第14話(14)初心者用魔杖の改造
フェンリは、ミラとベンの話が盛り上がっているので、それ等は聞き流す事にした。
要点さえ分かれば、政治向きの詳細など どうでも良いのだ。
今、ミラが寝かされている 暗緑色をしたベッド状のモノは、不活性状態の、活性化すると毒物を食物とするスライムになる筈のモノで造作されている。
それには、心身の疲労や不調を回復させ、解毒の効果もある。
尚、この種類で活性化したモノ達は、死霊用魔杖内に造られた ダンジョンの中で、通常のスライムと共に、今は眠っている。
元から持っていた杖には 今、オーブが付いていない。それは 外して、死霊用魔杖の出力部に使った。
代替品として用意したのは、先の戦闘で倒した魔法使いが使っていた杖のモノ3個と、死霊型ダンジョンで入手した、魔杖用オーブ256個である。
死霊型ダンジョンで入手した これ等は、杖本体から外されていたモノであり、長期間 放置されていたので、
フェンリが行おうとしているのは、死霊用魔杖に装着したダンジョン核に相当するモノ(魔力の発生源)を、今あるオーブで代用する事だ。
フェンリは忘れていない。自らの魔力量が、他の者達より かなり少ない事を。そして それを補うために 決して努力を惜しんではならない事を。
可能性はある。死霊型ダンジョンで入手した大量のオーブは、優良とは言えないが、死霊ダンジョンの『核』とリンクしているのだ。
そこで入手した全て(256個)のオーブは 高圧縮を掛けて一体化し、『倉庫』としての1機能に限定して使う。(この状態で『倉庫』は、さっきまで小妖精達に調整・補修されていた)
これに 戦闘で入手したオーブの内 1個で、余剰魔力を純化(フェンリが使えるように)して貯蔵する。
当初、死霊用魔杖の出力部には 戦闘で入手したオーブ(1個)を使う積りだった。
だが、いざ発動となると 思うような性能が出なかったのだ。
調べると オーブの純度が低いのが原因であると判明した。
師匠達なら不良品として廃却処分にする程の純度だ。で、冗談のようだが それを、初心者用魔杖に使っているオーブと交換すると正常に稼働した。
そうすると 今度は、通常に使う杖が作動出来なくなる。
それで、今回の改造という仕儀に至った訳だ。
完成した『倉庫』と同じように、戦闘で入手したオーブも機能を1つに限定して使えば、質に関係なく良好に機能する。1個は、常時稼働状態で『
もう1個は、その他の余剰魔力を 同じように回収するのに使う。稼働しながら待機中のモノや、起動時だけに使う魔力、大気中にバラ撒かれている魔力などだ。
残りの1個は出力に用いる。制御はフェンリ自身が行えば問題はない。
設計が終わり、いざ改造となると 思わぬ問題が発生した。
元の杖と 改造に使うオーブとの相性が悪かったのである。結局、戦闘で入手した杖を錬成して(全オーブ用の)入れ物を 別に造って装着する事になったのだが、今度は杖の強度に問題が発生した。
それはダンジョンで入手した杖(256本)を、元の杖に混ぜ込んで補強する事で対処した(そのせいで質量が激増した)。
予想外に良い効果があったのは『倉庫』の混成オーブである。魔力保存能力が非常に高いのだ。殆ど無限といって良い程に。
今後の問題としては、戦闘で入手したオーブを、少なくとも出力部は、もっと純度の高いモノに替え、制御機能を持たせたいところだ。
しかし 小妖精達は、1機能に限定使用するオーブを調整し、改修していた。他の余分な機能を 全て排除(破棄)し、必要としている機能だけを最大まで強化していたのだ。
『フェンリ、入力用のオーブは取り替えてはいけないよ。出力用も推奨は しないな』
――あ、小妖精さんかい。何故かな。
『少なくとも入力用は、今のオーブで特化しているから、例え最高級のオーブと交換しても、今以上の性能は出せない。出力用も、交換しない方が良い』
――分かった そうする。良い指摘をありがとう。制御は自分で行うよ。
「だが、でかいな」
そう、オーブ保持部を追加し、杖本体を補強したため 杖の握り部(本体)の径が少し大きくなり、全長2・8メートル、元が1・8メートルだったので、かなり伸びたように感じる。しかし いざ使ってみると。
「へえ、良いじゃないか」
問題は 無いようである。
フェンリは、これを常用する事にした。
ソファから立って、常用魔杖の使い心地を試していると、ベンの叫び声が聞こえた。
「ミラ、お前。小さくなってるぞ、どうしたんだ」
見ると、確かにミラが縮んでいた、というより若くなっていた。外観年齢、ヒトであれば十台の中頃、フェンリより 少し年上、程度まで。
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