ナッシュワールド

 作:北見悠平


 竜の尻尾を踏んづけて

 危険なサンドバッグに襲われて

 失くしたものの大きさがわからないのに

 手元にあるのはちっぽけな鞄一つきり


 激しい雷雨に見舞われて

 近所の道で異世界トラックにはねられて

 転生するかと思ったら

 待っていたのは空っぽになった日常


 意味深な言葉で惑わされて

 ハングアップしちまった機械を棄てる

 見えない力に振り回されて

 見向きもされぬ人の形を忘れない


 何処かへ繋がる力が無いなら

 誰にも通じない暗号を開発して

 極彩色のキャリーバッグの内側に

 耳鳴りも届かない場所を作ったらいい


 閉じた世界は緩やかに

 確かに全てを終わらせていく

 車海老みたいな眠気に包まれて

 夕闇に溶けるコーヒーカップの空模様


 散り散りになった夢の欠片を

 寄せて集めて膨らませれば

 隠れたまんまの明日の朝焼けが

 マッシュアップみたいに見えるのか

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