見えない暗い流れに御用心!?

 なぜ、カチュキは『俺が生まれる前から橿洲市にはヤクザはいた』という認識であるにも関わらず、義龍聯合史は十三年度までしかなかったのか。それは、『義龍聯合以外にもっと歴史ある組織が在ったから』じゃなかった。


 かつて、橿洲市には下水流しもずるかいという巨大なヤクザ組織があった。義龍聯合の正体は、下水流會の構成の一部に過ぎなかった義龍会がクーデターを起こし、トップを簒奪した結果生まれたものだった。


 あたしは、そんな義龍聯合を壊滅させてしまった。結果として、この町にはもうヤクザという反社会的勢力は存在しなくなってしまったのだ。


 なんて邪神にあるまじき失態……! けど、出宮家郎イエローからこの事実が告げられてもなお、今のあたしはそんなに落ち込んではいない。それにはふたつ理由がある。


 ひとつ。カー業魔奴カルマナが減ってない。これは、何度も言ったね。


 もうひとつ。実はこの館の地下で、イエロー以外でとんでもないもん見つけたんだ。


 前回言い忘れてたんだけど、例の地下牢みたいな部屋へ行く途中、実はもうひとつ別の扉があった。イエローと別れた後に中を調べてみたら、——あったんだよ。


「なにこれ!」


 見た時には、あたしもカチュキも声が出ちゃった。


 巨大で分厚い金属の扉があって、それを開いたら見上げるほどの大金が積まれてたんだ。もちろん、全部万札だ。


「すげえ。これ、100億くらいあるんじゃねえのか?」


 マジで驚いた。いや、これほどの館なら凄いお宝のひとつやふたつあるんだとは思ってたけど、まさか現ナマの山が地下金庫に積まれてたとは思わなんだ。


 これほどの大金があれば、あたし達の目的の為にすべき選択肢は大幅に増える。マジでなんでも出来るかもしれない。


 というわけで、あたし達はこの金を持って――


 ★★★


「遊ぶぞぉー!」


 夜の町に繰り出していた。


「いやウラウラ、遊ぶってなんだよ!?」


「ああもう、カチュキ、分かってないなあ。あたし達がこれから行く場所、分かってる? クラブだよ? 義龍聯合の幹部すら行ってるって、義藤龍壱の私室のパソコンから判明した施設だよ? そこってどういう場所だか分かってる? 偉い人達が集まる場所なの。偉い人達には、たいてい重要な情報が集まってるもんなの。あたし達の目的を達成するために必要なもんが絶対にあるの。分かるう?」


「まあ、それはそうだけどさ」


「あんたはただ、今まで縁が無さ過ぎて不安なだけだよ。気にすんな。ただ、目一杯楽しめばいいだけなんだからさ。ふっはっはっはっは」


 というわけで、あたし達は今、義藤龍壱のパソコンにあった店の前にいる。場所は、橿洲カシュシュの地で最も華やかな地域――橿南きょうなん地区の中でもとりわけキラキラした夜の街。で、肝心な店の名は、


 クラブ『Milky Way』


 いや、華やかな色彩の明かりを放つ店はそこら中にあるんだけど、こいつはとりわけ豪奢だ。白を基調とした入り口なんだけど、実際にダイヤモンドでも嵌め込んでじゃねえの? って思っちまうくらい、玄関の明かりがキラキラしてる。


 服装? ちゃんと、クラブの雰囲気に配慮したドレスコードにしてあるよ。


 あと、入り方も分かってる。出入口に立ってる店員に、見せる場所で見せるべきもんを見せるだけ。免許証と会員証のカードを見せると、店員は快く店の中に通してくれた。


 え? そんなもんどうして持ってるって? 入り方をイエローに聞いたら、クラブに入るにはそういうもんが必要ですよって言われたから作ったんだ。あいつ、解放した翌日に早速連絡したもんだから、ちょっと驚いてたよ。ふっはっはっは。


 免許証と会員証は、それぞれ義藤龍壱の机に入ってたから、あたしが複製した。もちろん、内容はあたしとカチュキに合わせてるよ。本物と内容も性質もほとんど一緒だ。ゼロから作るのは無理だけど、元のもんさえあればハイクオリティな偽物を作るくらい朝飯前よ。これが、神の実力ってわけ。


 さて、店内だけど、いやもう……眩暈がするほど華やかな色彩の照明や無理やり気分を上げてくる音楽があたし達を出迎える、とんでもない異空間だねここは。


 とりあえず、この店で本来すべきことをするだけだ。てなわけで——飲む。踊る。なんか知らんけど隣り合った奴と適当に騒ぐ。遊ぶ。だべる。


 まあほら、あたし、自分で言うのもアレだけど美しい邪神じゃん? 体のエロさも自信ある方じゃん? だから、みんなの視線を引くんだよね。だから、ちょいと騒ぐだけですぐにみんなの注目の的になっちゃった。いやはや、魅力的な自分に困っちゃうなあ。ふはっはっはっはっは。


 どれくらい時間が経ったかな? 楽しい時間ってもんは、やはりあっという間に終わっちまうもんだ。場所も代わりに変わって隅っこのバーでカチュキと飲んでたんだけど、ちょっと気になる集団が目に留まった。二階席へと向かってるみたいなんだけど、先頭を歩いてる奴、どっかで見たことあんだよなあ。


「ん? ウラウラ、どこへ行くんだ?」


「なんか、どっかで見たことある奴がいたんだよ。着いてきて」


 というわけで、二階に上がったあたし達。階段の入り口辺りで誰かが止めてきた気がしたけど、あたしが手をかざしたら大人しくなっちゃった。あんたは何も見てない。だから、引き続きお仕事を続けておくれ。


 さて、気になる例の誰かさんはというと、いた。一階のステージを見下ろせるバルコニーみたいになってるフロアから、わりと離れた所――パーテーションに囲まれて個室みたいになってるフロアの席に、そいつは何人かの集団と一緒にいた。


 歳は二十代中盤から後半くらい。襟足を刈り上げ、揉み上げを剃り整えた特徴的な髪形。このクラブの雰囲気に相応しい派手目のシャツスタイル。照明を反射して煌びやかに閃く金色のアクセサリー。と、ワルな雰囲気を出している一方、端正な顔立ちからは育ちの良さがどことなく垣間見える。


「邪魔するよ。ねえねえ、あんた、どっかで見たことあるよね?」


「……!? お前は!」


 あたし達を見た途端に発した言葉はそれだけ。表情こそ大きく変わってなかったものの、見開かれた眼と張りのある声だけで十分分かった。めっちゃ驚いてる。


 けど、もっと驚いていたのはカチュキだった。ついさっきまで大人しくなるほど酔っぱらってたのが吹っ飛ぶくらい。


「お前、まさか、哲太か!?」


「テダー?」


「いや、テダーじゃねえよ。哲太。川島かわしま哲太てっただ。絵美の弟だよ」


「絵美の……!? ああー! あの時、絵美のママの近くにいた奴か! どおりで、見たことある顔してたわけだ! てか、カチュキもよく知ってたね」


「そりゃ、絵美は親の話はしたがらなかったけど、弟の話はそれなりにしてたからな。直接会ったことはねえが、写真でなら顔は何度か見たことあるしよ」


「おい!」


 突然、ドンと音がした。あたし達に近い所に座ってたテダーの取り巻きの一人が卓を蹴って立ち上がり、あたし達を睨んだ。いや、そいつだけじゃない。反対側の席に座ってた奴まで、あたし達を取り囲みだした。


「てめえら、哲太さんの何だか知らねえが、ここでごちゃごちゃ騒いでんならどっかいけ。迷惑なんだよ」


「待て、スギ! お前らもだ!」


 ここでテダーが、スギと呼ばれた取り巻き及び周囲の奴らを一喝する。


「そいつらに近付くな。男はさておき、女の方は危険だ。ここは俺が相手をするから、お前らは座ってろ」


 テダーに窘められた取り巻き達は「へい」とだけ答えて座る。で、席を空けてもらい、あたし達はテダーの反対側に座った。


「お前ら、どうしてここに来た?」


「遊びに来た。それだけさ」


 なんか問題でもあんの? と言いたいくらいさらっと即答してやった。けど、お相手のテダーは未だ不満顔のようで。


 するとここで、取り巻きのスギがテダーに絡んでくる。


「よく見たら、こいつ滅茶苦茶可愛いじゃないっすか。らしくないですよ、哲太さん。いつもの哲太さんの医者パワー見せてくださいよ。いつもあれでイチコロだったじゃないっすか」


「バカかスギ! 今はそんなん言うタイミングじゃねえだろ!」


 で、思いっきり頭ひっぱたかれた。


「ん、医者? あんた、医者なのお?」


「マジかよ。でも、医者でもこういう所、来るんだな」


「なんだよ。別に、医者がここに来ちゃいけない決まりなんてないだろ」


 テダーが医者だったことに食い付くあたし達。けど、テダーは望み通りのタイミングでそのワードを出せなかったからか、なんかまだ機嫌が悪そう。


「けど、テダーが医者になったとは、なんか胸が熱いね。医者にならなかった姉さんの代わりに、あんたがパパの願いを叶えてあげたってわけか。なんて孝行息子じゃないか。はっはっはっは」


「ここで親の話をするな」


「やだね。ところで、あんたのパパは元気? あの後、すぐ帰っちゃったから知らないんだけど」


「ふざけるな。お前のせいで滅茶苦茶だ。どれだけの修羅場になったか分かってんのか!? あの日以来、俺ですら実家に帰れない有様になっちまったんだぞ。どうしてくれるんだ!」


「あんたらが神の言葉を信じなかった結果さ」


「いい加減にしろ。お前らは姉さんだけじゃなく、家族の仲まで奪おうとしてんのか!?」


 まあでも、怒るあまりテーブルを叩くみたいなことしないでいる辺り、取り巻きよりは思慮深い奴なんだな。


「だからそれ、カチュキの記憶を見たら無実だったって言ってんじゃん。あんたも信じられねえってんなら、あんたの記憶も見てやろうか? はっはっはっは」


 そう言って手を蒼く光らせると、テダーが黙った。てか、取り巻き達が驚いた。


「……分かったよ。無理矢理にでも信じてやる。森長勝幸は俺の姉さんを殺してなかったってな。だから、それは、やめろ」


「分かればよろしい。流石は良い所のご子息だ。話が早くて助かるね。はっはっはっは。——ほら、カチュキ、テダーが認めてくれたよ。って、なに寝てんのお!?」


 ここであたしは、カチュキが爆睡してるのに気が付いた。いや、テダーに会う前から酔ってたのは分かってたけど、ここで差し出されたロックを二口くらい飲んだだけで寝ちまうとか、ちょっと弱すぎだろ。頼むで。


「なんだよ、せっかくテダーが用意してくれたのに、寝るとかバカタレか!? 仕方ない。あたしが代わりに飲むか。——ねえテダー、もう一杯頼んでいい?」


「……勝手にしろ」


 てなわけで、しばらくしたらまた店員がやってきて、新しいドリンクをテーブルに乗せ――た瞬間、あたしはそいつの手首を掴んだ。


「!?」


 急にあたしに捕まれてぎょっとした店員の顔を、あたしは蒼く光らせた手で引っ掴む。ま、すぐに解放して逃がしてやったけど、今必要な情報は得た。


「お前、いきなりなにやってんだ?」


 突然の行動に眉を顰めるテダーと取り巻き。でも、あたしは怖気づくどころか不敵な笑みを浮かべてやった。


「あんたこそ、悪い奴だね。さっき、あたし達に酒くれた奴、ここの店員じゃなくて、あんたの取り巻きの一人だったんだな。しかもあんた、あたし達にバレねえようテーブルの下でこっそりあいつにメッセージを送ってたとは。『ふたりぶんの眠剤入りを用意しろ』ってな。あんた、最初からあたし達を眠らせるつもりで席に座らせてくれたのかよ」


 さっきの店員——もといテダーの仲間から読み取った記憶をそのまま伝えてやった。眠剤――睡眠薬を仕込んだ飲み物を初対面でいきなりくれるとは、最初の印象からは考えられないくらい穏やかじゃない奴だ。ま、そんな睡眠薬もアース次元の住民には即効性があったかもしれんが、あたしは神なんでね。効くわけねえんだよ。


 でも変だな。テダーの反応は鈍い。


「何言ってやがる。そんなん俺達が信じるとでも思ってんのか? この店で店のもんに手を出した奴が、ただで済むと思うなよ?」


「あんた、さっきあたしが言ってたのを聞いてなかったのお? じゃあ、次に聞くんだけど、これなーに? さっきの店員のズボンに挟まってたんだけど」


 ぴらっと見せたのは、名刺サイズの袋に詰め込まれた粉末状の何か。実は、さっきの店員もどきの顔面を掴んでたついでに、ズボンの裾から咄嗟に引き抜いたんだよね。次の瞬間、テダーの様子が変わった。眉間にしわが寄り、奥歯を噛み締めてる。


「あいつの記憶を見た時に、これを服に隠してる情景が見えてね。気になったからパクってみたんだ。どうやらこれ、あんたのパパが危ないもんだって市や警察に報告してたもんと名前が同じみたいだね。しかも、あいつやテダー含めあんた達は、このわけ分からん粉を売ったりしてる組織に所属してるみたい。名前は『ダーク・ストリーム』。変な名前の組織だね。はっはっはっはっは」


「……分かった。お前は本当に記憶が読めるんだな。前言撤回しよう。無理矢理じゃない。本気で、森長勝幸が姉さんを殺してないって信じてやる」


「分かってくれればいいんだよ、テダー。ふっはっはっは」


 しかし、どうもテダーからの眼差しには未だ敵意が残ってる。


「どうせ、今のお前らが公言したところで世間の奴らは誰も信じねえだろうが、お前らは知りすぎた。ただで済むと思ってんじゃねえぞ?」


「この神に向かってそんな啖呵が切れちゃう精神、あたしは嫌いじゃないよ。はっはっはっは。でも、あんたはあんたであたしの眷属に手ぇ出した。薬で寝かしただけでも大罪さ。カチュキの大切な恋人の肉親とて、あたしはやるなら容赦しないよ」


 これでも目一杯ドスを効かせて脅してやった。全く、こういう時に迫力が出ないから、幼子みたいに甲高い自分の声があたしは好きじゃないんだよね。まあでも、気迫は伝わってくれたようで、テダーも取り巻きも何も言わなかった。


「じゃ、これ以上いても空気が悪くなるだけだろうし、何よりせっかくのツレが寝ちゃったからね。あたし帰るから。それじゃあ、またね」


 てなわけで、爆睡中のカチュキを腕からひょいと担ぎ上げて、その場を退席するあたし。自分よりずっと背の高いカチュキを華奢なあたしが難なく持ち運んでる姿にみんなちょいと驚いてたみたいだけど、これくらい神なら造作もないってわけ。ま、本当は念力でふわ~っと浮かせたいんだけど、店の中じゃ目立っちゃうから仕方ないよね。はっはっはっは。


 店からの退出はあっさり終わった。テダー達の気配は、それ以降は全くなかった。


 ★★★


 翌日。


 目立たない格好で変装したあたしとカチュキは、イエローと合流してとある『旧ポプラ通り』と呼ばれる商店街にいた。橿西きょうせい地区にあるんだけど、カチュキがお縄に掛かる前から寂れてたシャッター街だ。


 平日すら人通りのない商店街の隅っこ。蜘蛛の巣の張った自販機と埃っぽいプラスチックのベンチだけが残る寂しい空間にて、あたしとカチュキとイエローだけがいる。


「は? 哲太が俺達に睡眠薬を盛った!? ヤクを売ってた!? そんな馬鹿な!」


「しーっ! 声がデカい! まだそうだって決まってねえよ!」


 テダーと飲んで早々爆睡しちまって記憶の無いカチュキにあの後の一部始終を聞かせたら、案の定騒がれちゃった。で、あたし達がやいのやいのやってる間、イエローはというとなんか分からん器具使って、あたしがパクった例の粉末を調べてる。なんでそんなもん持ってるかについては、興味ないけど詮索もしないでおく。


 しばらくした後、イエローはいつもの仮面みたいな無表情のまま口を開いた。


「これはクロですね。間違いなく『ERIS』だ」


「なんだよ、そのエリスってやつはよ。俺、そんなん聞いたことねえぞ」


「覚せい剤のような興奮作用アッパー系に分類される合法ドラッグの一種です。あっしも詳しいことは知りませんが、橿洲市に来た時に真っ先に知ったほど、この町の裏社会では有名な代物のようですよ」


 イエローの解説に、カチュキはショックを孕んだ深いため息をついた。


「マジかよ。哲太の野郎、マジでそんなもん持ち歩いてた奴とつるんでやがったのか」


「しかも、さっきも言ったけど、あたしがそれパクったのは奴からだ。つまりはそういうことさ。ただつるんでるとか、そんな生易しいもんじゃない」


「なんだよそれ。てことは、哲太はその組織じゃ幹部的な立ち位置だってのか? 哲太は医者なんだろ? 哲太の親父も医者なんだぞ!? そんな哲太が、どうしてそんな組織にいるんだよ。なんでそんなことになってんだよ!」


「あたしに向かって怒鳴っても分かんねえよ、バカタレが。また『ダーク・ストリーム』の連中に訊くしかねえんじゃねえのお?」


「ダーク・ストリーム……またわけわかんねえ組織の名前が出てきたな、おい。なあ家郎さんよ、そいつらについてはなんか知らねえのか?」


 カチュキが訊くと、イエローは首を縦に振った。


「あっしの知る限りでは、若者達で構成された犯罪組織のようです。最近の主な事業として、義龍聯合の代わりにERIS売買の外部委託アウトソーシングを担っていたようですね」


「ERIS売買の外部委託アウトソーシング? なんだそりゃ?」


「簡単に言えば、義龍聯合の代わりに、ダーク・ストリームがERISの売買をするってことです。ERISは義龍聯合が調達するから、実際に売るのはダーク・ストリームがやれ。っていう構図ですね。危険ドラッグの売買はヤクザ以外だと捕まった時の刑罰が軽くなるので、ヤクザ以外の組織に実際の売買をさせるっていうのはよくあるパターンなんですよ」


「ん? 待ってイエロー、となるとさ、義龍聯合が壊滅しちゃった今、ダーク・ストリームの連中は仕事くれる組織が無くなっちゃったんだから、同じく壊滅しちゃっててもおかしくないよね? なんで昨日、普通にいたんだろう」


 これってもしかして……あたしの口端が無意識に吊り上がっていく。


「もしかして、もしかすると、義龍聯合の壊滅はダーク・ストリームにとって逆に好都合なんじゃないかな? どうせ外部委託アウトソーシングったって、売り上げのほとんどを義龍聯合に持ってかれたりしてて、ダーク・ストリームは不満たらたらだったりするんじゃねえのお?


 となれば、連中のやりたいことは読めた。ダーク・ストリームは、これまで義龍聯合が担っていたERISの事業の全てを自分のものにするつもりなんだ。壊滅した義龍聯合の残党と下剋上を目論むダーク・ストリームとの間で、ERISの利権をかけた抗争が始まるんだよ!


 抗争が起これば何がいいって、カー業魔奴カルマナが増大する。どれだけの住民が苦しもうが傷付けられようが関係ない。最後に笑うのは、あたし達だけなんだよ。ふはっはっはっはっは!」


 カチュキは何も言わなかった。血の気の引いた顔のまま、呆然とこちらを見ているだけだった。


 こんな素晴らしい展開が予想できたのも、全てはクラブへ行ったおかげだ。やはり、遊びに行くって選択肢も悪くないってはっきり分かるもんだね。ふはっはっはっはっは。

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