012-戻ってきた日常
『~♪』
『むぅ……』
ここは自宅のリビング。
なぜか金髪の美少女女子高生はニコニコ笑顔。
一方の褐色肌のちびっ子は膨れっ面で不機嫌オーラ全開という意味不明な状況に、俺は頭を抱えていた。
『……お主、絶対どこかで見ておったであろう?』
『いいえ~? 天界でまったりと優雅なティータイムを過ごしていたら、下界で異常な魔力の衝突を検知しまして。慌てて飛んできたのですよ~』
「おめー、風邪で学校休んだくせに、何で優雅なティータイム過ごしてんだよ」
俺がツッコミを入れると、こんな顔(・ω<)で誤魔化しやがるのが何とも憎らしい。
『さて、冗談はここまでにして。ホント、無事に生還できて良かったです……』
「頑張ったのはセラだけどな」
俺が横目でちらりとセラの方を見ると、さっきスーパーで大人買いしたばかりのハーゲン○ッツ(バニラ)をモグモグしていた。
『まったく。お主がリクに余計な事を吹き込んだせいで、えらい目にあったぞ』
『むしろ、クックック……この時を待っていたぞ小僧! ……とか言いながらリクさんを後ろから襲うのが定石でしょう? そこに私が颯爽と現れて、貴女を撃退してめでたしめでたしです』
『そんな定石があってたまるか!』
再び不機嫌そうに頬を膨らすセラを見て、カナはクスクスと笑った。
『まあ、貴女の行動を見た限り、リクさんにとって脅威となる心配が無い事は分かりました』
『当然じゃ。手に余る程の力を得たところで、それが何になる? しかも、自身が護ると誓った相手を殺める愚行に手を染めてまでな』
そう言ってアイスを頬張るセラを眺めているカナの表情は、心なしか嬉しそうだ。
『さて、改めてリクさん。魔王の手下であるヴァンピルを倒したわけですが、安心はしていられません』
「やっぱり、次が来る可能性は高いか」
俺の言葉にカナはコクリと肯く。
『あの男がリクさんを捜して
「そういえばセラと初めて会った時も『美しい色の魂~』とか言ってたっけ」
『うむ。一目見れば分かる程に特徴的な色じゃな。芸術的でもある』
そんな事を言われても、嬉しいやら嬉しくないやら、なかなか判断に困るところだ。
だが、カナは別の理由で難しい顔をしていた。
『何を暢気な事を……。先日リクさんにも説明しましたけど、お二人とも同一の魂を共有しているのですよ?』
「え、それって、もしかして……」
『そのもしかして、です』
カナはそう言うと、幸せそうな顔で2個目のハーゲン○ッツ(マカデミアナッツ)を堪能するセラをチラリと見て溜め息を吐いた。
『次に狙われるのは、貴女かもしれません』
◇◇
翌日の放課後、俺はセラと共に最も心強い味方に会いに行った。
『助けてー、さなえもーん!』
玄関を開けるや否や、セラがどこかの気弱なメガネ男子みたいな言い回しで、早苗姉さんに飛びついた。
『えっ、セラちゃん!? えもんって……ちょっと、リっくん!!』
「俺のせいじゃないよっ!」
神崎が我が家の空き部屋をアイテムストレージ……もとい、荷物置き場にしてるせいで、セラはそこに放置された大量の
でも、さすがにF先生の大全集20巻コンプリートはそろそろ持って帰ってほしい。
『さて、平日にわざわざ二人が来たって事は、例の不審者騒ぎの件かしら?』
「どうしてそれを!?」
早苗姉さんは半分悪魔の血を引いているとは聞いていたけど、もしかすると魔力を感知したり、遠くを見渡す能力があるのだろうか?
俺が感心していると、早苗姉さんは何かを持ってやってきて、テーブルの上に置いた。
【回覧板】
不審者注意のお知らせ!
「………」
『お姉ちゃんね、セラちゃんの事とっても心配でしたっ!』
『お、おぅ……』
何だか安心したような、ガッカリしたような……。
『不審者が"勇者がうんぬん~"みたいな事を言うと聞いて、お姉ちゃんピンと来てね。ずっと張ってたんだけど……』
『アレは我輩達が倒したぞ?』
早苗姉さんは一瞬驚いた顔をしてから、はぁ……と溜め息を吐いた。
『リっくん、詳しく聞かせてくれるかな』
「うん……」
◇◇
『めーーっ!!』
やっぱり怒られました。
『セラちゃんを置いて逃げるの、めーーっ!!』
「えっ、そっち!?」
『でも、その後でちゃんと戻ってきて窮地を救ったのはステキ! すれ違う二人、逆境を乗り越えて深まる絆……! お姉ちゃんがセラちゃんだったらフラグ立っちゃうねっ! でしょっ! でしょっ?』
『お、おう? そうじゃな……フラグ?』
セラすごく困ってるから! 勘弁してあげてっ!
『まあそれは半分冗談で置いといて。つまり、次の刺客が来た時に備えておきたい……という事で良いのよね?』
「うん。俺とセラが二人の時なら良いけど、互いが単独の時にバッタリ遭遇してしまったら、手も足も出ないからね」
今回だって一悶着あったとはいえ、偶然セラが買い物帰りに通りかかったから助かっただけで、もし家でおとなしく留守番していたら、その時点で俺がヴァンピルにやられていただろう。
そんな現状を伝えた俺に対し、早苗姉さんは不敵な笑みを浮かべた。
『ふっふっふ。そんな事もあろうかと、お姉ちゃんはしっかり準備をしていたのです!』
「えっ! 何か対策方法が!?」
すると、俺とセラの目の前に『じゃじゃーん!』とか言いながら、紅白色の紙袋が置かれた。
「………」
『これがあれば、リっくんとセラちゃんはお互いを助け合えるし、居場所だって分かるの。このヒモを引いて相手を
『なんと……! これは一体、何という
目を輝かせながら黄色いプラスチック筐体をブンブンと振り回すセラを見て、俺は苦笑しながらその名を口にした。
「キッズケータイ……かな」
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