第7話

丸で豚だな、吉永は軽蔑しながら冨貴恵を見た。最初に見た時も驚いたが、何故こんな太ったみっともない女がホステスとして雇われているのかと。そして、リナの友達なのかと。                  クレープが食べたいとせがむ冨貴恵に、これ以上食べたら自分まで具合が悪くなると吉永は言い、もう帰る様に促した。そして自分はリナを看病する。救急車を呼んだ方が良いかもしれない…。リナが言った。      「あの、ウーロン茶…」        「なに?」               「ウーロン茶、欲しい。」        「ウーロン茶だね、分かった!」     吉永は直ぐに通行人に、自動販売機が近くにないか聞いてみた。老人に「すぐそこのビルの中にあった気がしたよ。」、と言われて急いでそこへ行き、買って戻った。急いで与える。                  「ありがと、…これで大丈夫。段々治る…。」                冨貴恵がまだいた。           「良かった、リナちゃん。ウーロン茶が食べた分の脂肪を溶かすから。」        そして、「吉永さん、クレープ駄目ですか?私、まだ食べられますから。まだ入りますから。」とせがんだ。            吉永は「どれが良いの?」、と冷たく聞いた。                  冨貴恵は目を輝かして数歩先にある出店のクレープ屋へと走り寄り、直ぐに戻り、どれが欲しいかと報告した。リナはウーロン茶で段々と回復してきた。横に座り、顔を覗き込む吉永。                「大丈夫?」             「うん、段々良くなってきた…。」    「良かった。」             冨貴恵がまだそこにいる。        「良かった、リナちゃん。ウーロン茶が効いてきたんだね。」             そしてクレープを食べる為に待っている。吉永が、立った。直ぐ側のクレープ屋へと歩み寄り、冨貴恵が付いて行く。戻ってきた。冨貴恵はクレープを愛おしそうに頬張り、喜んでいる。                「美味しいなぁ、これ。やっぱりクレープって良いですよね~。」           そしてアッという間に食べ終えると、少しモジモジしながら言った。         「あの〜、吉永さん。もう一つ食べても良いですかー?」              吉永が顔を睨みつけた。         「もう、一つ食べたでしょう。」     「だって、私まだ入るんですよ。まだ食べられるんです!」             「良い加減にしなさい!」        大きな声で言うと、冨貴恵が驚きの顔で見つめ返した。               「冨貴恵ちゃん、もう止めなさい。クレープなんて何個も食べる物じゃない。リナちゃんみたいになったらどうするんだ?!」   「大丈夫です。私、リナちゃんよりも体格良いですから!絶対に平気ですから!」   「何故そんな事が分かる?もし具合が悪くなっても私は責任取れないぞ。リナちゃんだってまだ完全に治ってないのに。ましてや冨貴恵ちゃんはもっと家が遠いんだろう。これから電車に長く乗るのに、何かあったらどうするんだ。もう帰りなさい。」       「でも…」               「良いからもう帰りなさい!リナちゃんもこれからタクシーで送って行くから。良いね?」                「…。では、失礼します。リナちゃんをよろしく。リナちゃん、又ね。」        冨貴恵は渋々帰って行った。   

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