作:北見悠平


 落ちた木の葉が風に転がる

 穏やかで優しくて寂しい情景

 女の子たちが駆け去って

 僕はくしゃみを二つした


 どこへも行けぬこの足で

 歩く道には影法師

 柔らかな日差しに照らされて

 赤と緑の鈍いコントラストが揺らぐ


 身じろぎするのも億劫だけど

 歩調はさして悪くない

 色褪せた冬の街並みが

 人々を包むように輝いている


 イメージも膨らまぬほど素っ気なく

 眠気がくるほどには暖かくもない

 音もなくゆっくりとそよぐ風が

 鮮やかな黄色の旗を揺らす


 ウイルスもただ生きている

 僅かに傾ぐ身体の内で

 白血球に目をつけられて

 望みもしないまま戦い殺される


 我々がこうして立てる音の

 なんとうるさいことだろう

 データベースで捜してみても

 静けさだけは見つからぬ

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