第68話

そしてその次の週になった。待機の席で萌が明美に話す。              「千帆ちゃん、マンションを出ないんだって。」                 「どうして?」             「うん、なんか最後の日に、出て行くって 決めていた日なんだけどね。吉永さんが  来て…」                なんだ、よく聞こえない。リナは会話に集中した。                 「じゃあ吉永さんが頼んだ訳?」    「そう。出て行かないでそのままいてくれって。いてくれて構わないって。」     「それでいる事にしたの?」       「そうなの。子供の事は仕方が無いから  気にしないでくれって何度も言ったんだって。千帆ちゃんがいなくなれば寂しいからって。なんか、優しいよね?」       「そうだね!子供なんて又できるよ。」  「私もそう言ったら、千帆ちゃんも凄く喜んでた!」                ふーん、そうなんだ。じゃあ又落ち着いたら、子供作りに励むんだろうな。     だがそれから又直に、千帆が妊娠したと二人で話すのが聞こえた。          そしてその次には、今度は男の子だと二人でコソコソと話す。そして吉永が物凄く喜んでいると。                リナは思った。この間流産したのに、もう又妊娠?!出来るの?しかも今度は男の子だなんて、吉永の思い通りだな。       だが、今度もアッと言う間に吉永の思いは無に終わる。嘘みたいな話だ。       でも、流産って一度すると癖になるとか聞いた事あるけど…。間を開けないから?それとも只の不注意かな。でも、吉永も焦って早く作ろうとしたから、そんな事になったのかな?                 「又流産しちゃって、本当に可哀想…。」 「まさか、二回目もだなんてね!」    「千帆ちゃんも本当に悲しんでたよ。吉永さんにももう悪くて仕方ないって言ってさ。もう今度こそいられないって!」      「じゃ、出ちゃうの?」         「うん。そう言ったら、吉永さんも分かったって言って、納得したんだってさ。」   「やっぱり、本当にマリンちゃんの祟りかも。」                 「マリンちゃんの怨念じゃないの?怖ーい!」                 リナをチラチラと見ながら小声で話す。  

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