第26話
「どうだ。あれがお前らが普段、見下してる……奴らの生活ってやつだ。ああやって仲間とつるむってのはある意味じゃ、将来を懐かしむのに心が癒されるっちゅうかな」
横目で見れば警官は大通りなど見てはおらず、ただ二、三メートル先の地面を見つめていた。どうやら自分で言っておいて、自身もまた昔を懐かしんでいるらしい。
「あほくさ。どうして俺があんな奴らとつるまなきゃいけねえんだよ。毎日ただ、だべってハンバーガー食って、塾行ってよ。あんなことしないと周りからの体裁守れねえつうのは……だせえだろ」
「まあな」
即座にそんなことを言われ、眉をひそめるとしたり顔の警官の表情が見えた。
「ただ、やっぱし仲間がいねえと寂しいだろ。毎日がそんな退屈な日常でも悪くはねえぞ。案外な」
警察官はそう言い切ると、立ち上がってズボンについたホコリや砂を払った。俺を連行しないのか。こいつは一体何なんだ。という疑問が俺の中に渦巻き、ただ彼を見上げることしかできない。
「とりあえず、もう行くわ。おめえもきちんとその怪我は治しておけよ。病院でもどこからでもいいからよ」
そんなこと言われなくても、と言おうとしたがどうしてこうやって口答えをしようとしているのだろと思ってしまった。
俺は寂しいのか? そんな訳じゃない。こいつが……ただむかつくだけである。
「女を寝取ってボコられた。保護すんならさっさとしろよ」
「しねえ。大方そんなもんだと思ってたしな。ちょっとした喧嘩で警官は動かねえんだよ。俺はパトロールに戻るからな。いいか、暗くなる前に帰れよ? 夜遅くまで街にいたら次こそは仕事しなくちゃならねえ」
人差し指でびしっと俺を指しながら警官はそう口にした。
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