メサイアの刻

 作:北見悠平


 剥がれ落ちていく痛みと

 永遠のように続く苦しみから

 誰かを救いたくて

 すべてを掬おうとしたならば


 区切られた視界の限られた世界

 穿った眼差しで開かない扉

 砂時計をひっくり返そうとして

 やり直しの利かないことを知る機械


 放っておけば消えていく

 交わした言葉の意味合いも

 繋いだ右手の冷たさも

 抱いたはずの気持ちさえも


 瞬きを一つする間に

 失うものが数え切れないから

 かけがえのない僕らはみんな

 涙を流すことができるのか


 いつか始まった物語なら

 どこかに終わりがあるのだろう

 それを呼ぶ名をつけるために

 この不確かな言葉を遣う


 切り刻まれた時の欠片に

 映り込むのは思い出と

 すっかり古ぼけて小さくなった

 かつて傷んだ心の跡


 遥か彼方に望むのが

 何を助けられる未来なんだか

 誰に拾わされた過去なんだか

 今となってはもうわかりはしないのさ

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