第34話
二日後、互いの店に出勤する前に、リナは 富貴恵と会って食事をしていた。 「ふ~ん。やっぱりねー。リナちゃんの お母さんならそう言うだろうねー。」 富貴恵は馬鹿にした様に言った。 「だから本当、困ってるんだよ。富貴恵ちゃん、どうしよう?」 「あのお母さんじゃあ、幾ら言ったところで分かってはくれないだろうね。何しろ凄く 頑固だし、馬鹿なんだから!」 「富貴恵ちゃん、あのさ。幾らそうでもあんまりハッキリそんな事言わないでよ。一応 私の親なんだからさ。」 「だけどそうなんだから性がないよ。大体私、あのお母さん、大っ嫌いだからね!」 「富貴恵ちゃん!」 「だって、私本当に大っ嫌いなのよ、リナちゃんのお母さん。」 「もう、それは分かったよ。ママも富貴恵ちゃんの事、嫌だって言ってたから。」 リナは少し頭にきたので、母が富貴恵を嫌っている事を言った。 「ハハハハハ!」 「何が可笑しいの?!」 「あんなお母さんに嫌われたって痛くも痒くもないよ!私も大っ嫌いだしね、あんな馬鹿な人。何か、余程自分が偉いみたいな、何様みたいな感じでさ。何がそんなに凄いのか、ちゃんちゃら可笑しいよ!!」 「富貴恵ちゃん、いい加減にしてよ!!それだって一応私の親なんだからさ。」 「アハハハ、ごめんね、リナちゃん。だけどリナちゃんは好きだよ。リナちゃんは、あのお母さんなんかと全然違うからさ。リナちゃんは、好きだから。」 「うん…。私も富貴恵ちゃん、好きだけど。でも、だから本当、どうしたら良いんだろう。真実、アッ、吉永さんは早く会いたがってるし。それに前にも言われたけど、親が 納得しなきゃマンションは借りないって言ってたからね。」 リナはわざと吉永を苗字で呼んだ。その方が良いと思った。富貴恵の前で、余り親しそうに吉永の事を呼んだりしたくなかった。 内心、ヤキモチを焼かれるんでは、と思ったからだ。 富貴恵が吉永を気に入っているのを知っていたから。本当なら、自分がこの話をされたら嬉しかっただろうから。だが、その相手に相談している。こんな話、幾ら良い話だとしても、誰にでも簡単に相談なんてできない内容だから。 「良いよ、リナちゃん。私がアパートを借りるよ。私が借りて、リナちゃんが住めば 良い。」 「エーッ?」 「だから、私の名義でアパートを借りるの。で、リナちゃんがそこに住むの。リナちゃんだって貯金があるんだから、家賃位払えるでしょ。」 「でも…。」 「そうすればそこに吉永さんが来られるじゃない?そしたら幾らだって会えるよ。それに大丈夫。吉永さんだって、そうしたらそんな家賃払ってくれるよ。まさかリナちゃんに払わせやしないから!」 リナは黙って聞いていた。 「そして、その内に直ぐ、自分でマンションを借りてくれるよ。だってリナちゃんをそんな所に置いておきたくないから。自分だってそんな普通の、小さなアパートなんかには 来たくないでしょ。もっと素敵な所に来たいに決まっているもの。」 「だけどさ…。」 「だけど何?」 「そこまでするの?」 「そこまでしなかったら、リナちゃんはあのお母さんがいる限り、吉永さんとは一緒になれないよ。」
リナが困った顔をした。 「良い、リナちゃん?考えてみて。それで 良ければ、私、直ぐにどっか適当な所を探すから。」 「うん。少し考えさせて。」 「余り時間、無いよ!早くしないと。」 富貴恵が意味深な顔をしてリナを 見た。
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