第17話

 昼頃に喫茶店にやってきたのでもうそろそろ夕食の時間になるかもしれない。そんなことを思ってきっと総菜ばかりなんだろうな、と一応軽めのおかずを作り、神澤さんの家を目指した。

 駅前にはイチャイチャしているカップルなどがひしめき合っている。

こういうものを見たくないから見えてしまうものなのだろうか……それとも単に本当に多いというだけなのだろうか。

 私もあんな風になりたいな、と考えつついもそんな相手もいたこともないので 正直に言えば恋愛のしかたもわからないのだから、最初に選ぶとすれば、やはり年上の男性だろうか……。そうすればわからないことだらけでも、色々と教えてもらえるんじゃないだろ

「何を考えてるのよ、私は」

思わず一人でそう呟いて誰も聞いていないだろうかと思わず周りを見渡した。誰もが目の前の携帯や難しそうに眼の前の光景を見ているだけでこちらに顔を見ている人はいないので安心してバックを担ぎ直して夜の街を歩きだす。

 神澤さんのマンションにつき、インターホンを押そうとして、手が止まった。中から男性の声がしてきたからだ。

何を言っているのかまではわからないが、なにやら騒ぎが起こっているということまではわかった。まさか、朔君の両親が乗り込んできたとか火事になったとか、喧嘩? 

「大丈夫ですか神澤さん!」

 扉を慌てて開く。そこには、全裸の男と素っ裸の子供。全身びしょ濡れの近江さんが立っていた。

 昨日の事といい、今日の事と言い、何故男の人というのは全裸でふらついているのが好きなのだろう。とりあえず、大きめの悲鳴と共に扉を閉め、頭を抱えること数分。再び玄関のドアが開き、そこから、近江さんがひょっこりと顔を出した。 

「すまない。なんだか、朔が暴れてしまって」

 「いえ、それよりも……」

私がそういったのは、朔の体には無数の痣とたばこの押し付けられた跡がくっきりと残っっていたのだ。

一瞬固まった私を見て、近江さんが小さくうなずいた。ここで、騒いだらきっと朔に気取られてしまう。大変なことなのだとわかられてしまう。私はなるべく演技として悲鳴をあげ、心は平静を保ったまま扉の外へと飛び出した。

「ああ、脱がせようとしたらあの怪我だ。あいつもいつわかっていたんだか……あまりそういうことをいうやつでもないんだけどな」

まあ、ちょうどいい。やつらも風呂入ったことだし、上がっていけ。と近江さんは私の頭をポンと撫でた。

 私が思わずうん?と自身の頭を見ると、彼も驚いたように身を引く。

「すまん」

「いえ、別にいいんですけど……もしかして、妹さんがいらっしゃるとかですか?」

 「いや、姪だ」

 近江さんはそのまま玄関を上がっていく。

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