これ暴いちゃまずかったかな?
復讐の鬼となる決意を固めたカチュキ。
そんな彼は今、大きな石を磨いている。
「いや、いつまでやってんのお?」
柄付きスポンジをバケツん中の水に浸して、カチュキは黙々と磨いている。その石には『森長家之墓』と刻まれてた。
この墓の香炉の手前は蓋のようになっていて、陶製の入れ物が三つ入ってる。そのうちのひとつは、カチュキ曰く『親父の骨』。で、残りふたつの中身は分かってる。カチュキのママと妹の遺骨だ。
カチュキの実家から帰った後、カチュキはおふくろと鈴音を埋葬したいと言い出した。もっと具体的に言うと、二人の遺体を焼いた後、遺骨を適当な壺に入れて墓の中に納めたいんだって。
入れる壺はすぐに見つかった。あたし達が奪った館には、それに適した大きさの壺がそれなりにあったからだ。せめて骨壺くらいは贅沢な想いをしてほしいと、カチュキも選定に積極的だった。
で、再びカチュキの実家へ。さっきまでいた警察連中は撤退したのか、現場には血だけが残ってた。幸いにも、まだ野次馬が出るほどの騒ぎにはなってなかったので、あたし達は早々に動いた。
理想的な眷属へと変貌していたカチュキは、もはや二人の死体と再開しても動じていなかった。その代わり、この家を焼かずに二人だけを屋内で火葬できないか、あたしに訊いてきた。いやはや、簡単すぎることをわざわざ聞いてくるなんてカチュキも可愛いよね、はっはっはっは。
かくして、母親と鈴音、二人の遺灰がそれぞれ入った骨壺が完成した。それらを持って、あたし達は今、お墓に来てるってわけ。
ちなみに、あたし達の服装は違う。カチュキだって、いつまでも返り血を浴びたままのスウェット姿でいるわけにはいかない。大切な家族の弔いだからと、館の中で見つけたフォーマルな喪服姿で身を固めている。
ちなみに、あたしも真っ黒なワンピースに着替えた。髪は縛らずロングに流し、ついでに黒いトークハットを被ってる。あたしは邪神の一族だからね。気品のある身なりも余裕ってわけ。カチュキも驚いてたよ。ふはっはっはっはっは。
で、自分の墓に着いたら結構荒れてたもんだから、納骨の後に二人で墓周りを綺麗にすることになった。無秩序に生えまくってた雑草を枯らすのはあたしがやったんだけど、墓石の清掃はカチュキが希望した。けど、やり始めたら熱が入っちゃって、今に至る。
終わったのは、カチュキが我に返った時。あたしを待たせてたことに気付いたカチュキは、一言「わりい」とだけ言った。最後に、館で見つけた線香に火を灯してカチュキは両手を合わせてお辞儀をする。
「花は後で持って来るから……。ここで安らかに眠っててくれ」
あたしも、カチュキの隣で手を合わせた。いや、邪神のあたしには他の次元の宗教沙汰に付き合う義理は無かったんだけど、なんというか、その場のノリでやった。
「で、どうすんの? このまま帰る?」
「いや、もう一つ行きたいところがある。ここと同じくらい大切な場所だ」
★★★
というわけで、カチュキの後に続いて到着したのは、別の墓。そこに刻まれたのは、
——『川島家之墓』
「……いや、誰のだよ」
「絵美だよ。川島絵美の墓。……やっべ。水が汚えままだった! 取っ替えてくっから待っててくれ!」
恋人の墓だと教えてくれた途端、カチュキはバケツの中身を変えてないのに気付いて、どっか行っちまった。全く、事前に確認しとけよ、バカタレが。
さて、ほったらかしにされてても暇なんで、あたしは絵美の墓とやらを観察する。
まず、カチュキのに比べて規模がデカい。石垣を積んで高く設けた位置に、あたしの背丈よりもずっと大きな墓石だけじゃなく、灯篭とか卒塔婆立とか戒名板とか色々なもんがワンセットで並んでる。しかも、それら全てが白っぽくてつるつるの高そうな石材で作られてる!
カチュキのなんか、似たような墓が雑多に並んでる場所の、とりわけ荒れた隅っこにあった粗末なもんだったぞ。同じ墓なのに、全然雰囲気違うじゃねえか。
「お待たせ」
なんて色々見ていると、カチュキが戻ってきた。わお、バケツん中の水がひったひたじゃん。どれだけ気合入れてんの? はっはっはっはっは。
「カチュキ、なんかあたしが手伝うことあるう? なんかこのお墓、草とか落ち葉とか無くて既に手入れとかされちゃってる感じなんだけど」
「じゃあ、特に手伝うことねえよ。終わるまで待っててくれねえか?」
答えるや否や、カチュキはあらかじめ水洗いしてた柄付きスポンジをバケツの水に浸し、絵美の眠る墓石を掃除し始めた。ここにある全てをカチュキ一人でやるつもりらしい。けど、ほったらかしにされるのも嫌なんで、ちょっと話題を振ってみるか。
「ねえ、カチュキ。カチュキは絵美とどうやって逢ったのお? ——皆まで言わないで。あたしは、カチュキの口から直接聞いてみたいんだ」
「話せば長くなるけど、一言で言うなら『偶然』さ。当時、絵美はメーカーの事務員で俺は処理業者の運転手。偶然出会っちまって、その後は気が付いたら意気投合って感じさ」
作業の手を緩めることなく、カチュキは話を続ける。
「俺と絵美は似てるところがあってさ。どっちも、家族とは上手くいってなかった。俺は、ウラウラは知ってるだろうが、問題起こして高校を中退した身だからよ、俺よりもずっとまともな人生を歩んでる妹に迷惑なんてかけたくなくて、家族とずっと距離取ってた。
絵美も一緒でさ。なんか、家のことで親からずっと悪く言われてたみたいで、家族の話とか全然したがらなかった。まあ、深くは詮索しなかったよ。家から疎まれたもん同士お互い生き抜いていこうぜ、みたいな気持ちだけで十分だったからな。で、気が付いたら一緒に住むくらいの仲になった」
「へえ、お似合いな上に熱々かよ。最高のカップルじゃねえか」
「ああ。ろくに金もねえ毎日だったけど、絵美との日々は本当に最高だったよ。それが……どうしてこんなことになっちまったんだろうな」
作業の手と声が重くなっていく。墓場に落ち葉がかさりと落ちる。メインの墓石が完了して灯篭に差し掛かったところで、空気が余計に重くなってしまった。
こいつはいかんな。これは、話題を振ったあたしの責任だ。ちょいと、別の提案をしよう。
「カチュキ、いい思い出話をありがとう。そのお礼になんだけどさ、ちょっと作業を中断してくれねえか?」
川島家之墓の敷地外にいたあたしも階段を上って墓石の前に立つ。隅の灯篭の所に立っていたカチュキに、あたしはバケツとか置いておくよう伝える。
「ウラウラ、何する気なんだ?」
「カチュキの墓と同じように、この墓の下にも絵美がいるんだろ? 今から絵美に会わしてやるよ」
「は? それってどういう――」
規模こそデカいが、基本的な構造はカチュキん家の墓と一緒だ。香炉の手前にある拝石は蓋のようになっていて、中は空洞の納骨堂になっている。だから、蓋の拝石と念力で退かすと、あったあった。白い入れ物みたいなのがあるじゃないのお。
「おいおいマジかよ。いくら会わせてやるからって、墓と骨壺暴くのはまずいだろ!」
あたしが念力で骨壺を空けようとするや否や、カチュキが血相を変えて止めようとしてきた。無論、あたしは真っ向からこれを念力で止めた。
「なんだ? バチが当たるからやめとけとでも言いてえのか? カチュキ、あんたは眷属のくせに、つくづくあたしがなんなのか忘れるよな。いいか? あたしは神なんだ。それも、悪の末裔たる邪神だぞ? たかが骨入ってる入れ物開けて何かしたくらいで文句を言われる筋合いはねえんだ。眷属は眷属らしく、文句言うくらいなら黙ってな」
あたしが叱ると、カチュキは「悪い。分かったよ」と素直に応じてくれた。
あたしが壺を開くと、中から白い粉末状の何かがさらさらさら~っと舞い上がった。絵美の遺灰だ。どんな生き物も死んで焼かれると、なんてことねえ灰になっちまう。命ってもんはほんとに儚いねえ。
改めて変わり果てた恋人の姿に呆然としたのか、あたしの言葉に素直に応じてくれてるのか、カチュキは何も言ってこなくなった。
「さて……、どんな亡骸でも『残留思念』ってのは少なからず残ってる。今から、絵美の遺灰からそれを読み込む。恐らく、死んだ瞬間の映像も残ってるだろう。カチュキ、あんたの恋人を殺し、あんたをハメた犯人の姿が分かるかもしれねえってわけだ。こいつは重要だぞ?」
カチュキから息を飲む音が聞こえた。そうだそうだ。重要な情報を得るためには、アース次元の常識から見りゃ有り得ねえことだって普通にしなきゃいけねえのが世の常ってもんだ。少しは理解してくれたかな?
というわけで、作業を進めるよ。遺灰を骸骨だった頃と同じ配置に変えて、魔力を注入すると――遺灰が緑色の炎に包まれ、かつての姿へと変貌した。輪郭こそ朧気だけど、誰だか分かれば十分だ。
「絵美だ……」
「カチュキ、一応断っておくけど、これはあくまで残留思念を読み取るために作った像に過ぎねえからな。別に蘇ったわけでも、霊が降りてきたわけでもねえ。そこは勘違いすんじゃねえぞお?」
あたしが補足すると、カチュキは黙って首を縦に振った。
さて、絵美に残った残留思念を読み込むとしよう。しかし、改めて絵美の姿を見ると、地味な顔と見せかけてかなり美人だな。この墓の時点でお察しだったけど、わりといいとこの子なんじゃねえのか? あと、体付きもあたしに近い。出るとこ出てるぞ。
読み方は、端から見ると相手の記憶を呼んでるときに近い。魔力を込めて光らした手を、目の前の像にかざしてるだけだ。でも、中身はよくわからん。アース次元の感覚で例えるなら、ダウンロードに時間がかかる上に、データを見るのに解析作業が要るって感じ。墓に入って何年も経ってるから、ちょっと骨が折れるぞこれ。
「お、だんだん分かってきたぞ。ふむふむ……、うーん」
断末魔の瞬間も見えてきた。お? これは? なんだ?
「あー、やっぱり、この瞬間は苦痛だから思い出したくねえのかな。むりやり消してあるっていうかなんというか――」
「——何やってんだ貴様ら!」
突然、怒鳴り声が聞こえてきたかと思いきや、何かがあたしにぶつかってきた。あたしはそのまま目の前の絵美の像に衝突。像は雲散霧消し、儀式は中断。遺骨が辺りに散らばった。
状況はすぐに理解できた。誰かがいきなりカチュキをぶん殴り、あたしにぶつかったんだ。
カチュキを殴り、あたしの儀式を中断させた不届き物はすぐ目の前にいた。
白髪交じりの短髪を七三分けにした中年だ。いや、顔のシミや皺の付き方から察するに、背筋とかがピンとしてるから若く見えるだけで、本当はもっと歳を取ってるかもしれない。
そいつもカチュキと同じような喪服を着ているんだが、なんか顔がすげえ怒っていた。だけどな、こっちはもっと怒ってんだ。
「てめえ。どこの誰だか知らねえが、あたしの儀式の邪魔するたあ、覚悟は出来てんだろうなあ!」
「よせやめろ、ウラウラ! この人に手を出すな!」
食ってかかろうとするあたしを横から止めてきたのは、殴られたカチュキだった。
「ウラウラ、この人は、絵美の父親だ」
「絵美の父親あ? つまり、殺されたあんたの恋人のパパってわけえ?」
カチュキに言われ、改めて目の前の乱入者を見る。なるほど、確かに目鼻立ちとか顔の輪郭とか、絵美の面影があるかもしれない。けど、そいつの顔をじっくり眺めている暇なんてなかった。
「貴様、なぜここにいる? 娘の命を奪った貴様が、どうして絵美の墓の前にいるんだ!? 私の娘を奪った挙句、娘の墓を暴くとは、どういう神経をしているんだ貴様らは!!」
絵美のパパは憤怒のままカチュキに掴みかかってきて——あたしの念力で吹っ飛ばされた。そりゃ、相手が誰であれ、眷属に暴力を振るうだなんてあたしが許すわけねえから。
「何をした貴様ぁ……!」
墓の外まで突き飛ばされてもなお、そいつの怒りは収まらず憤怒の形相であたし達を睨みつけている。
と、ここで今更ながら気付いたんだが、この墓に来てるの、パパだけじゃない。そいつの近くで、同じような怒りの感情が溢れ出して泣き崩れてるのは、恐らく絵美のママだ。で、その近くにいる若いのは絵美の兄弟か? 他にも何人かいて、恐らく親戚か何かだろう。
ははあ、状況が読めてきたぞ。こいつらも絵美の墓参りに来てたのか。
毎年の定例行事かなんか知らんけど、事件で殺された家族の墓参りに親族一同で行ったら、刑務所で死刑になってるはずの家族の敵(ということにされている)が墓にいて、そればかりか安らかに眠ってるはずの娘の墓を暴いていた。みたいに思われてるのか、あたし達。
てか、絵美の墓を暴いた時、カチュキですら動揺してたからな。あまつさえ、向こうはカチュキに娘を殺されたと未だ思ってる奴らだ。あたし達のやってることを見りゃ、そりゃカチュキ以上に心中穏やかでいられるわけねえわな。ふっはっはっは。
「私の娘を殺しておいて、勝手に娑婆に出てのうのうと生きてるなんてことは許さんぞ。警察でも捕まえられないというのなら、私が貴様を殺してやる!」
娘を殺した宿敵を目の前にして、立ち上がり拳をきつく握りしめる絵美のパパ。おお、また近付いても、謎の力で吹っ飛ばされると学習したんだろう。怒り狂ってはいるが、聡明だねえ。
けど、いつまでもカチュキが殺人者だと思われてるのも、カチュキにとっても良くないよね。ここは、親指でカチュキを指しながら説明してやらなきゃな。
「カチュキはあんたの娘を殺しちゃいねえ。あんたの娘を本当に殺したのは別の奴で、カチュキはハメられただけだ」
「そんなこと信じられるか! 奴は現行犯で捕まったんだぞ! 奴じゃなきゃ誰がやったと言うんだ!」
「カチュキの記憶を見た。あんたの娘を殺した記憶なんて無かった。だから、カチュキは殺してねえよ」
すると、絵美のパパは急に笑い出した。でもなんだろう。剣呑な空気が一切変わってなくて、
「笑わせるな! 記憶を見た!? ふざけるな! そんなこと信じられるか! いい加減なこと抜かしやがって。これ以上、俺達を侮辱するなら――」
かっちーん!
憤激する絵美のパパの顔を、あたしは蒼く光る手で強引に押さえつけた。
「信じられねえだあ……!? てめえ、儀式邪魔したばかりか、そういうこと言うたあ上等だ。なら、あんたの記憶も見てやるよ! あたしのライブ実況付きでな!」
ついでに結解を張り、誰もあたしの邪魔を出来ないようにして、さて、こいつの色んな記憶を見てやろう。
「なになに? 本名は、
「絵美の親父が、医者!? そんなん俺、聞いてねえぞ!」
カチュキから驚きの声。確かに、そんなエピソード、カチュキの記憶になかったような。
「結婚して、子供も娘と息子が生まれ、家族にも恵まれて……いや、そうでもねえみてえだ。こいつ、自分の子供達も医者にしてやろうと思ってたみてえだけど、上の娘はどうも出来がよろしくなくて、高校を卒業した後はどっかの町に勤めてしまったみてえだな。いやはや、自分は誇るべきエリートだってのに、娘はこいつにとって実に出来の悪いもんになっちまったわけだ。職場でのイメージも悪くなっちまってるねえ」
「おい、その娘って、まさか絵美のことか!?」
「そういえば、娘は何もんかに殺されちゃったんだよね。だから、ちょいと思ったみたいだね。自分の面子を汚したバカ娘が消えて清々したって。……あれ? そういえば、さっき殺されたって怒ってたのはなんでだろう。もしかして、あれ実は本気じゃなかったりして。ふっはっはっは」
絵美のパパ――宗平が顔を掴まれてもなお、手をばたばたさせている。もがいているようだが関係ないね。続けるよ。
「さて、今度は最近の記憶でも見てみるか。ん? 「危険ドラッグ『ERIS』に関する報告書」ぉ!? なんか、巷では『ERIS』とかいう危ないもんが流行ってて、それによる中毒症状を患ったのが最近こいつの勤めてる病院にたくさん来てるみたいだね。で、その実態についての報告書を、これから院長と市と警察にそれぞれ届けているってわけか。なるほど、こういうのを見ると、なかなか誠実な医者って感じするね。
あれ? でも、向こうは報告書を受け取らないで、なんだこれ、5000万円!!? すんげえ大金じゃん。黙ってるだけでこんな金もらえるだなんて、医者ってのはボロい商売だねえ。はっはっはっは。……それだけじゃないぞ。なんだこれ。写真が何枚か添付されてる。こいつと、誰だ? 奥さんじゃなさそうだけど、ずっと若い誰かだ。しかも、わーお! 二人とも裸だ。でも、あたしが鼻血を出すような事態にはならなさそう。だって、こいつの一部が向こうの中に入ってて見えないんだもん。そんなのが何枚も送られてる。いつの間に撮られたんだ? しかしこいつ、歳の割に繁殖意欲がお盛んだとは。エリートは違うなあ。ふはっはっはっはっは」
さてと、これくらいでいいだろう。あたしが記憶を見るのをやめると、かつての怒り狂った姿はどこへやら、川島宗平は蒼白しきった顔でその場に跪いていた。そして、他の家族親族一同も呆然としていた。
「あれ? なんか空気がまたおかしくなってね? これ暴いちゃまずかったかな? もし、これでもあたしの言ってることが信じられねえってんなら、他の奴の記憶も見てやるよ。そうだ、そこのあんた、絵美の母親だろ? こいつの記憶を見た時、出来の悪い娘に対してひたすら当たり散らしてるあんたが見えたんだが、あんたの記憶を見たらもっと面白いのが見れそうだな。はっはっはっはっは」
「もういいだろ、ウラウラ! ……みんな、これで分かってくれただろ? こいつは人間じゃない。人の記憶を見ることが出来る――本当の邪神なんだ。こいつの言う通り、俺は絵美を殺してなんかいない。絵美を殺したのは別の奴で、俺はハメられただけなんだ」
あたしを制止しながら、カチュキはあたしを紹介しつつ弁明した。
「俺は、絵美を殺した奴の敵を討つ。墓の前でそう誓ったんだ。だから、頼む。今は俺達を見逃してくれ。必ず、やり遂げてみせるから」
いちばん力のある奴が意気消沈したからか、はてまたあたしの力に恐れをなしたか、あるいはカチュキの誠実な姿勢に心を打たれたのか、最早あたし達に立ち向かおうとするのは誰もいなかった。
あたし達は去る。一応、絵美の遺骨は念力で一粒残らず全て骨壺に入れて納骨堂に戻してやったよ。遺灰とて、カチュキの大切な恋人。眷属の大事なもんくらいは、流石のあたしでもぞんざいに扱わないさ。ふはっはっはっはっは。
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