第3話
季節は、冬から春へ、春から夏へ、夏から秋へと順番を間違えることなく過ぎていきます。昔はウサギにも跳び越された木でしたが、今ではもう鳥たちでさえ、小さなものは彼を飛び越そうとはしませんでした。仲間たちと肩を並べるくらいにすっかり大きくなって、木は少しがっかりしていました。
小さかった頃は、仲間たちは空よりも高く太陽のすぐ傍にいるように見えたのに、いざ大きくなってみると、仲間たちの誰も太陽の傍にいるものはいないとわかったからでした。
秋のある日、一匹のリスがやってきて、彼の枝に住みつくようになりました。リスは毎朝枝の上に出てくると、言ったものでした。
「あああ、ここは見晴らしがよくて気持ちがいいな。食べ物もたくさんあるし、こんないい所は他にはないよ」
リスは毎日こまめに働き、木の実等の食物を集め、巣の中に蓄えました。秋はまだ浅く、木々もまだ緑の葉をヒラヒラさせていましたが、冬はいつもすぐやってくるのでした。
ある朝、リスがいつものように枝の上へ出て遠くの空を見ていると、その年、一番最初の渡り鳥の一団が目につきました。渡り鳥たちは長い列をなし、北の空から飛んできて、南の空へ向かって真っ直ぐに飛んでいきました。それは、いつも秋になると見られる光景で、珍しくも何ともない光景ではありました。
渡り鳥たちは、翌日も、そしてその翌日も、北の空から飛んできては、南へ南へと渡っていきました。
--あの鳥たちは、一体何処から来て何処へ行くのだろう? 何故、あんなに急いで飛ぶのだろう?
ふと、リスはそう思いました。そして、すぐまた考えました。
--そんなことが、この僕になんの関係がある? どうでもいいじゃないか、誰が何処へ行こうと・・・。
それでも、その翌日には又、渡り鳥の群れは飛んできて、南へと飛び去っていきます。そして、リスは又、その光景に引き寄せられてしまうのでした。
「一体、何処へ行くんだろう? あの空の向こうには、何があるのだろう?」
リスは、どうしてもそう思わずにはいられませんでした。
リスは、自分の作った立派な住まいを見ました。そして、その中に蓄えてあるたくさんの木の実を見ました。冬を迎える準備は、もうすでに整っていたのです。
木々はそろそろ赤や黄の衣をまといはじめ、時折吹く風も、少しずつ涼しげになってきました。
「おおい!」
リスは、木の上から大声で呼びかけました。
「きみたちは一体、何処へ行くんだい!?」
行くんだい・・・行くんだい・・・行くんだい・・・山びこが、リスの言葉を繰り返しました。けれども、渡り鳥たちは何も応えてはくれませんでした。彼らはただ、南へ南へと・・・忙しく翼を動かすだけだったのです。
--一体、何に惹かれるんだろう? 何が彼らを、あの空の彼方へ呼び寄せるんだ?
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