第13話(13)行先の選択・3
ミラが話しを続ける。
「問題なのは 戦乱が続いたせいで、世継ぎ以外には、公家にも 他の有力な貴族家にも、男子の余りがいないのよ。
現国王が死んだ時点で、王国は 体制的には滅亡ね」
「確かに そうなるな。それが、最短で(国王が死んだ時点である)今年中か」
流石に、ベンも納得した。
「帝国の理由は逆ね。
でも結果は5つに分断か、それこそバラバラに分解かの どちらかね」
「世継ぎ候補が5人、だったかな。
王国からすれば贅沢だな。1人くらい分けてやれば良いのに、と言うのは冗談だが」
「帝国は、本来の世継ぎ候補が戦乱で死んでしまったの。正妻の子供、3人全員がね。皆 皇子だったそうよ。
その後、側室5人が それぞれ1人づつ子供を生んだ。
それが現在の状態ね。
長子と次子は皇女で、3子から5子までが皇子。帝国では 誕生順とかは決められていないし、女帝も認められているから全員が世継候補ね」
「それぞれが独立すると? デメリットの方が大きいと思うが」
「後継者達の能力は 皆、可もなく 不可もなしってところね。候補者から外す程 無能では無い、けれど 突出した才気も無い。だから後援者に操られてしまっているのよね。
まぁ、12、3歳では仕方ないけれど」
「後援者が権力を欲しているから各自独立。と言うのは分かったが、バラバラとは どういう意味だ」
「職業としての、本物の暗殺者は実際に存在しているわ。
帝国では(まだ小国であった頃から) 今まで何度もあった事例よ。
世継候補の5人が暗殺された場合、正確には 最低4人かな。5人の関係者の誰かが、1件でも暗殺依頼をすれば、全滅ね」
「最低1人は残るだろうに」
「1件とは限らないわ。2件以上で全滅よ。
まぁ 仮に、1人だけ残った場合、その者は 確実に『皇位継承権保持者の暗殺』を指示した犯人、主犯だよね。
誰も従わないわ」
「それでバラバラか。……乱世に逆戻りだな」
「別の見方をすれば、立身出世のチャンスかも。
貴族どころか 実力があれば王にでもなれる時代、とも言えるわね」
「王様って それほど良いモノかね」
「それぞれの考え方、でしょうね。
権力に魅力を感じる者にとっては、良い時代という事に成るのかもね」
「その気もないのに巻き込まれる 権力に関係無い者達にとっては、とんでもない災難だ」
ミラは上半身を起こし、ゆっくり 暗緑色のベッドのようなモノから降りた。
立ち上がると、何だか違和感がある。
感覚が狂っているのか、1歩踏み出して転びそうになった。
――まだ体調が戻っていない? そんな事はない。五感は ちゃんと働いている、むしろ鋭くなっているようにすら感じているのに。
ベンは、ミラが起き上がる気配を感じ 振り向いて、叫んだ。
ベンが 今までミラの姿を見ていなかったのは、『女性の寝顔を見るのは失礼な事』という、彼が 今まで属していた世界の常識によるものである。
「ミラ、お前。小さくなってるぞ、どうしたんだ」
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