第35話

富貴恵の言った事をその夜、寝ながら考えてみた。やはりそうするしかないかな。   だけど、本当はそんなアパートになんて住みたくない。一人でそんな所に住むのは不安だ。一人で住むなら、吉永が借りてくれた マンションに住むのなら安心して住めるとは思うが。                そこに、ペットの小型犬を連れて住み、週に何度か、又は週末に吉永が泊まりに来る…。そうした生活なら良いが、吉永に黙ってアパートヘ引っ越す。そんな事をしたら、吉永は喜ぶだろうか。富貴恵が借りた所で。吉永は富貴恵を良く思ってはいない。どうしよう。リナは叔母に相談しようかな、と少し思った。何故なら彼女の娘が、警察にいるからだ。               

自分より一つ年下の従兄妹が、高校を出てから警察に働いている。勿論、吉永よりもうんと位は下だし、吉永を相手に口がきける様な立場などではない。           だが叔母はそれでもこの話に興味をもつだろう。何故なら、何か自分の娘に得があるかもしれないと思うからだ。叔母はそうした人間だ。だから話を聞けば、母を説得してくれるのではないか。おそらくは必ず首を突っ込みたがるだろう。そうすれば、何も富貴恵がアパートを借りてそこに住まなければいけなくなどない。もっとすんなりと話が上手くいくのではないか?             リナは、この事を真剣に考えてみた。   どうせまだ吉永とは会えない。来週は確か、親戚の法事だとか言っていたから。    確か癌で亡くなったとか言う伯父さんの。 だから、来た時に叔母の事を言ってみようかな。確か最初に会った日に、従兄妹が警察にいるというのは話したから。だから、その母親に会ってくれる様に頼む…。      だから、叔母が先に吉永と会って、母へ上手く話をつけると言ってくれたら吉永も安心するんではないだろうか?         とにかく、もう少し考えてみよう。    最初は只良い人だと思っただけだが、何度も吉永と会っていて、今では本当に好きになっていた。だから、あのホテルで関係を結んたのだから。

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