後編 時計の音

警察が到着し、鑑識が入る。

それぞれが、警察に事情を説明する。

白岩は


「俺は、みんなが和真を発見するとき自分の部屋でギターをしていた。

それまでもずっとギターを弾いていたよ。

てか、ここ電波状況悪いぜ。メシの時間がいつかは聞きに行った。帰ってきたすぐな。」


香山さんは


「私は田辺君を見つける少し前まで筋トレをしていました。佐々田君に聞けば分かると思いますけど。筋トレをする前は荷物整理をしていました。買い出しに車で山を降りました。

一人で降りて、コンビニでおにぎりを4つ買いました。」


香山さんはレシートを出した。

北嶋さんは


「私が最初に田辺さんの異変に気づいて、佐々田さんの部屋を訪ねたんです。

佐々田さんは本を読んでいました。

私は運転の疲れで、佐々田さんに本を貸した後、寝てしまいました。

そのあと、別の巻を借りに、佐々田さんが来たときに起きました。」


そして僕は


「部屋に入ってから、北嶋さんに本を借りて読んでいました。そして、読み終えたのが、午後5時くらいです。そこからすぐに北嶋さんに借りにいきました。

北嶋さんは本当に寝ていたと思いますよ。

起きたとはいえ意識が朦朧としていましたから。」


警察官はそれぞれの話を聞き、困っていた。

何故なら自室で誰がどのようなことをしていたのか、確実にはわからなかった。

鑑識の人がきて


「死亡推定時刻は、今から2時間前の午後5時です。死因は鈍器による頭の殴打と考えられます。」


警察官が頷くと、鑑識は続けて


「みなさんの持ち物検査をしたところ

白岩さんはエフェクトボード。

香山さんは2つのダンベル。

北嶋さんは3冊の本。

佐々田さんは1冊の本。

これらのどれかが凶器の疑いがあります。

被害者から出血はしていないので、検察が確定出来るのは以上となります。」


警察官はまた頭を悩ませた。

確定出来る鈍器がわからないからである。

警察官は


「とりあえず香山さんのレシートには購入時間が午後4時50分と書いてあることから、可能性は少ないでしょう。

あとの3人の正確な時間がわかれば良いんだけどな。」


下を向いていた北嶋さんが思い出したように顔を上げた


「そういえば、白岩さん。

ずっとギター弾いていました?

途中から聞こえなくなったのですが…」


白岩は


「そのときはアンプに繋がず練習していたん」


そこで僕が割り込んだ


「確かに隣の部屋でしたけど、なにも聞こえなくなりましたね。

何をしていたんです?」


白岩は


「はぁ?何言ってんだ?アンプに繋げなければ聞こえないよ。」


僕は


「しっかり聞こえますよ。

実験してみます?

警察の方、実験しても構わないでしょうか?」


警察官は


「あぁ、重要な手がかりになる。」


実験してもしっかりと聞こえた。

ヘビメタなんか弾いたら尚更だ。

白岩は焦って


「俺はやってねえ。

誰かが俺を犯人に仕立て上げたんだ。」


僕はここでもう一つ


「そういえば、リビングに監視カメラがあります。見てみますよね。

管理室はもっと山奥にあります。」


警察官は僕を睨み


「それを早く言わんか。」


と怒っていた。

僕は山奥の管理室まで案内をした。30分歩き、管理室についた。

僕は鍵のない管理室に入り、監視カメラの映像を流した。午後4時30分からながすと、5分後、白岩がギターとエフェクトボードを持って二階に上がり、部屋に入った。


3分後白岩が部屋から出てきた。


警察はその場で白岩を逮捕した。

動機も少し無理矢理だが、散歩のとき服を汚されたとして、逮捕された。



少しして和真の葬儀が行われた。

僕はあの和真の知らなかった花を手向けた。

自然の物は手に入らなかったため、温室栽培の花を買った。

『ウシノダグサ』だ。

花言葉は真実だ。



暫くして、白岩は有罪判決を受けたらしい。


和真に監視カメラをつけさせていて本当に良かった。犯人を捕まえさせることができたのだから。

この事件は終わった。やはりアニメや漫画のように上手くはいかないのかもしれない。上手くいってく欲しくない。



今まで起こしてきた事件の中でも一番簡単だった。

白岩の死刑判決を聞いたとき、僕はなんとも言えない幸福感を得た。


他人の不幸は蜜の味




今まで、多くの蜜の味を経験したが、ここまで後味の悪いものはない。

ただ、この味にも興味はあった。



それからしばらく、僕は普通の暮らしをしている。警察には何も匂わせず。

収入源も回復をした。

それにしても警察は気づかないのだろうか。

僕の策略にそのまま引っ掛かっていることに。


警察はこのままで良いのだろうか?






このまま僕を世に話したままで良いのだろうか?






この大量殺人鬼の僕を



アハハ、本当に清清しい。

僕は2人殺したのだ。

なのに普通の生活を続けている。

怯えることなく朝を迎え、コーヒーを飲む。

買い物に行き、食べ物や本を買う。

仕事をして、報酬を貰う。

そして、心地よい夜を過ごす。

誰に追われることもなく、僕には霊感がないから化けて出てきてもわからない。


真犯人は僕だ。


僕が殺した。


しかし、誰も気づかない。

白岩は最後まで容疑を否認していたが、当たり前だ。僕が犯人だ。


最初は証拠を残さず、迷宮入りにしていた事件が多かったが、今は罪を他人に擦り付けている。


僕はもう、後戻りは出来ない。



後戻りなんてしたくはない。



これが、この事件の真実。

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