phase5「宇宙人だから」
見開かれた眼差しは鋭い。口角は上がっておらず、真っ直ぐに閉じられている。彼の顔を見て、それを笑顔と呼ぶ者は、この世に誰一人とていないだろう。
体が凍える。それも、これ以上ここにいてはいけないという危険な寒さだ。今すぐ逃げたい、逃げなければいけない。わかっているのに、足が動かない。釘を打たれ、
だが、その気持ちを相手に悟らせるわけにはいかなかった。未來は唇を噛んだ。
「私は、何か変なことを言った? 普通のことしか言ってないよ」
「わからない、か。まあそれでいい。わかってもらおうなんて考えてないしな」
低い声音が、地面を這っていく。マーキュリーは、片手で木に突き立てた槍を力任せに引き抜いた。とんとんと、柄で肩の部分を叩きながら、顎を引く。
「が、発言に責任を持つということを、覚えたほうがいい。……訂正する気が無いってんなら」
空気の流れが、停止される。何かが来る、と、未來は足に力を入れた。
「せいぜい、後悔することだ」
氷塊のような言葉が飛んできたとき、立っている場所が、揺れ始めた。何か巨大なものが地中を蠢く音が響いてきた。
込めていた力を放って、無我夢中でその場から跳ぶ。
跳んだときも、今し方自分が立っていた場所から、巨大な尖った何かが土を破って現れたときも、頭の中が真っ白になっていた。
「え……?」
茶色く、尖ったそれは、鞭のように先端をしならせ、根元にいくほど頑丈そうな見た目となっている。その物体と繋がっているもの。視線で辿ったとき、その目を疑った。
空き地の真ん中に一本だけ生えている木。その木の根元が、ぼこぼこと、まるでその下で何かが潜んでいるような動きを見せている。明らかに、自然的なものではない動きだった。
更に、木の幹に、決定的な異変が起こっていた。幹の中央に、先程は無かった、大きなうろが出来ていた。その奥に、人工的に赤く光る、大きな目が一つあったのだ。
先程、地面から突き出てきたもの。それが、木の根だということに、未來は今ようやく気づいた。
「後悔。か……」
漂ってくる風からして、今機械となった目の前の木は、かなりの強敵と見えた。美月も穹も、近くにいない。これを一人で相手になど、勝ち目はあまりにも薄いと直感した。
「じゃあ、私がこれを倒したら、訂正しなくてもいいってことだね?」
ふいにマーキュリーが、槍で肩を叩かなくなった。見開いていた目がわずかに閉じられる。
「……だったら、やってみろ。体力削り役のステータスで、出来るものならな」
もはやもうこれ以上言いたいことはないとばかりに、マーキュリーは身を翻し、軽やかな動きでこの場から去って行く。
こちらこそ聞く耳を持たないという意思表示のため、見送らずに変身を行った。光が散り、着ていた服が替わった直後、風が吹き、白いマントがはためいた。鞘から刀を抜き、構える。
後悔など、もう充分にしている。
首飾りを放り投げなければよかったこと。
さっき、怒りに身を任せなければよかったこと。
両親から首飾りの入った箱を渡されたとき、蓋を開けなければよかったこと。
ずっと地球人の振りをして生き続けてきたこと。
地球人として生まれてこなかったこと。
もう既に、味わい尽くしている。
柄を持つ両手に、力を込める。息を吐き出すと同時に、未來は駆けだした。
同時に、再び地面が揺れ出す。正確には、自分の立っている場所を中心にして、揺れている。
揺れが大きくなった直後、未來は横方向にジャンプした。同時に、先程いた場所から、木の根が飛び出した。両手に握った刀で、褐色の根に狙いを定める。棒を振るように、渾身の力を混め、その根を横へと切り裂く。
しなやかに動く先端を狙ったからか、覚悟していたよりも根は堅くなく、簡単に真っ二つになった。だがそのことに安堵できたのは、一瞬にも満たなかった。斬った直後その断面から、腕を伸ばすみたいに、根が再生されたのだ。
背後から影がかかる。体を反転させながら、刀を構え直す。二本目の根が、未来に向かって、鞭を打つようにその身を動かしてきた。振り返りざま横切りを加え、飛び退きながら距離を取る。
一撃を入れたその根も、やはり次見た時には傷を治していた。二本とも、うねうねと動きながら、隠れるように土の中に戻っていった。
さっきまでただの木だったということは、忘れなければいけない。思わず吸うばかりになりそうな肺をなんとか鎮めようと、ゆっくり息を吐く。
根は無駄と、直感が告げていた。狙うは本体である幹だと。
自分に湧いた考えに賛同するつもりで、未來は頷いた。前方を見据え、背を屈め、一気に大地を蹴る。
木の幹を、うろの中の赤い目を、目標と定め、駆け抜ける。むろん、そのまま真っ直ぐ向かわせてくれるわけなく、すぐに地面が震動を起こした。
そのタイミングで、未來は大地を踏み、上へと飛び上がった。土の中から現れる木の根は長い姿形をしているが、ジャンプした未來には届かなかった。
眼下にある根を一瞬だけ見やり、うろの奥に隠れる赤い目と目を合わせる。あそこにまずは一撃をと、コスモパッドとブローチを重ね合わせる。刀身に、赤い光が集まっていく。光線を、木の幹に向かって放とうとした途端。
がくんと、宙を跳んでいた体が停止した。足の先を、強い力で引っ張られているかのような。抱く違和感のままにそちらにやった目を、大きく見開いた。
根の場所は、変わっていない。今自分がいる場所よりも、下に位置したままだ。
が、その先端や、側面の部分から、細い糸のようなものが幾重にも伸びていた。それは絡まり合いながら、自分の片足と結ばれていた。
次の瞬間には、絡まった根に導かれるまま、自分の体がどんどん降下していっていた。
地面が近づく。大地が近づいてくる。土から顔を出す根へと近づいていく。脳内中に危険信号が鳴り渡る。
未來は力一杯、手にしていた刀を振った。灯っていた赤い閃光は、三日月の形をしながら、未來の足を縛る細い根達の底部を通り過ぎていった。
瞬間、根はばらばらに散った。支えを失った未來は、宙に投げ出された。途中で受け身を取り、間一髪のところ、両足で着地する。
心臓が強く収縮を繰り返している。何度か息を吐き出しても、しばらく治まらなかった。
日差しが照りつけてくる。なのに掻く汗は冷たい。それに気づかないふりをしながら、未來は攻め方を変えなければと頭を巡らせ始めた。
わずかの時間目を閉じ、開いた瞬間に足を踏み出す。今度はとにかく真っ直ぐに向かい、根は全部避けていこうと決めた。
足で踏んだ箇所が、大きく揺れる。揺れを足で感じ、その場所からすんでのところで避ける。紙一重だが、避けられなくはない。手応えが見え、未來は少しだけ息を吸い込んだ。
だが、木のロボットのほうも、そのまま未來の接近を許しているわけではなかった。未來が今いる場所で無く、進行方向にも、根を張りだしてくるようになった。
根を避けた先のすぐ前方で、壁のように別の根が現れる。その茶色い壁に対し、未來は跳び上がり、先端部分を斬り捨てつつ、出てきた根の向こう側に着地した。
一つ一つ対応していけば大丈夫。落ち着けと心の中で連呼しながら、足を止めずに駆け続ける。
進む先、避けた先で根はどんどん下から生えてくる。うろの中の瞳がぎょろぎょろと動き、未来の姿をしつこく追いかける。その目線や、根を避け、時にはジャンプをしつつ斬ったりしながら、風と共に進んでいく。
気がつけば、距離があると思っていた幹は、すぐ近くまで迫っていた。
次の斬撃で届くという確信が現れ、頭の中の中央に座する。
足に力を注ぐ。その力を放った瞬間、未來の体は空を飛んでいた。
目の前に、どんどん木の幹が近づいてくる。有機物から無機物へと変えられてしまい、人と戦うための存在になってしまった樹木が、眼前に迫る。
刀を強く握りしめる。柄を握る手に体の持つ全ての力を集中させる、そのイメージを行う。刃を縦にする。
目の前を漂う風と一緒に、目の前のその茶色い身体に、赤い刀身を振り下ろした。
恐ろしく堅い音が、耳に届く。恐ろしく堅い感触が、手を通って体中に響いてくる。
自分は、岩に斬りかかったのではないか。
そう錯覚してしまう程、木は堅かった。全力を嘲り笑うように、樹皮は全く刃を受け入れていなかった。一ミリたりとも、沈んでいない。
ぼこ、と、少しだけ出っ張った何かが、刀身を軽く受け止めたすぐ上の樹皮に現れた。
嫌な予感が全身を通り去って行った。そういう空気を運んできたから、すぐにわかった。
後ろに引こうとして、寸前で横に逸れる判断を取る。それが間違いでなかったと知るのは、そのすぐ後だった。
出っ張った何かが、物凄い速度で真っ直ぐ伸びていったのだ。伸びていく際の風をすぐ傍で感じた未來は、その何かが、どうやら枝らしいということに気づいた。
しかし少なくとも、普通の木が持つような枝ではなかった。それにしては、あまりにも暴力的すぎる。
着地をした矢先、ふらりと体が傾いた。思わず地面に片手をついた、その直後のこと。
背後から気配が生まれた。背後だけでなく、右にも、左にも感じる。そして前方にも現れたとき、気配の正体がわかった。
幾多もの、細い木の根だった。先程足に絡まった、糸のような根が、数え切れないほどの量で、自分よりも遙かに高い身長で、凄まじいスピードで襲いかかってくる。
前に構えた刀の刃を、横にする。根と体が一瞬触れた刹那、一気にコマのように自分の体を回した。回転しつつ飛び上がる。根は回転の風に阻まれ、全て未來の届くことなく、本体と斬り離され、地面へと落下していった。
少し離れた場所に着地したとき、切れる息とふらつく足を誤魔化すことはできなかった。溜め動作無しに一気に回転斬りしたのは、想定していた以上に体力を消費した。
自分の荒い息が、頭の中で反響する。力の入らない足に、またもや危険信号が鳴り響く。これ以上は無理だという意味を持つ信号だ。一人では、どうやっても切り抜けられない。暑いが、冷や汗が止まらなかった。
未來はインカムに手をやった。オンにし、美月と穹のコスモパッドに通信を送る操作を行う。その瞬間、手が凍り付いた。
全て自分の行いの結果なのでは。インカムに手を伸ばしたまま、そんな声が聞こえてきた。声の主は、他ならぬ未來自身のものだった。
地面が震える。未來は後ろに大きく飛び跳ねながら、距離を取った。その着地が失敗し、がくんと大きく体が傾く。駄目だとわかっていながら、未來はつい、聞こえてくる自分の声を聞いてしまっていた。
敵と一人ではち合わせてしまったのも、仲間を呼ぶ隙があったにも関わらずしなかったのも、それによって今ピンチに陥りかけているのも、全て自分が招いた結果。
自業自得だと、現場を見た全ての人間は口を揃えることだろう。だらりと、インカムから手が落ちる。
何の関係も無い美月や穹を巻き込んでいいなど、一体誰が言えるだろうか。誰も言わない。未來だって言いたくない。
結局、通話は行えなかった。繋がったとしても、言えなかっただろう。助けが欲しい、などと口にする権利が存在しないのに。
未來は前を向いた。自分の目が鋭くなっていることがわかった。一人で片付ける以外の道は許されていない。それが、どんなに絶望的だと、勘が告げていたとしても。
息を吐き出そうとして、深く吸ってしまった。気管に思いもがけず空気が入り込み、むせかえる。更に乱れた息に呼応するように、心臓も乱れる。
落ち着けという呪文を何度も繰り返すも、まるで効力がなかった。それでも続けるしかなかった。
弾丸のごとく真っ直ぐに走る自分を脳内に思い描く。鮮明になったと同時に、想像を現実にするつもりで、走り出した。
地面から胎動が鳴る。根は避けられたが、振動に足をとられ、よろめきかける。出来た隙を、幹から生えてくる鋭すぎる枝が、狙ってくる。
大きな隙を逃すまいと、地面から突き出てきた根から生える、たくさんの細い枝が、こちらに向かってくる。
目を見開く。神経を視界に集中せんばかりの勢いで、大きく見張る。跳びながら、刀を振り回す。刃は根に当たり、未來を追うことは不可能な状態となった。
大きなジャンプを繰り返しながら、未來は幹に向かって距離を詰めていった。
根は執拗に追ってくる。根を斬る剣戟の衝撃が、手に直に伝わってくる。
根だけでなく、枝も執拗に伸びてくる。それが伸びる瞬間の風を切る音、避ける際の衝撃が、熱を持って肌に伝わってくる。
マントが風を切る音がすぐ傍で聞こえてくる。自分の息づかいが妙に近くで聞こえ、また遠くからも聞こえてくるように感じる。
もはや呼吸に気を遣っていられなかった。ずっと肺が苦しく、そのせいで疲れも尚更溜まっていく一方だった。
何しろ、一対一ではない。何人も、下手をすれば何十人分もを相手にしているのと同じだ。
細い根は無数に伸びてくる。太い根も枝も、際限なく現れる。それでも、未來は刀を振り続けた。縦、横、十字、交差。がむしゃらだった。ただ、一つの思いに支えられ、それがあるからこそ動けている状態だった。
なんとしてでも、自分一人でやらなくては。
聞こえてくるその自分の声が、自分を突き動かす。苦しくても、息が出来なくても、背を押してきて止まらない。
ジャンプをする。再びコスモパッドとブローチを重ね合わせる。刀に赤い光が生まれる。半円を描くように、下に向かって赤い光線を飛ばす。すぐ近くまで迫っていた細い根が、散っていく。
前を向く。木の中にある赤い目と、視線がかち合う。くすんだ色をした幹が迫ってくる。
幹の一点に、目標を定める。刀を、真っ直ぐに突き出す体勢を取る。斬りが駄目でも、こっちにはまだ突きがある。
定めた場所と、未來の持つ刃の距離が近づいていく。
片手にもう片方の手を合わせ、両手で力を込める。グローブ越しに、柄が食い込む。痛みを我慢し、柄を割る勢いで、力をそこ一点にまとめる。
スローモーションのように、動きがゆっくりとなって目に映った。
この一撃で、どんなに薄くても、光が差してくれれば。力を乗せ、望みも上乗せして、刀を突き出した。
ぴたり、と空中を跳んでいた未來の体が、静止した。
刃は、幹の中に入っていた。ほんの少し。刀のわずか先のみ。それだけ、刺さっていた。
引こうとしても、動かない。押そうとしても、動かない。
刀は、未來の言うことを全く聞いてくれなかった。刀が刺した先にあるものが、異様に堅いことが、嫌でも理解せざるを得なかった。
樹皮の中にわずかに刺さった刀を持った状態の未來は、そのまま宙で止まっていた。金属的な赤い眼光が、うろの中から刺さる。
もはや危険信号ではないどころの信号が、がなり立てている。手を離せと叫んでいる。しかし手は柄と癒着したまま、離れない。
かすかに下に引っ張られる体感。見なくても、触感でわかった。片足のブーツに、びっしりと、あの細い木の根が絡みついている。
止まっていた体が動いた。未來が自分の意思で動いたのではない。外からの力によってだ。根に引っ張られて、だ。
刀が抜ける。そんな状況ではないのに、なぜかそのことに少し安堵した。あのまま抜けなかったら、いよいよ絶望的な状況になったのだから。
視界がぐるりと回転する。足を引っ張られる感覚と、足に纏わり付いていた根の肌触りがなくなる。
耳のすぐ傍で、物凄い速度で風を切る時に聞こえる、轟音が鳴る。体全体で、痛いほど風を切る感触がする。
それとは比べものにならないくらい、更に強い痛みが訪れた。
「ぐううっ……!」
体が土の感触を覚えた刹那だった。全身を、痛みとつく触感が被さってきた。牙を剥き、容赦なく襲ってくる。
投げ飛ばされ、打ち付けられた背中が特に痛い。地面に激突して、回転した際にぶつかった足や腕も、痛みが強い。
うつぶせの状態から起き上がろうとして、電流が走った。がたんと骨が崩れるように、体がよろめく。力が入らない。力を入れるのにも痛みが伴う。
短い息と、長い息が交互に、こまめに往復される。
上げようとする頭があまりにも重い。体中が熱い。目の奥も熱かった。
「なん、なんだろ、う……」
息を吐いたと思って出てきたのは、声だった。掠れて、自分でも何を言ったのかよく聞こえなかった。
「わ、たし、って……」
声が震えている。泣く直前の時のような震え方に近い。なぜ今こんな声が出ているのだろうか。
「ど、して……」
言ってはいけないと思う。言ったほうがいいと、もう一つの自分の声が聞こえてくる。言葉にして、ちゃんと自分に知らしめたほうがいい。でないと、逃げる一方のまま、変われない。
「ここ、に。いるんだろう」
こことは、果たしてどこを指すのだろうか。体全体で感じているはずなのに、土の感触がわからなくなっていく。
少し向こうのほうから、ざわざわと、葉と葉が擦れ合う音がする。見上げると、作り物の目が視界に入った。まさかあれが、答えてくれるわけない。
「いる意味、なんで、ずっと、わか、ないんだろ」
答えは簡単だと、誰かの声が聞こえてくる。自分の声のはずなのに、心底不快に感じる。それなのに、耳を塞げない。
「それは、私、が」
認めたくなかった。自分の口で言ってしまえば、もう永久に戻れなくなる気がした。“ずれ”なんて小さくて可愛らしいものではない存在が、自分と地球人の間にできるのを許すことを、示しているのだから。
もっとも、首飾りを手にしたあの瞬間から、自分はもう既に、戻れないところまで行ってしまった。そこよりも遙かに遠い場所に行くだけのことかもしれない。誰の姿も見えず、自分の声も届かない、そういう場所に向かうたったそれだけのこと。
「宇宙人だから」
目の前の色彩がどんどん掠れていく。薄れていく。消えていく。モノクロになって、やがて闇に包まれていく。
ここが、最後の最後で行くことを拒んでいた、遠い場所なのか。これでは確かに、戻れなさそうだ。私自身がどうして怖がっていたか、その理由が、わかる気がする。しかし、もっと早く、こうするべきだった。認めるべきだった。そう思った。
更に攻撃を加えようと、木から細い根が多く伸びてくる。未來は、本当に闇に包まれようと、まぶたを閉じた。
「未來ーーーーーー!!!!!!」
闇を真っ二つに切り裂く光が現れた。未來はまぶたを開けた。色が元通りになっていた。地面の色、雑草の色、空の色、何もかも元通り、色鮮やかに染まっていた。
「未來、は!!!」
衝撃音が響いた。その音が生じた先で、先程までにはなかった、新しい色が生まれていた。
「他の誰でもない!!! 未來自身だ!!!」
木の横側に、深々と拳を打ち込む、黄色い影。こちらに向かっていた細い根が、その衝撃で行き場を見失ったように、覚束ない揺れを起こしながら本体の木に戻っていく。
「それに!!!」
人影が、木から離れる。
「未來といると、私が楽しい!!!」
ジャンプを駆使して、こちらに向かってくる。白いマントをはためかせ、飛んでくる。
「未來がここにいるのは、そういう理由があるから!!!」
未來は、目の前に下り立った人影を見上げた。
その背後で輝く太陽のような笑みを、美月は浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます