第11話
手に握らされた一万円札をジッと見つめながら、リナは聞いた。 「じゃあ、良い?私、貰うよ。」 「良いよ。」 吉永はリナの顔を見ながら、目が笑っている。 「吉永さん、ありがとう!!」 リナは嬉しさと感謝の気持とで、吉永を見つめた。吉永も嬉しそうだ。 「本当に、凄く嬉しい!!」 そう言いながら、リナは何度もその一万円札を嬉しそうに両手で持ち、唇を数回当てた。そんな事を紙幣にした事はないが、とにかくこの吉永に貰った一万円札がとても貴重で、又愛おしく思えた。おそらく吉永から貰ったからであろう。吉永はリナがその紙幣に繰り返しキスしながら喜んでいる様子に少し驚き、しばらくはいぶかしげに見ていた。何故ここまで喜ぶのか?これは本当に喜んでいるのか?だが直ぐに、これは演技ではなく、純粋に喜んでいるのだと分かった。すると、なんだか自分もとても嬉しくなった。こんなに喜ぶなんて! リナが財布を出し、大事そうに一万円札を中に入れた。 「私、これうんと大事に使うからね!」 そう何度も繰り返し言った。 「うん。」 吉永はリナのこうした態度をとても愛おしく思った。そして側に近寄ると、抱きしめた。そして、いきなりの事に驚いているリナの唇ヘキスした。しばらくは離さなかった。長いキスだった。リナは最初は只驚き、なされるがままだった。だがしばらくすると、自分もそれに恐る恐る応えた。そしてやっと終わった長いキス…。終わってからリナを離すと、彼女はしばらく無言で吉永を見た。吉永も見つめる。 「吉永さん、私…。吉永さんって凄く、何か雲の上の人みたいだから。」 吉永が黙って聞く。 「だから、あんまり早いと、もっとゆっくりでないと、圧倒されちゃう。ついていくのが凄く大変。とにかく、吉永さんって本当に凄く雲の上の人みたいだから!それに…昔、子供の時によくテレビで見ていた、凄く好きな漫画があって。レオなんだけど。あの、ジャングル大帝レオの、レオのお父さん。」 吉永は自分が雲の上の人だなんて言われて驚き、顔が赤くなった。だがとても嬉しくなった。そして黙って聞いている。 「だから、レオのお父さんのパンジャ。ジャングルの王で、レオが生まれる前に死んじゃったんだけど、でもそのパンジャ様が、凄く吉永さんみたいなの。吉永さんって丸でパンジャ様みたい!!」 何を自分は言っているんだろう!?だけど本当の気持だ。吉永が凄く雲の上の人間の様に思えたし、いっもずっとそんな風に無意識なうちにも思っていた筈だ。そして、大好きなレオのお父さんで、偉大なパンジャ様にも、吉永はイメージが被った。とにかく自分なんかよりも遥かに上をいく人、丸で宙の上の存在、雲の上の人…。リナは本心、そう思った。 そこまで自分をそんな風に思う娘がいるのか?!顔が赤くなった吉永の顔がにやけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます