第22話

机の角であったりとか、危ないものが床に転がっていないかをいちいち確認しなければならない。面倒くさい……しかし、そうしないと怪我をしてしまう。とはいっても朔を引き取ったのも最近の事ではあるので、正直あまり自信はないが全国のお母さん方も俺と同じような心境を持っていることだろう。

 「あのー神澤さん?」

 「は、はい!?」

 慌てて振り向けば、しおりが扉の隙間から俺の事を覗いていた。俺の持っていた下着から恥ずかしそうに顔を背けつつ、言葉を口にした。

「今日はもう帰ります。朔君も眠たそうなので」

 「あ、ああそうなんですか。わかりました。すみませんわざわざ来ていただいたのに、ロクな――かまい方もできずに」

カマイカタ……? なんか上目線な言葉が出てきてしまったな。もしよろしければ泊まっていってもいいんですよ! と言おうとしたが、それに被さるように邪魔くさい声が聞こえてきた。

「しおりちゃん駅前だよな? 俺も駅まではいくから送っていくよ」

 「あ、すみませんわざわざ」

 うおおい! 近江先輩! それは生殺しというか、なんというか! 朔も寝て丁度いい頃合いだというのに!

「朔の事はお前の布団に寝かせておいたからな……ちゃんと布団も定期的に干しておけよ」

「――はい」

「あ? なんだ。お前なんかあったか?」

それは間違いなく先輩のせいです。さすが堅物。そして女性からの人気! ありえないとは思いたいが、いや、間違いだとは思うが、ふと扉の外からは主将とマネージャー。そして野球部の主将とマネージャーと言えば恋人同士、という図式が成り立っている。雰囲気がプンプンと匂ってくる。しかし、郷田さんという恋人が近江先輩にはいるのだから、しおりさんとそんな雰囲気にはならないはずだ。

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