第21話
「仲の良い兄弟みたいですよね」
「それ俺にも言ってなかったっけ」
俺が思わずそう突っ込むと、しおりちゃんは頬を少し赤くして、そうでしたっけとつぶやいた。
「まあいいけど。それよりも店の手伝いとか大丈夫なの?」
「ええ、それはまあ。けど親としては女の子がそうやって、男の家に行くのってどうなんだって言っていましたけど」
西部風のあの恰好の親父さんを思い出す。彼の渋い声で娘を心配する声というのもなかなかに想像しずらいものがある。喫茶店と自宅が一緒というのもなかなかに池袋でするというのは珍しいがそれを感じさせないあの店はなかなかに堂に入っている。
「別にいいとおもうけどな。変なことも恋人でもないわけだし」
「親としたらきっと複雑なんでしょう」
「へえ、そういうものなのか」
ん? という表情を俺がしていたためだろうか。しおりさんは俺の顔を思わずといったように顔を上げたが、恥ずかしそうに顔をそらし、何事もなかったかのようにそのまま黙ってリヴィングの椅子に座った。今日の朝、俺の座った席だ。少しあからさま感が出てしまったかもしれないが、いつかは知られることなので今のうちにその伏線を張っておいてもいいかもしれない。
にしても、なんだか羨ましくなってきたぞ。朔のぷにぷには俺だけのものだと思っておいたのに! と思いつつも洗濯機の中にタオルを入れにいく。
男所帯なので多少汚い部分はあるがそこには目をつぶるしかないだろう。世の中には潔癖症の人間がいるらしいのだが自分はその人間とは程遠い。
「明日洗濯機を回すかあ」
独り言をつぶやきつつも、簡単に洗濯機の回りを整理する。シェービングだったり、髭剃りだったり自分の使うものばかりだが刃物をポンと置いてあるのはなかなかに危ないような気がする。
髭剃りを電動にしておこう。朔の事を念頭において物事を見渡してみれば周りには心配の種しかない。
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