第3話 時雨のときその1

梅雨に入ると傘があちこちで開いて、上から見たらさぞ面白い景色になるだろうなと、景宗は思っていた。

身長が高校2年生で190ある。かといって、別にスポーツをする訳でもない。人よりも目線がだいぶ上だから、見える景色も異なっていて、この日は駅前の繁華街の一角でそんなふうに思っていた。景宗は駅の近くの高層マンションの上の方に住んでいたので、帰ってからその景色を見てやろうと心に決めた。

この男、身長も高いが、高いところが好きなのである。バカと煙は高いところが好きとも言うが……。

駅から田舎の方へ特急電車に乗っていく。20分もすれば景宗の通っている高校に着く。

しかし、まあ雨の日は俺も嫌いだなと思う。傘が小さいのだ。いつも足元が濡れている。今日も土砂降りとまではいかないが、割かし大きな雨粒が、ととと、と音を立てて地表に降り注いでいる。

景宗は駅から5分で着く学校に向かおうとした。しかし、そこから土砂降りになり始め、気分が憂鬱になって駅の近くの喫茶店に入った。

「こんな日くらい学校をサボっても罰は当たるまい」

そんなことを独りごちて、カフェの扉を開ける。

「お、景宗じゃん!」

快活な声が響く。景宗は驚いた。同じクラスのギャル系女子がもう既にテーブルに着いていたのだ。

景宗は正直こいつとは関わりたくないなと思った。

というのも景宗は授業中に関してはとても優等生であり、騒ぎ立てられると腹が立つ性格なのだがこの女子・小百合はまあうるさい。いつも金髪のツインテールがゆらゆらしている。そして、隣の席の女子といつも騒ぎ立てては授業妨害をしているのだ。

景宗にとって小百合は厄介な存在としか思ってなかった。


景宗が、遠く離れた席に座ろうとすると小百合も席を移動して景宗の向かいにやってきた。スマホを手に持ち器用な指使いでメッセージを送ってるようだった。

「てゆーか、景宗、学校サボりなーん? 超ウケるんですけど」

カチンときたが、まあその通りなのだ。

「何が面白いんだよ。お前もサボりだろ。人のことは言えないだろ」


景宗はムッとしてそういうと、小百合は

「えへへーそうなんだー。うちもサボり。もう雨なんて最悪〜」

そう言って、スマホをカバンにしまっている。

「景宗何飲むの? 店員さーん、こっち来てー」

景宗は内心呆れ返っていた。こいつには罪の意識がないんだな。全く罰当たりめ、と自分のことは棚に上げてそう思っていた。

店員さんがやってきて、景宗はアイスティーをくださいと頼んだ。私はオレンジジュースでと小百合は言う。

「店員さんには敬語使えよ」

景宗はむっとしながら窓の方を見てそう言う。雨はやまない。



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