生徒会長が用があるみたいなのです!
家から出て近所をうろうろしてみる。
天気は驚くほど晴れ晴れしく、太陽の光が目に差し込んできて痛いくらいだった。
魔法少女風の派手な格好が明るい光に照らされて痛々しいほどに目立っている気がするが、周りは少女の正体が俺だと気づいていないから別になんとも思ってなさそうだ。
家から二番目に近いコンビニを通り過ぎる。住宅街の路地を抜けて行く。
すると、前方から何やら馴染み深い声が聞こえてきた。
「新城の奴、なんで電話切りやがったんだろうな」
「よっぽど僕たちのことが嫌いなんじゃないですかねぇ? どうですか? わたくし辻内の名推理! 当たりましたか!?」
「そんなものわかるわけねえだろ! 俺がその答えを知ってたら苦労はしねえんだよ」
斉藤と辻内だ。
俺はばれないように、ゆっくりと慎重に二人を尾行してみる。
電信柱などに隠れながら尾行して(変身して小柄になってるおかげであんまりはみ出さない)二百メートルくらいを歩いた頃に二人は立ち止まった。
立ち止まった先には赤縁眼鏡の女子高生がいた。あんまり見慣れない顔だから同級生ではないけど、俺たちの学校の制服を着ている。
斉藤と辻内と、制服の女子高生は三人で会話し始めた。
ゴールデンウィークに制服を着ているような人種がなんで斉藤と辻内なんかと関わってるんだ?
それが気になるので俺は会話の内容が聞こえるギリギリくらいまでその三人に接近することを試みた。
斉藤はその女子高生には頭が上がらないようで「例の新城くんは来ていないのね?」と赤縁眼鏡の女子高生に問われると「すみません、ちゃんと電話してみたんですけど……」と口ごもった。
「はあぁ……」女子高生は深くため息をした。
「なんで新太郎がいないと駄目なんですか? 僕たちをこき使ってくれてもいいんですよ。労働量なら新太郎には負けませんよ。というかあいつは怠け者のクズ野郎ですよ。そんな奴に何の用があるんですか? 用があるんだったらやめろと命令口調では言えないですけど、あんまり推奨できないですよ。本当にあいつに会ったってメリットないですから。あいつは結構変態的なとこもありましてね、周りの女子たちには勘付かれないんですけど、僕たちなんかよりもずっと変態的な異常性癖を持ち合わせてる人間ですし、貴方みたいに綺麗な方がわざわざ会いたがるような輩じゃないですよ。そう思うでしょう、斉藤?」
「ああ、辻内の意見はごもっともだ」
まさか電信柱を一つ隔てた向こう側に俺が居るなど思いもしない想像力のない斉藤と辻内は、俺の近くで俺に対して勝手なことを言ってやがる。
「ねえ、新城くんを悪く言うのはもうやめてくれないかな? 私は新城くんにお会いしたいと思ったからこそあなた達みたいな学校中で変な噂が流れている輩に声をかけたのよ。私のその勇気を察してくれないの? 言っておくけど私にとって新城くんは命の恩人なの!」
「命の恩人!?」斉藤はその語感に驚き、
「あいつがですか!?」辻内は俺が彼女の命の恩人だと言うことに驚いているらしかった。
しかしこの場合は辻内のリアクションが正しい気がするぞ。
俺は彼女を助けた覚えはないし、なんで彼女が俺に会いたがっているのか理解できないのだ。
「新城くんが来ないって言うなら私はもう帰るわよ」
「ま、待ってください!!」
辻内悲痛の叫び。
「僕らだって忙しい中時間を削ってここに来たんですよ。それなのにすぐに帰るなんて酷いですよ夕海さん! 僕らと少しでも遊んでってくださいよ」
「え、そんなの嫌よ。あなた達と意味もなくつるむことを地獄って言うんじゃなかったっけ?」
辻内も中々好かれていないようで可哀想な奴だ。しかしその女に俺は命の恩人だと思われているらしい。
そういえば、さっき辻内は彼女のことをユウミと呼んだな。 ユウミ?
「ユウミ 赤縁眼鏡」という検索ワードを脳内の検索エンジンを起動させて考えてみる。
それが俺の脳内検索ページの一番最初に出てきた人物だ。
そして彼女は俺のことを命の恩人だと言った。俺にはその記憶がない。
生徒会長が俺になんの用があるんだ?
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