つまり、重要そうな場所ってわけ
橿洲市浄化作戦が起こる前から、
『北東』が地名に入っている通り
『
「また来ちまったか。ここに」
そう呟くカチュキの服装は、骨を咥えた猛犬の絵柄が堂々と刺繍されたジャージの上下。それと、昨日と同じくオールバックにレイバンのスタイル。てか、変装のためとはいえ、ワルの姿がすっかり板につくようになったなあ。はっはっはっは。
あたしも同じく骨を咥えた猛犬が刺繍されたジャージ姿。あたしは知らなかったんだけど、骨を加えた猛犬のブランド、かつては義龍聯合のような界隈にとって御用達とも称されるほど有名なんだって。でもこの服、あたし向けじゃない。胸がパツンパツンすぎて、歩くたびに裾が上がんの鬱陶しいんだが。
で、この二人だけなら、おそろっちのカップルが勝手に工場に来た。って感じになるんだが、今回のメンバーはあたしとカチュキだけじゃない。もう一人いる。
「ここなら、忍姉さんの死の真相が分かるかもしれない」
ちょいと忌まわしげに呟きながら黄瀬興業の入り口を見回してるのは、
シャツにジーパンというシンプルな格好だったんだけど、『あたしと行動するなら、これ着な』という提案(押し付け)により、あたし達と同じ猛犬の絵柄が入ったジャンバーを上に羽織ってる。でもおかしいな。警官なはずなのに妙に似合ってる。
あたし達が黄瀬興業やって来た理由はシンプルで、カチュキとサチョの共通点だから。
まず、カチュキ。最初の殺人事件の容疑で捕まる前まで、カチュキはここで働いていた。カチュキ曰く、中卒の自分が車の免許取るまで面倒見てくれたり、他にも訳アリの奴らを採用してくれてたりと、かなりいい場所だったとのこと。
次に、サチョ。黄瀬工業はサチョにとって、姉貴分である
「佐知代さん、忍さんの死だけじゃないぜ。絵美を殺した奴の真相も分かるかもしれねえ。あの事件の、本当の真犯人が分かるかもしれねえんだ!」
「それだけじゃないぞ、カチュキ! 実は——あ、待って! 神を放っといて先に行くなバカタレ共があ!」
てなわけで、不覚にも敷地内に足を踏み入れたのは、あたしが一番最後。全く、あたしの眷属になれたからって調子に乗ってんじゃねえっつうの。だいたい、あたしだってカチュキの記憶見てるから、ここの入り方くらい分かっとるわ。
ほら。今、カチュキが入ろうとしてる事務所。カチュキの所属してた課の奴らは、みんなあの中に一旦入ってから、業務に取り掛かるんだよな。
「って、だから、あたしより先に中入ろうとしてんじゃねえよ、バカタレが!」
あたしは怒鳴るも、カチュキはガン無視でドアノブを握り、カギに阻まれた。
「……やっぱり、今日は日曜だから工場は動いてるわけねえよな」
「はっはっはっはっは。愚かなカチュキめ。眷属の分際であると身を弁えないから、容易く障害に阻まれるのだよ。ほらほら、そこをどきな、あんた達ぃ。全く、あたしがいないと何も出来ねえってのに」
というわけで、ドアの前に立ってて邪魔なカチュキとサチョを念力でやんわりと退かし、代わりにあたしがドアノブを捻る。鍵のかかったドアの解錠なんざ、あたしの魔力を以てすれば文字通り赤子の手を捻るようなもんだ。
「まったく、勝手に行っちゃう眷属のカチュキより、触れただけで解けてくれる鍵の方がずっと従順で利口じゃないか。ふっはっはっは」
さて、内部。いかにも昔ながらの建築物に、棚とか事務机とかそれっぽいのを並べたような空間だった。内部は薄暗かったけど、電源が切れてただけだ。ちょいとエネルギーを供給すれば、勝手に天井の蛍光灯とかに電気が通る。
「……あの頃からちっとも変わってねえ。やっぱり、今でも動いてんだな」
事務所のど真ん中で、なんかカチュキが感慨深げに周囲を見回している。
「カチュキ、思い出に浸ってるとこ悪いけど、あたし達がここに来たのは、あんたの思い出話を聞くためじゃねえからな」
「分かってるよ、ウラウラ。でも、ここは俺の思い出の場所なんだ」
「ご心配なく、勝幸さん。あんまり散らかさないでやりますよ。私の犬山警部仕込みのガサ入れは定評がありましたから」
困惑するカチュキの肩をサチョが叩き、あたし達は事務所にある資料を調べまくることに。
事務所自体はそんなに広くない。一階は、あたし達が今いるメインの部屋と、隣に紙媒体のファイルが詰まった棚ばかりが並ぶ書斎、ちっこいサーバー室、物置、便所——を繋ぐ廊下があって、二階には会議室があるくらい。で、紙媒体のファイルをあたし達は片っ端から漁ってるんだけど、
「これは従業員の勤怠記録で……、これはどこのトラックが何を運んで何を処理したかの資料。どれもこれもあたしの探してる情報じゃねえな」
「仕方ねえだろ。黄瀬興行はそういう会社なんだからよ」
念力でふわふわ浮かせたファイルの中身をぱらぱらと速読しながら情報を集めるあたしに、カチュキが肩を竦めて答えた。ちなみに、あたしがやってる光景に対してサチョのリアクションが薄いのは、さっきまで見すぎて慣れちゃったから。
名前でお察しの通り、黄瀬興業はメーカーじゃない。主な業務は、法人を対象にした廃棄物処理。つまり、会社専門のゴミ処理屋さんってわけ。
「しかし、資料をざっと見るだけでも、色んな企業の相手してるね。ま、北東工業団地は化学からエレクトロニクスまで色んな企業があるし、そいつらから出てくるもんの処理を一挙に引き受けるとなれば、そりゃボロ儲けにもなるか。はっはっはっは」
「……でも、その一方で、利益重視の不法投棄も多くて、近隣住民とトラブルになったり、橿北地方の植生を悪くさせちゃったこともあるんですよ。以前も、環境保護を訴える団体が黄瀬興業に抗議活動をしていました」
「ったく、あれはマジで面倒だった」
サチョの補足を聞いて、カチュキが溜息をついた。
「
「へえ。ま、そう言う奴らって、たいして何も出来ないくせにデカいことや正しいことはしたい、つまらない奴らだと相場は決まってるからな。そんな奴らを煽って率いたら楽しいこと出来るんだろうけどねえ、はっはっはっは」
なんてだべりながら資料を探ってたんだけど、めぼしい資料はまるでなし。一応、サーバー室があったからパソコンの中にはなんか隠してあるんかなって思ったんだけど、そこにもなし。書斎にあった資料をまるまる電子化させたものばかり入ってた。
「なんか、模範的なまで真っ当な整理がされてますね。外からの評判と全然違います……」
あまりのつまらなさに、サチョからも驚きのコメントまで出ちゃう始末。
「ねえ、カチュキ、他に心当たりとかねえのお? そもそもこの事務所、敷地面積のわりにちっちゃすぎなんだよ。こんなとこだけで、この会社の全てを管理しきれるとはとても思えねえんだけど」
あたしの指摘に、カチュキはこめかみに指を当てながら答える。
「まあ、俺が働いてたの、敷地のほんの一部でしかねえし、俺でも立ち入っちゃいけねえ場所はあったな。それに、ここの一番偉い人の顔、あんまり思い出せねえんだよ」
「は?」
「黄瀬興業に雇ってくれたのは工場長の権限で、会長じゃねえんだよ。当時の課長と同じくらい俺の面倒をよく見てくれてたんだ。でも、肝心の黄瀬会長とやらは、あんまり会ったことねえんだよな。いつも出社してねえってはずねえから、多分、別ん所にいたんだと思う」
「ほう? じゃ、早速行ってみようよ。善は急げだ!」
と、事務所を出ようとした時だった。ドアの向こうから「ずずん……」と重たい何かが通る音がした。窓の外を見ると、後輪が前後二列になってるくらい巨大なトラックが、事務所の前を通り過ぎて行った。
「……あれ? 今日は休みなんだよね?」
「そのはずだぜ。いるとしたら、設備の警備とか技術部の連中くらいだ。でも、そいつらがあんなデケえトラックとは縁が無かった気がするが」
「何か裏があると見た方が良さそうですね。勝幸さん、トラックの方角に心当たりはありますか?」
「さあ。少なくとも、ここの人間だった頃は行ったことのねえ方向だってことだけは確かだ」
カチュキの回答に、あたしが歯を剝き出しにして笑んだのは言うまでもない。
「へえ、じゃあ、なおのこと追い掛ける必要があるね」
★★★
「……もうちょっと普通の尾行方法って無かったんですか!?」
予想以上に広大だった黄瀬興業の敷地の中にあったトタン屋根の施設。二階建てで階段は表にあるという古びた作りながら頑丈な建物の屋根の上から、あたし達は目的のトラックを見下ろしていた。
トラックは工場のような建物の手前に停まっていた。まるで鳥が翼の片方を広げているかのように開かれた箱状の荷台から、フォークリフトが何かを仕切りに取り出している。木製のパレットにラップまみれの金属製のタンクが乗っかった何かなんだけど、あれが廃棄物なのかな?
「あれが本当にゴミなんか? ゴミにしちゃ、えらく厳重に梱包されてんな。よっぽど危ねえ何かなんじゃねえのか?」
「降りて調べる必要があるね、これ」
遠くから偵察しながらコメントしてみるカチュキとあたし。
「……ねえ、聞いてるんですか? 二人とも……もうちょっと」
「なんだよサチョ、さっきからグチグチと。不満があるならはっきり言えよ」
ふくれっ面であたしがサチョの方を向くと、サチョは青ざめた表情で屋根の僅かな突起に滅茶苦茶しがみついてた。
「もうちょっとまともな尾行方法って無かったんですか? 空を飛ぶって聞いてなかったんですけど……。こんなとこで張り付くなんて聞いてなかったですよ」
「なんだよサチョ、もしかして高所恐怖症だったのお? こんくらいの高さくらい我慢しろよバカタレが。相手はあたしらが上から覗いてるなんて夢にも思ってねえんだから、ここから見張るのが丁度いいんだよ」
「まあ、佐知代さんは、ウラウラが空飛べて、俺がウラウラの念力で運ばれてここに来たっての、ここに来るまで知らなかったからな……」
カチュキの言う通り、あたし達は現地集合で黄瀬興業にやって来た。あたしとカチュキはカチュキが言った通りの方法で、サチョは徒歩でここに来た。サチョ曰く、黄瀬興業というか北東工業団地は近所なんだって。
「こんな目に遭うくらいなら、むしろ堂々と後を追い掛けて、気付かれたら気付かれたで豪快な武力行使をやった方が良かったんじゃないですか? ウラウラさん、そういうのが得意そうな感じしますし」
「否定はしねえ。あたしなら、あんなトラック一台粉々にしちまうのは朝飯前だ。でも、こういう場所で行われてる誰にも見られたくない隠し事をこっそりと暴いて、『見ちゃったもんねー!』『バラしてやるもんねー!』と驚かせてやるのも大好きなんだよ。はっはっはっは」
「そ、そうなんですか……」
あたしの悪い笑顔にビビってんのか、単に屋根の上にいることに限界感じたのか、サチョが弱々しいリアクションをしていると、いよいよ監視先の様子が変わってきた。トラックが去ったので、あたし達も建物の中へ入る。
と言っても、わざわざ今いる屋根から降りて、ご丁寧に一階から入ってやるつもりは毛頭ない。屋上があったんでそこから侵入してやった。
階段降りてすぐのドアを開くと、広大な空間が視界いっぱいに広がった。鉄骨の梁が天井を縦横無尽に走り、キャットウォークのような足場を見下ろすと良く分からないタンクやら装置やらがそこら中に置かれている。まあでも、こっから全貌を把握するのは無理そう。事務所みたいな箱形の建物とか中にあるもん。
と、ここでサチョから提案。
「ウラウラさん、勝幸さん、ここは二手に分かれましょう。三人でわざわざ固まって捜査するのは、非効率だと思いますので」
「ん? なんだ? これ以上、一緒にいたら、またなんかろくでもないことされると思って離れるつもりかい? ――まあまあ皆まで言うな。そのつもりが無いことくらい分かってるよ。でも、なんか面白い情報を得たからって、独り占めすんのはやめろよ? 記憶を見ればすぐにバレるからな!?」
「てか、佐知代さんだけで大丈夫なのか? 万が一……」
「ご心配なく。謹慎中とて私は刑事。この手の潜入なんて造作もありません。何より勝幸さんは刑務所の中にいたから知らないでしょうけど、『道道姉妹』と呼ばれた実力は伊達じゃないんですよ」
とまあそんな自信満々な回答を残して、サチョはキャットウォークから階段を下りてってしまった。よっぽど、あたし達と上階を移動したくないらしい。
「なあ、大丈夫なのか? 佐知代さん」
「まあ、なんとかなるでしょ。サチョの『道道姉妹』の記憶なら確認済みだ。カチュキ、サチョの過去はあんたの残念な学生時代なんかよりずぅーっとヤンチャだったよ。はっはっはっは」
「とりあえず、佐知代さんが信じてもいいのと、ウラウラが相変わらず一言多いのは良く分かったぜ」
流石は我が親愛なる聡明な眷属。良く分かってるじゃないか。
倉庫の内壁をなぞるように設置されたキャットウォークを通って、あたし達はまずフォークリフトの搬入があった入り口の方へと歩く。てか、このフロアに入った時から変なにおいすんだよな。鼻腔から入り込んで脳みそがふやかされるような、なんか独特な臭気。
で、見つけた。フォークリフトから運ばれてた金属製のタンクだ。そいつが巨大な装置の末端に接続されてチューブで運ばれ、別のチューブとも接続された巨大な鍋のようなタンクに纏めて入れられて攪拌され、そっから先もなんか似たような装置に繋がれて奥の方までずっと続いている。
「あれ? なに、作ってんだ?」
「さあ」
カチュキが疑問を口にするも、あたしも何を作ってるのかは見当もつかない。
ちなみに、あたし達の足元にはヘルメットを被った作業員が横になっている。顔に傷のついてる強面だったんだけど、あたし達の姿に気付くや否や、その場で糸の切れた操り人形みたいに寝ちゃったんだよね。まあ、死んではいないよ。でも、あたし達の記憶は意図的に失っちまってるだろうけどね。
と、ここであたし達は現場をのっしのっしと歩いている誰かに気が付いた。
奇怪な装置の前であくせく働いてる従業員たちには目もくれず、すんごい大股でどっかに向かって歩いてる。ただ、着てる服が他の作業員と違う。羽織ってる上着こそ従業員の作業着と一緒なんだけど、履いてるのはスラックスだし、襟元から覗いてる黒いシャツも他の従業員が着てるものじゃない。
身長こそ高いものの、ひょろっとした印象はまるでない。浅黒く日焼けした皮膚と白髪交じりの髪形が合わさって、遠くからでもよく目立つ。何より、眉間に皺を寄せたしかめっ面の威圧感が尋常ではない。これ、並みの従業員じゃ近付くことすら躊躇われるんじゃねえのお?
けど、そんな偉丈夫が視界に入った途端、カチュキはいきなりあたしの肩を叩いた。
「ウラウラ、あの人だよ。俺を黄瀬興業に紹介してくれた人だ。
知ってるのを見れたからか、カチュキは驚きと喜びがごちゃ混ぜになっていた。今は騒げないけど、必死で抑えようとしてる。まあ、味方になりそうな身内なんてみんな死んでしまった身だからな。そういう気持ちになるのも無理はねえか。
まあ、あたしも気になるよ、そいつ。てなわけで、キャットウォークの上から追い掛けてみる。って、おい。そこの梁みたいな巨大クレーン操作してる奴と近くで立ってる奴ら。何だその目は。嫌らしいくらいギラついてんじゃねえか。……そうだ。それでいい。何も覚えてないくらいの呆けたボケ面の方が、あんたらにはお似合いだよ。
さて、我が眷属の心を捉えてしまった肝心のタブリとやらは、倉庫の中に備え付けられたプレハブ小屋のような事務所へ向かったかと思いきや、古びたアルミのドアを荒っぽく開いて中に入った。あたし達はというと、その事務所の真上にこっそり乗っかった。そこから天井を魔力で投資して中を見てやるって寸法だ。案の定、事務所の上は汚らしい生きもんがいたけど、魔力でみんなご退場させてやったよ。はっはっはっは。
さて、真上から一部始終を見てみる。事務所には、タブリの他にも何人かいるようだ。隅っこでパソコンやってる事務員みたいなのも見えるけど、そんなのなんかよりずっと存在感に満ちた奴がタブリ以外に何人かいる。
まず気になったのは、両サイドを刈上げた黒髪の眼鏡。こんな古びた倉庫に不似合いなほど真っ白な白衣を纏った姿はどこからどう見ても研究員って感じなんだけど、セルフレームのレンズ越しに爛々を見開かれた眼といい、なんというか陽の光を浴びてすらいない軟弱さが感じられない。
「おいケミ! 木梨・横尾の人間の分際で黄瀬興業の敷地から俺を呼ぶたあ、良い度胸だな! 一体、なんのつもりだ?」
タブリがそいつに鬼気迫る形相で喚いた。首から下げたネームプレートが揺れるほどの凄味ある怒声でもなお、ケミと呼ばれたそいつは眉ひとつ動かしてない。
ネームプレートを拡大すると、『
「なんのつもりも何も、会長命令で呼ばれたことがそんなに不満ですか? 工場長」
「会長!? お前がここの会長だと!? 誰の権限でそんなことが出来ると思ってんだ」
「親父の遺言ですよ。黄瀬会長の訃報が届きましてね、これです。中身を確認してください。『毛見隆則を黄瀬興業の次期会長に任ずる』と書いてあります。というわけで、ここは私が仕切ることになりました。以後、お見知りおきを」
ケミが懐から取り出した物々しそうな書簡を奪い去るように受け取ったタブリは、そのままケミに背を向けて貪るように中身を読み始めた。
内容に驚いてんのか、タブリの方が震えている。でも、実はあたし達も同じくらい驚いてる。知ってるんだ。ケミのネームプレートに書かれた企業の名を。
「『木梨・横尾ケミカルズ』って、絵美がいた会社じゃねえか。なんでこの名前が出てくんだよ……」
「これは驚いた。カチュキと絵美、それぞれに関係のある企業の名前が出てきた。なんでだろうね」
次の瞬間、タブリが怒声と共に書簡を事務所の床に叩きつけた。
「こんなん認められるか! 俺じゃないならまだしも、お前みたいな
「何も。親父が俺のことを信頼していただけの話です。それに、いつまでも私に口答えをしてよろしいのですか? お言葉ですが、嫌われ者の黄瀬興業が今日まで事業を続けてこられたのは、私達『木梨・横尾ケミカルズ』がERISの原料を貴方達に提供しているからに過ぎないのですよ。貴方達にとってERISが貴重な収入源であることを、私も誰も知らないわけではないのです」
「なんだと!?」
「私達と貴方達は切っても切れない関係にあるわけです。あまり、反抗的な態度をなさるな。なんなら、この施設の管理を貴方ではなく『DS』か『BMW』に任せても良いとも思っているのですよ」
「ふざけるな! 俺達をなんだと思ってるんだ!」
慇懃無礼なケミの言動に、ますます苛立ちを募らせているタブリ。
けど、ケミの発言にはあたし達も驚いた。いや、ある程度「そうなんじゃないかな~」とか思ってたけど、まさかこんなにもあっさり聞けちゃったとは思わなんだ。
「マジかよ。じゃあ、つまり……俺の職場がERISの工場で、絵美の職場がERISの原料の工場ってことじゃねえか……!?」
アンリ=マンユ・ウラウラは悪いことが出来ない バチカ @shengrung
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