第81話
リナは千帆のアドレスに返信してみた。人違いならごめんなさい、と。 やはり着かなかった。メルアド自体が何か馬鹿にした風だったので、そんな事だろうとは思ったが。 何かを返信されなくないから、自分も臨時の物を作り、二度のメールを送った後にその メルアドを消した。でももう全てが、自分だと言っているじゃないか。 恐らく吉永は退院して、又子供を作ったのだ。今度は流産せず、ついに成功した。そして、良く似た娘が産まれた。そして、どれ位かは分からないが、しばらくは生きていた。何ヶ月とか何年とか、どれ位かは分からないが。 そしてその子は今、母親の店で一緒に働いている。そして大沼や雲母のママもたまには 出入りしているのだろう。そして吉永は、今は天の上の人なのだ。 だが、もしくは以外と今も生きているのかもしれない!?…奇跡的に助かって。 大沼はもう手遅れで、直ぐ死ぬみたいな事を言っていたが、抗癌剤や放射線治療で一命を取り留めたのかもしれない? 只、生きていたら何故あの娘が夜働いているのか分からない。 そして、あの似た横顔の写真は何だろう。それ位なら似た人間もいるかもだが…。分からない。 でも…いずれにしても、今の自分の人生にはもう関係の無い人。なら、どちらでも良いのではないか?生きているか死んでいるのか。 確かに、彼を思い出した今としては知りたいし、生きていれば今はどんな風だろうと 思う。彼は自分にはとてもインパクトの強い人間だったから。そして当時は好きだったし、相手もそうだった。子供を産んで欲しい為の、只の道具ではなく。 もしあの時に又撚りを戻していたら、どうなっていただろう?自分には吉永の子供がいただろう。そして、吉永は今も生きていて、一緒にいただろうか?それとも自分とその子供だけで、やはり彼はあちらの世界へ行ってしまっていただろうか? 分かっているのは、マイキーズ ダイナーは恐らく無いと言う事。だから千帆はママと してそこにいないし、当然あの娘も存在していない。(吉永の娘ならば。) 自分の下した決論から、今それらは存在する。そして不思議にも、その店の名前は自分の父親の名前の愛称だ。 やはり何かの縁か?世の中って皮肉な、面白い所だから。 リナは吉永と過ごした楽しかった時間を思い出した。笑いながら話したり、一緒に食事したり、踊ったり。…吉永の笑顔を。 そして、最後に会ったあの日の事を。 あぁ切ないな、吉永さん…。あの時の寂しそうな顔と、駅へと歩いていく悲しそうな後ろ姿を思い出すと、切なくなった。 …さあ、私も家に帰ろう。そして、一寸歩いて行こうっと。 (完)
吉永さん、切ない思い出 Cecile @3691007
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