第5話 4日目、初めてのポーション練成
この日、朝食後カモンは城の庭へ出てきていた。
そこで城抱えの上級庭師バイトと雑談を交わしていた。
「へぇ、カモンさんは生活魔法を5種類とも使えるのですか」
「そうなんだけどね・・・どうにも僕は才能が無いみたいで魔石の消費量が多いんですよ」
「それでも凄いですよ、自分は火の生活魔法が苦手で・・・」
そう言いながらバイトは庭に生えている木々へ水を生活魔法で撒いていく。
水の生活魔法を風の生活魔法で飛ばしているように見えたのだが空中で上手く飛散して均等に降りかかる水分に気付いた。
「これは生活魔法なのですか?」
「あはは、いえこれは庭師のスキルなのですよ」
そう言って答えを返すカモン、そしてその手に着けられた指輪が少しだけ光っているのに気が付いた。
そして、水が降りかかった部分の花が元気を取り戻して天に向かって咲き誇る光景に驚きを見せる。
「凄いですね、これが庭師のスキルの効果・・・」
「まぁ戦争には全く役に立たない能力ですけどね」
そう言いながら遠い目をするバイト、過去に彼にも色々あったのだろう。
しかし、カモンがジッと見ていたのは輝きを見せる指輪であった。
明るい外にいる事から眩しすぎず、その指輪に描かれている模様が見えたのだ。
そこに描かれていたのは円の中に幾つかの図形。
その図形の沢山在る模様の中の一部が光を放っていたのだ。
そして、その光る中の2つの図形にカモンは気付いた。
「その指輪は?」
「えっ?あぁこれですか?庭師って職業のスキルを使うのに必要な魔道具なんですよ」
「へぇ・・・」
そう聞いてカモンは錬金術師の師匠であるカオルの言葉を思い出していた。
『これが水の練成陣、魔石の魔力を使って空気を水に練成しているって考えれば錬金術師なら使える筈だ』
それを思い出してカモンは再び質問をする・・・
「すみませんバイトさん、ちょっと基礎を学んでいる最中で水の生活魔法に苦戦してまして・・・見本見せてもらえませんか?」
「えっ?生活魔法の水魔法ですか?・・・まぁいいですけど・・・」
そう言ってバイトは水蒔きを一段落した段階で手を止めて人差し指を立てて小さく何かを呟く。
すると指先からチョロチョロっと水が出現し地面へと落ちる。
「やっぱり・・・」
「えっ?」
「いえ、ありがとうございます!」
「なんだか分かりませんが力になれたのでしたら良かったです」
「はい!」
バイトと別れ自室へ向かって歩いている最中カモンは頭の中でさっきの事を思い出していた。
生活魔法の水魔法を発動させた時のバイトの指輪は同じ様に小さく光っていた。
そして、その中の魔法陣の様な物が光っていたのだが問題はその中身であった。
円の中の模様の中で生活魔法の水魔法を使用していた時に光っていた部分だけを抜き出すとカオルから渡された水魔法の練成陣と全く一緒だったのだ。
そこから導き出された解答にカモンはゾクゾクッと背筋に寒気を感じた。
「もしかしたら・・・」
そう口にして自室のドアを開いた時であった。
突然背中を蹴られ部屋の中へ顔面から突っ込む。
「このボケェ!一体何処へ行ってたんだ?!」
「おわっ?!」
後ろに立っていたのは怒りを露にした錬金術の師匠カオルであった。
何度も背中を蹴られ咄嗟に受身を取れるようになり始めていたのでそのまま前に前転して勢いを利用して立ち上がる。
「師匠!僕分かりましたよ!」
「あん?背中を蹴られるのに快感を感じているって分かったのか?」
「いやいやいやいや」
相変わらずのジト目を向けるカオルは緑の髪をポリポリと掻きながら部屋の中へ入ってくる。
いつも通りのダルそうなその顔を見下ろしながらカモンは薬草を3枚と多めの魔石、そしてポーションの練成陣を用意した。
「んで昨日出来なかった事が今日出来るようになったって言いたいわけか?」
「まぁ見ていてください」
そう言ってカモンが更に用意したのは水差しと共に部屋に置かれていたコップであった。
それを練成陣の隅に置いてその上で薬草3枚を手で握り締めて目を閉じる。
(イメージするんだ・・・師匠の出したポーション・・・今の俺なら出来る筈・・・)
そう考え練成陣の中央に置かれた多めの魔石を使って練成を行なう・・・
3枚の薬草とポーションが等価だと意識してそれを作り変えるイメージを組み上げていく・・・
「いける・・・練成!」
「なにっ?!」
その瞬間練成陣が光りカモンの手の中から薬草3枚が消失した。
そして、握り締めていた拳から青みが掛かった液体がポタポタポタポタッと下に置かれたコップの中へ注がれていく・・・
光が消失し練成陣の中央に置かれた魔石が全て砂に変わったと同時に液体の落下は納まりカモンは肩で息をする。
「はぁ・・・はぁ・・・やりましたよ師匠!」
「なんだ・・・これは・・・」
練成に使用した魔石の量、薬草が瓶に入った常態ではなく液体のポーションに変化した事実・・・
そのどちらもがカオルの常識をぶち壊していた。
しかし、カモンにとってはこれが常識であった。
薬草を粉末状になるまで分解し、そこから成分を抽出して液体化する。
それがカモンの想像した練成結果であった。
「どうですか!」
「あ・・・あぁ・・・これは・・・」
そう言ってコップ内の液体をカオルは顔に近づけ人差し指を浸す。
そして引き抜いた指を見て驚きに開いていた目がジト目に変化すると同時に・・・
「ただの青い水じゃねぇかこのボケェ!」
一瞬で背後に回られて背中を蹴られるのであった。
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