第4話 達成感

「あの、何かあったら言って下さい。僕、家事なら大抵のことはできますから」

「……ほんとに頼っていいのね」


先輩の唇から小さく呟かれた言葉が嬉しかった。適当な慰めだとは思われなかったんだ。

それもきっと、今までお弁当を作ってきた信用なのだろう。


「じゃあ私、もう行くね。何かあったらちゃんと報告するから」

「はい」


美しい黒髪をなびかせ、しっかり落ち着いた足取りで先輩は迷いなく準備室を出た。

……それにしてもお姉さん、意識不明の重傷か。





殺すつもりで線路に突き飛ばしたのにな。






「とりあえず胃に優しくて栄養もちゃんとあるレシピでも考えよ。しばらくは先輩の家にお姉さんはいないし、まずはご飯に困るはずだよね」


そんな独り言を言いながらお弁当を片付ける。

別に僕が遅刻したのはお弁当作りに熱中しすぎたからでもなく、電車を乗り過ごしたからでもない。

先輩のお姉さんが利用する駅で待ち伏せして、お姉さんをホームから線路へ突き飛ばしてから登校したんだ。

それが遅刻の本当の理由。まぁ乗り過ごしたというよりは寄り道なんだけど。


「これからは掃除や洗濯もさせてくれるといいなぁ」


お姉さんが入院したら生活に困るよね。そしたらご飯だけでなく色々とお世話しちゃおう。

もちろんクオリティを高めて、僕なしでは生きられないという位に。

きっと先輩はどんどん綺麗になる。

そんな先輩を想像して、僕の心は満たされつつあった。








END

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女王様と召使い kio @kio___

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