必死は大切です!
「あなたたち、本当にわからない人なのね。今すぐそのタバコの火を消しなさい!」
琴崎夕海のその言葉にヤンキーはもう反発した。
「ふざけんじゃねえ!」、「女は黙ってろ!」、「生徒会長の分際で!」、「先公の手先!」、「タバコはやめん!」、「制服はファッション!」、「命令は聞かねえ!」、「大人は信用しねえ!」、「大人に侵された奴は信頼しねえ!」、「しねえよ俺たちなんもしねえ!」、「というかお前らみんな死ねえ!!」
三人の男子高校生は猿のように喚き散らしていた。
これには琴崎夕海も困った表情をして後ずさりをした。
しかし琴崎夕海が後ずさりをしたのをきっかけに、男たち三人はどんどん琴崎夕海に接近して、絡んでいくようだった。
一人が琴崎夕海の眼鏡を外した。特徴的な、赤縁の眼鏡。
「おお? 眼鏡外したら意外と可愛い顔してるじゃねえか! 俺たちの女になったって良いんだぜ? 今から心を改めればな!」
「あ、改めなければいけないのはあなた達だわ……。わ、私の眼鏡を返しなさい!」
眼鏡を持っていた男は琴崎夕海の言葉が尺に触ったらしく、持っていた眼鏡を地面に叩きつけた。
ピキリ、とレンズにヒビが入った。
俺は我慢ならなかった。だから身体が勝手に動き出していた。
俺は琴崎の眼鏡を叩き割った男の顔面に思いっきり右ストレートをかました。
男は不意打ちに対応できずコンクリートに思いっきり体を打ちつけた。
「な、なんだ!?」と仲間の一人が動揺する。
「嘘だろ? 女じゃねえか!? しかも女子中学生くらいだぜ!???」ともう一方がさらに俺の姿を見て動揺する。
二人が動揺して足が止まっている間に俺はその二人に急接近して、ボディーに思いっきり蹴りを喰らわした。
一人は腹を抱えながら倒れた。
しかしもうひとりの方は腹を抑えながらも倒れなかった。
「い、痛えじゃねえか!」
その男はよく見てみればかなりの大柄だった。俺の身長が小さくなっているのもあるがそんなの関係ない。
恐らく180cmくらいだろうか。
俺は少女の姿になったが力はそのままだ。しかし、こんな大柄の男とやるとなると流石に分が悪い。
男は俺の手をがっしりと掴んできた。
離そうと思っても離れない。斉藤の力なんて比ではないくらいの力で、俺の腕は完璧に固定されてしまった。
「ははあ、お嬢ちゃん。最初の威勢はどこへ行ったのかな?」
ヤンキーのムカつくセリフ。しかし俺は逃げられない。
ヤンキーは俺の体を自分の方に引き寄せようとして、俺の手を引っ張ってきた。
俺は必死に抵抗するが、とんでもない怪力でぐいぐいと引っ張られていく。
抵抗すればするほど肩の関節が外れそうになる。指も掴まれ、指は今にも抜けそうだ。
カーン、カ、カ、カ……。
地面に何かが落ちて転がる音がした。
手を引っ張られたと同時に指輪も引っ張られ、俺のつけていた指輪が地面に落ちたのだ。
その瞬間、周囲は光に包まれた。
!?
俺は男に戻っていた。服装は前回と同じく魔法少女の格好のままで。
流石に大柄の男もこれには酷く動揺して硬直していた。
チャンスだ!!!!!
俺は男のがら空きの顎に狙いを定める。
「喰らえぇぇぇぇええええええぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」
俺の拳は龍のように天を登り、180cmの男の顎に到達する。
魂を込めて放った渾身のアッパーは男の顎にジャストミートした。
ズシーン、と地面に男が叩きつけられた音。
男は泡を吹きながら倒れていた。
「え、新城くん?」
琴崎先輩が困惑気味に俺に聞いてくる。
「説明は後です! 逃げましょう!!!」
俺は指輪と、割られた赤縁眼鏡を拾って、琴崎先輩の方に近づいていった。
琴崎先輩は俺を見ながらぽか~んと突っ立っていた。
「だから! 早く逃げましょう! 起き上がってこられたら面倒ですから!!!」
俺は琴崎先輩の腕を掴んで一目散に走り出した。
自発的に女の人の手を握ったのは記憶の中ではこれがはじめての経験だった。
しかし、そんなことは関係ない。
俺は必死になって琴崎先輩を引っ張りながら全力で走った。
ヤンキー三人組はまだ倒れている。
とにかく身を隠せる場所を探して必死に走った。
必死に、必死に……。
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