苦しめ”」
詰まる所は。
雪路は人間が、イライナが、光の帯を破壊してしまうことを予測していたということか。
人死にが出ることも理解しながら、敢えてイライナに曖昧な伝言を与えて。むざむざ人は死んで。
けれど、責めることができないのは、結局、イライナの中に自責の念があるからだろう。
自分がサフィールの言われるがままに動いたからこそ、この惨状。この場の責任は自分にある。
雪路はだから、手助けをしないと言った。
アデルはそれなのに、助けようとしてくれている。
どちらも、親切だろう。
「人間は全員下がらせろ。邪魔だ」
首を鳴らしながら、アデルはその視線をサフィールへと向けた。睨むような、試すような、視線だった。
「巻き込まれて死んでも、文句は言うなよ。俺もしっかりと忠告をしたからな」
「…………くっ……!」
サフィールが唇を噛んだ。実に苦々し気な表情だった。数瞬迷いが見えた。その間に、色んな感情が珍しく、サフィールの顔に浮かび上がる。憎しみ、苦しみ、矜持―――後悔。
「全員、精霊術を解いて下がれ!」
感情全てを吐き出すような、濁った鋭いサフィールの指示が辺りに響き渡った。精霊術士は戸惑う。当然か。実体を保ったままの精霊が、戦うというのだから。なぜ、契約術で縛らないのか、甚だ疑問ではあっただろうが―――不自然な地面の揺れは、彼らの不安を結果として増長させた。
それは、アデルの力なのだろう、とイライナは予測をつけた。彼は大地の力を操る精霊なのだから、地面を揺らすことなどは序の口のはずだから。そうして、人間側に考える余裕を失わせる腹積もりがあったのかまでは分からないが。
アデルの元に、黄色い光の粒が集まっていく。やはりあれは無意識精霊。精霊の力の一部。
「……地盤が緩い。あまり大地を寄せ集めると危険か。……ならば」
アデルが強く息を吐き出した。無意識精霊たちが散る。
アポストロを囲う、元素で彩られた精霊術が解かれていく。その隙間から、口元に笑みを浮かべたアポストロの顔が見え―――
「そら!」
アデルが掌を地面に向かって下げた。
途端、空気の圧が変化するのを、イライナは確かに感じた。上から下へ、負荷を掛けられるような感覚。いや、実際に掛けられている。体が重い。他の人間たちも感じ取っているのだろう。僅かに体を手前へ折って、顔を顰めている。
だが、それ以上に、その圧が掛かっているのは、アポストロだ。彼女は明らかに苦悶の表情を浮かべ、背中についた刃の翼すら、地面に押し付けられている。いや、地面にめり込んでいる。まるで、突然重しが付けられたかのように。
重力だ。
アデルは今、重力を操っている。確かに大地に関する力ではあるが―――精霊とは、ここまで自然の摂理を歪められるものなのか、と人知れずイライナは背筋を凍らせる。
ああ、なんてものを今まで、従わせていたのだろうか、と。
「行くぜ」
自分への掛け声か。アデルは大きな声で怒鳴り、前方、アポストロへ向かって駆け出した。
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