phase1.3
空に、長い光の筋が走っている。
強い明度を持った光の筋。
その光は今晩美月が見た流れ星のように、いつまで経っても消えなかった。
その光の筋は……。いや、筋などではない。
光を帯びた物体は、まっすぐ落ちていた。
まっすぐ、夜空を駆け抜けていく。真っ逆さまに落ちていく。
やがて、その物体は、遠くへと……。見間違いでなければ、先程美月達がいた裏山の方向へと、姿を消した。
テレビが何かだったろうか。
その光は、そこで見た彗星や隕石の類いのものと、良く似ていた。
ただ少し違うとすれば、流れ星よりちょっと大きい程度で、隕石や彗星のような
迫力は無い。
突然腰が抜けて、カーテンを握りしめたまま座り込んだ。
目が乾いている。瞬きをするのも忘れていたようだ。
美月は、今見た光景が一体何だったのか、回らない頭で必死に考えた。
見間違いか、夢か、まさか流れ星が落ちたのか、それとも……。
……宇宙船……?
次の瞬間、何かに突き動かされたように、美月は立ち上がっていた。
そして、そのまま走った。
どうしたんだとか、どこに行くのとか誰かの声が聞こえてきた気がするが、お構い無しに、ひたすら走った。
夜の闇に包まれる町を駆け抜けた。
あれは一体、あの光の正体は考えを巡らせていたが、それには冷静さは伴っていなかった。
足が速くなる分息も上がるが、お構いなしに走り続けた。
寝静まった住宅街は、あの光を見た者が他に誰もいなかったことを意味していた。いなかったようで、通りには誰もいなかった。
誰もいない通りを駆ける美月の頭上を、時折星が流れたが、目には入らなかった。
走って走って、ようやく裏山まで辿り着いた。
先程流星群を見た場所まで一気に駆け上がった後、息を整えた。
一気に走った代償は大きく、呼吸が正常になるまでかなりの時間を要した。横腹も心臓も痛く、脈拍の早さが嫌でも伝わってくる。
深呼吸しながら、胸のあたりを手で抑えつつ、出かける時に引っ掴んできた懐中電灯で周囲を照らした。
誰もいないそこは、見た感じでは、特に何も異常は起こっていない。
しかし、鼻はうっすらと漂う煙の匂いを察知した。
そしてその匂いは、雑木林のほうから流れてきているようだった。
懐中電灯で雑木林のほうを照らすと、何の変哲もないただの木々の集まりが、非常に不気味で恐ろしいものの集まりに見えた。
何度か息を吸い込んだ後、美月は前を向き、林の中へと入った。
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