5話 イルス村(2)

 一面、真っ白な花で埋め尽くされた大地が広がっていた。空は快晴。真っ青な色がどこまでも、どこまでも続いて行く。

 それこそ、世界の果てまで続いているかのように。

 明日へと続いているかのように。


 けれど、彼―――死体となった彼は明日が無いことが知っていた。

 約束を違えた。

 必ず守ると誓ったのに。


「ああ……。なんて情けない」


 声が漏れる。掠れた声だ。声と一緒に口から吐き出されたのが血だった。

 白の花が真っ赤に染まってゆく。花びらを染めていく。

風が強く吹いた。白い花びらは青い空へと舞っていくというのに、血に染まった赤い花びらは地面に落ちるばかり。


 進めない。未来へ。未来へと行けない自分が情けない。

 こんなところで殺された自分が情けない。


「おい、何を嘆いているんだ」

 覗き込むようにして、影が死体に落ちた。死体は目を丸くしてそれを見た。人のようでいて、人ではないもの、というのだけは分かった。形は分からない。イメージが確定しない。だが、それはどこかにある口から問うた。


「未練があるから私に縋ったのだろう?」

 未練。

 未練とは。

 確かにあった筈の未練が、何故か思い出せなくて彼は困惑する。


 呆れたように影はため息をついて、ぬらりと体を起こした。

「とっとと思い出せ。私だっていつまでも、お前を留めておけるわけではないのだから」

 誰だ。誰だ、こいつは。

 見たことが、会ったことが、あるような―――。


 ぶつりと夢は、そこで途切れた。

 あとは、優しい暗闇ばかりが続いて行く。


 *


「―――んがっ」


 車中で居眠りをしていた雪路は、自分が出した声に驚いて、目を覚ました。そして、目の前に楽しそうに自身の顔を覗き込んでいる子供―――サリナに驚いて、肩を震わせた。


「ゆきじ、よだれだ。子供みたい」

 サリナが笑う。

「……うるさいなぁ」

 口元から垂れていた涎を乱暴に拭いながら、雪路は外を見た。


 アデルの運転で、雪路たちは森の先にあるという、サリナたちの村―――イルス村に向かっていた。サリナは車に乗るのが初めてであるらしく、ずっとはしゃいで上機嫌。対してサリナの姉であるというビアンカは緊張気味で、ずっと肩に力が入り続けている。

 疲れそうだ。


「ねぇ、村ってまだなの?」

 雪路は大きく欠伸をしながら、運転席のアデルに尋ねる。アデルは相変わらず体を前のめりにしながら運転をしている。

 あれもあれで、疲れそうだ。


「そろそろだ。……いや、もう見えてきた」

「見えてきたって……壁は見えないけど……」

 雪路は視線を前方へと向ける。ただ広がる森の中。そこにある固められた道一本。その先を見るが、白い壁が見当たらない。

 代わりに背の低い柵がぽつり、ぽつりと見えてきた。


(ん?)

明らかに人の手が加えられ、整然と並ぶ木々の間を車が抜けて行く。そうして、広い空間に出る。


 村。

 誰もがそれだと分かるほど、簡素で古風な村だった。

 建築物の高さはせいぜい三階が限度。コンクリートの建物など存在せず、漆喰や木で造られたものばかりだった。道は相変わらず土で固められた簡素なものが村の仲間で続いている。

 まるで機械文明の前―――人間が居ればいずれ通り過ぎる歴史である、産業革命の前の時代であるかのような。


 人の発達が未だ緩やかだった頃に戻ったような錯覚を雪路は覚えた。

 道行く人々は、雪路たちが乗っている車を、目を丸くして眺める。見たことが無い、というレベルではないらしいが、それでも珍しいものであることは明らかだ。


「あ、叔母さんだ。おーい!」

 車窓から楽し気に外の景色を見ていたサリナは、大きく手を振った。その先には畑で呆然と車を見つめる四十代半ばの女性が居た。彼女はサリナの姿を見止めると、血相を変えた。そして、慌てた様子で車へと駆けてくる。


「―――おっと」

 車のすぐ傍まで女性が近寄って来た。やや危険なので、アデルはブレーキを踏んで車を停止させた。

「たく、急に危ねぇな」

 ぼやくアデルをよそに、サリナは楽しそうに車から降りた。


「叔母さん!車ってすごいね!びゅって動くんだよ、びゅって!馬より早い!」

「ちょっと、何がどうしてこうなったの?車だなんて……居住区の御方々でしょう?」


 叔母だという女性の震える声に含まれているのは、混乱と恐怖の感情だ。この反応だけでも、居住区の中に住む人間が、どのように認識されているのかがよく分かる。分かり易すぎて泣けてくる。

「別に気にしなくていいよ、ついでだから」

 窓を開いて雪路が女性に告げる。


 そして、

「そんなことより、叔母さん。この村に宿ってある?今日泊まりたいんだけれど」

「何を言っている。さっさと先に進むぞ」

 雪路の言葉にすぐさまアデルが反論した。

「そっちこそ何を言ってんの。常に万全の体調を保つには、しっかりとした布団で寝なきゃダメなんだよ。特に僕みたいなデリケートな体の持ち主にはね」

「殺しても死なない奴が何を言っているんだ」

 他の人間たちには一種の冗談と受け取られているのだろう事実を、アデルはひょいと口にした。やや焦った口調で。


「俺は少しでも先に進みたい」

 その言葉を聞いたサリナが、首を傾げた。

「え?ゆきじたち、もう行っちゃうの?つまんない!」

「こら、サリナ。雪路さんたちにも用事というものがあるのだから……」


 頬を膨らませて抗議するサリナを、ビアンカが宥める。対し、

「いやいや、急ぎの用事じゃないから」

「急ぎなんだよ!てめえホントに協力する気があるのか!」

雪路の適当な言葉に、本気で怒鳴るアデル。


「やだ!ゆきじたちに泊って行ってもらいたい!」

「ダメって言っているでしょう!本当に聞き分けの悪い子なのだから、もう!」

 ビアンカがサリナを叱る一方。

「絶対今日は布団で寝る!僕はもう決めたんだから!」

「駄目だって言ってんだろうが、この糞ガキ!」

 アデルが雪路を怒鳴りつける。


 二組の言い合いがぎゃんぎゃんとその場で繰り広げられつつあったのだが、その声は辺りに鳴り響いた鐘の音によってぴたりと止まった。


「―――何、この鐘の音?」

「いけない!サリナ、種はちゃんと持っている?」

 鐘の音を聞いたビアンカは焦った声を上げて、サリナに確認する。サリナは頷いて、腰の布袋から茶色い小さな種を取り出した。

「ちゃんとあるよ!」

「よし、行くわよ!……すみません、私たちはこれで失礼します!」


 ビアンカは雪路たちに頭を下げると、サリナを抱えて慌てて道を走っていく。

「……なんだぁ?一体」

「今日は葬儀なのですよ」

 雪路のぼやきに、物哀しそうに中年の女性が答えた。

「あの姉妹の、両親の」



 粗野な造りの鐘が、罅割れたような音を響かせる。小さなチャペルの中から現れた、黒服の人間たちは一様に俯いて。その中にはビアンカとサリナの姿もあった。ビアンカはきゅっと唇を引き結び、サリナはきょとんと周囲の大人たちの物憂げな表情を見つめている。

 体格がやや大きな男たちによって担ぎ上げられているのは、二つの棺だった。どちらも大人がすっぽりと入る程度の大きさで、中に何が入っているのか想像することは容易だ。


「流行り病だったのさ」

 遠くで葬儀の列を見つめながら、中年の女性が手を合わせる。

「へぇ、流行り病」

 雪路は車の上で胡坐を掻いて、頬杖をつきながら、もそもそとグミを食べる。

「可哀想に。サリナはまだ七歳。両親の死について、理解もできない年齢だというのに」

 ぐすっと鼻を啜る音が聞こえて、雪路は眉根を寄せて車の下を見た。車に寄りかかるようにして葬儀の列を眺めていたアデルが目に涙をためている。

 嘘だろ。涙もろいのか、コイツ。意外すぎる。


「けど、とても良いご両親だったからねぇ。きっと魂は天国に昇って、神様に転生させていただけるさ」

「……へっ。神様、ねぇ」

 雪路は鼻で笑った。


 雪路自身が今まで出逢ってきた、“神”を名乗るモノたちは。死者を優しく包み込むような慈愛を持ち合わせていなかった。

 死者は死者。魂の回収はノルマなので、そこら辺の人間を殺してノルマを完遂するために奔走する死神がいたり。

 世界を管理することが義務だからと、世界で最も要らない生命である人間を排除し続ける神がいたり。

 おおよそ人間は、神から嫌われている種族だ。


「叔母さん。もしかして幽霊とか信じるタイプ?」

「何を言っているんですか。幽霊なんていないに決まっているじゃない。魂は死んだその時に神様によって拾われ、すぐに天国か地獄へ向かうのだから」

 当然のように女性が答えた。冗談や妄想だけではなく、一種の信仰心が言葉に含まれているのを、雪路は感じ取った。


(成程。お嬢さん……ビアンカが焦ったのは、こういう理由か)

 魂が神様によってすぐに何処かへと連れ去られる。それはつまり、地上には幽霊などは存在しないということ。しかしサリナは霊魂が視えるという。それ自体がこの世界の人間たちの大半にとっては問題となる。

 霊魂は速やかに消え去るのだから、視ようがないものが視えるのだ。

 それは信仰への裏切りに直結する。

 信仰の裏切りは、差別や迫害へ直結する。


(お嬢さんは割と情が深く、頭の良い人だ)

 いい判断だ、と雪路は静かに笑った。


「ああ。そういえば、森の中で熊に遭ったんだけれどさ」

「は?」

 突然話題を変える雪路に、中年の女性は不思議そうに首を傾げた。

「その熊の腹から、人間の骨が出てきたんだ」

「……は?」

 雪路は車の上から降りて、車の荷台の扉を開いた。そこには、黒い布が置いてある。


「この村の人のものじゃないかなって思うんだけれど。心当たり、あるかな?」

 雪路は黒い布の結びを解いて開いた。そこに居るのは、まだ新しい成人の骨だった。取り出せるだけ取り出したので、骨はおおよそ人間一人分の量だ。

「……なんという……」

 中年の女性は絶句して、震える手をなんとか合わせて、まずは黙とうを骨へと捧げた。

 それから顔を上げて、真っすぐに雪路とアデルを見つめた。


「心当たりがあります。つい最近、墓地で一つ墓が荒らされて。一人分の遺体が無くなっていたのです。……本当に感謝申し上げます。これであの人を静かに眠らせてあげられる」

恭しく中年の女性は二人に向けて頭を下げた。

 その頬から涙が一筋零れ落ちたことを、二人は見逃さない。


「……因みに、なんだが」

 今度はアデルが口を開いた。

「この辺の熊は、五メートル近いものが多いのか?」

「え?いいえ。そんなもの、聞いたことがありませんけれども……」

 戸惑った様子で中年の女性が答える。アデルはすっと目を細めて、森の方へと視線を向けた。何かを睨んでいる。けれど、雪路にはそれがただの森にしか見えない。


(まあ、自然は僕の苦手分野の一つだしなぁ……)

 元々、そこまで感覚が鋭くない雪路は、アデルが何を見ているのかは分からない。ただ、精霊らしい何かを感じているのだろう、と適当な推測を立てる。


「今日は泊まる」

「ん?なんて?」

 突然アデルの口から飛び出した言葉に、雪路は思わず聞き返す。

「今日は泊まる。良かったな、ベッドで寝られるぞ」

 アデルの突然の心変わりに、一体何があったのか、と雪路は聞きたいところだった。しかしながら、何よりも布団で寝られることが嬉しかったので、

「やった!今日は布団だ!」

「ちっ!」

喜んでみせたら露骨に大きな舌打ちをされた。


 顔に、「本当は泊まりたくないし早くコハクを助けに行きたいのだが」と書いてある。なんと分かり易い。


「それなら我が家の部屋が一つ、空いていますから。是非ともどうぞ」

「あ、どうも」

 素直に中年の女性の好意に甘えて、雪路は軽い口調で礼を言う。すると、

「お前、もう少し丁寧に礼を述べるべきだぞ」

アデルが指摘してきた。


 崩れた口調は雪路の常であり、まあ、少し失礼かな程度は考えることもあるのだが、他人にそれを指摘されると、やや不快だ。僅かに眉根を寄せて、雪路はアデルに言い返す。

「じゃあ、お前はなんて言うんだよ?」

「感謝する」

「なんと偉そうな。お前は王様か何か?」

「……さあ。どうだったのだろうな。分からん」

 どこか、遠い目をして。

 アデルが答えるものだから、雪路は追及はしなかった。

 したところで、無駄だと雪路の直感が告げていた。



「それで。結局のところ、なんで泊まろうと思ったの?」

 中年の女性の家の一室にて、雪路はアデルに尋ねた。


 室内は簡素な客室で、ベッドが一つに布団が一枚。調度品は必要最低限、二人が寝るには十分であるが、生活するにはやや狭い場所だった。雪路としてはベッドで寝れるのならば恩の字であるので、特に気にしない広さだが、アデルの体は大きいので、やや部屋が狭く見えるのはデメリットだ。


「森の中から、奇妙な気配がした」

「へえ?気配って、どんな?」

「……限定的なものだ。本来この地域にいるべきでない動植物の気配を辿れる程度だ。俺としてはコハクの気配を追える能力が欲しかった」

「……」

 後半のアデルの言葉を雪路は無視して、気になる部分の話を深堀していく。


「そんじゃあ、森の中に本来居てはいけないものがいるのが気になって、村に泊ろうと言ったの?」

「そんなところだ。人間は基本的にどうなってもいいが、自分が通った場所の自然の調和が崩れるのはあまり良い気分じゃないからな」

「ふぅん。調和が崩れる、ね。つまり、お前ら精霊は、異物を探知する能力が元来備わっていると?」

「まあ、属性によって探知できる異物は異なるがな。俺は大地の属性だから、大地にまつわるもののみを探知できる。水属性ならば……そうだな、水に毒性があることを探知できたり、とか」

「なんだか中途半端に不便な探知能力だなぁ……」

 雪路は率直な感想を口にした。


 精霊、という種族について理解はまだ少ない。だがまさか、属性によって探知できる気配に違いがあるとは思いもよらなかった。しかも自然限定。異物限定。人間は自然の一種であるため、人間の気配は追えないということか。


「……待て。そうなると異界の存在であるアポストロの気配は追えないの?この世界にとっての異物でしょ、あれは」

「それが不思議と追えないんだ。あの黒い靄みたいな力……魔力っていうのか?それを一定量以上放出しない限りは……なんというか、気配が他の気配と溶け込んでいるような……」

「……そんなことができる奴、アポストロの中にもそうそう居なかったと思うけど……」


 雪路は顎を撫でて考える。

 アポストロの種としての特徴は、人間よりも遥かに強い力を持つために過信しがちな性格にある。自らの力を誇示し、強い者に従い弱い者を殺す。それ故に、今まで見てきた中でも弱い部類に属するこの世界の人間を、見下し油断するアポストロは多い筈。自らの強力な力を人間に隠そうなど、全うなアポストロならばまず考えまい。

(次元神のコントロールから外れた、僕と同じ例外個体が指示を出しているのか……?)


 だとすれば。なんと面倒な。

 しかし。

 なんとも危険な話になってくる。


「雪路?」

 アデルに声を掛けられて、雪路は作ってしまった難しい顔を努めて緩ませた。

 考え込むなんて、なんとも自分らしくない。

「とにかく、僕は異物とかそういう気配に関しては完全に専門外」

 雪路は大きく欠伸をして、ベッドの上に倒れ込んだ。車移動で疲労はかなり蓄積しており、先ほどから眠気が強く雪路の脳に襲い掛かって来ていた。


(ああ、畜生。マナが使えない影響がこんな形で出るとは……)


 生来より十分なマナを常に体に満たしてきた雪路にとって、マナを封印するという異常事態は体に負担が少なからずかかっている。眠気を堪えながら、雪路はアデルに言う。


「ま、今日明日中に要件を済ませてよ。僕はもう寝るから」

「言われなくとも。少しでも早く、コハクを助けに行きたいからな」

 アデルのぶれないシスコンぶりに、雪路は呆れ果ててため息を吐き、少し埃臭い布団の中に潜り込んだ。布団はやはり質が悪く、マットレスがやや硬い。それでも体を休めるには十分な柔らかさだったので、雪路はすぐに眠りへと落ちていった。


―――僅か数時間。雪路にサリナがダイブをするまでの短い眠りだったのだが。


「ゆきじ、ゆきじ!かべの中のお話、聞かせてよ!」

「……人が寝ているというのに遠慮がないガキだな……」


 雪路は、不機嫌を声に込めて呻いた。

 葬式が終わったらしいサリナはやたら元気で、雪路の泊まっている部屋に入り込んだかと思えば、すやすや眠る雪路の腹の上に、重量およそニ十キロの体の全てを駆使してジャンプしてダイブ。見事に雪路の呼吸を一時的に止めることに成功した。

 呼吸の止まった雪路は眠りから強制的に目覚め、驚きに踊る心臓を必死に抑えた。その上、サリナは雪路の上に乗っかったまま、「お話を聞きたい」と図々しく願って来るので、雪路の不機嫌のメーターは今にも振り切れそうだ。


「ていうか、葬式はもう終わったのか?」

「おわったよー!だからお話をしてー!」

 両親が死んだというのにこの軽さ。いや、子供というのは、死というものを理解できない。二度と逢えないというのがどのような意味なのか、分からないから。

「そう言われてもなぁ……」


 壁の中。つまり居住区の中の話ということだろうが、雪路は異世界の人間であり、この世界の文化の知識もまだ殆どない。出鱈目を子供に教えておいて、後から面倒ごとになっても困る。


「実は僕、昔の記憶が無くなっていてね。壁の中の事は殆ど覚えていないんだよ」

「え!」

「だから、壁の中のお話はできないんだ」

「ええええ?そんなぁ……」

 サリナは声を上げて、落ち込んだ。

 そんな彼女を床の上に降ろし、雪路は告げる。

「そういう事だから。僕は眠いんだ。寝かせてくれないかな」

「う~」

 唇を尖らせるサリナを無視して、雪路は布団の中に潜り込もうとしたのだが、


「あ、あの……ちょっといいかしら……」


扉の向こうから、遠慮気味に部屋を覗き込んでくるビアンカの気配に、思わず舌打ちを漏らす。

「お前ら姉妹は、僕の眠りを妨げたいのか」

 体を起こして不機嫌な声色で問いかければ、ビアンカは申し訳なさそうに答える。


「すぐに終わりますから……」

「……要件は?」

「その、妹が……幽霊を“視える”と言っていることについて……」

 雪路は確信した。


 絶対にすぐに終わらない。

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